夜行特急の復活は「ビジネス」か「単なるロマン」か?――首都圏発、北東北・関西への新ルートを検証する

JR東日本の新たな夜行特急列車

 秋の行楽シーズンを前に、どこへ出かけるか思案する人は多い。自動車、鉄道、高速バス、飛行機、フェリーと交通手段は多様化した。しかし鉄道好きの筆者(ネルソン三浦、フリーライター)としては、夜行列車の少なさが寂しい。

【画像】在りし日の「寝台特急あけぼの」を見る!(8枚)

 定期運行されているのは「サンライズ瀬戸・出雲」だけだ。そんななか、JR東日本が新たな夜行特急列車を打ち出し、わずかな光が見えてきた。

 6月に発表されたこの列車は、E657系特急型車両をベースとし、全席グリーン車の個室タイプだ。ただし10両1編成のみで、定期運行ではなくJR西日本の「WEST EXPRESS 銀河」に近い形態となる点は残念である。

 とはいえ、浴衣やスリッパはなくシーツとブランケットだけを備え、乗客が自分でシートをフラットにしてシーツを敷く方式は、新しい夜行特急の標準となる可能性を秘めている。

東京~秋田の定期運用を想定

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WEST EXPRESS 銀河(画像:写真AC)

 JR東日本が発表した資料によると、新たな夜行特急列車の運行エリアは

「首都圏~北東北」

を予定している。まず東京~秋田の定期運用を想定してみよう。かつて首都圏と秋田を結ぶ寝台特急には、上越線経由の「出羽」と奥羽本線経由の「あけぼの」があった。

 1985(昭和60)年1月の時刻表によれば、「出羽」の上りは秋田20時発・上野6時8分着、下りは上野21時40分発・秋田8時20分着だった。朝早く首都圏に到着し、夜遅くに出発できる絶妙なダイヤだった。航空機との競合を考えても、首都圏に早く着き、滞在時間を長く確保できる点は有利といえる。

 費用は個室料金を「サンライズ瀬戸・出雲」のA寝台個室と同等の1万3980円と想定すると、上越線経由で合計約2万6000円となる。秋田新幹線とビジネスホテルの組み合わせとほぼ同水準だ。一方、高速バスとの比較では費用面で大きく劣る。最大の課題は高すぎる個室料金にある。

 解決策のひとつは、「サンライズ瀬戸・出雲」にあるノビノビ座席の導入だ。この方式なら個室料金が不要となり、約1万3000円で利用できる。それでも格安の高速バスには及ばないが、繁忙期なら十分に競争力を持つはずだ。

東京~金沢の夜行特急を想定

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夜行列車のイメージ。生成AIで作成。

 東京~金沢の夜行特急も可能性があると考えてみた。かつて首都圏と金沢を結んだ寝台特急といえば「北陸」だ。1985(昭和60)年1月の時刻表によれば、上りは金沢21時40分発・上野6時42分着、下りは上野21時50分発・金沢6時39分着だった。

 首都圏でも金沢でも、航空機より長く滞在時間を確保できた。特に金沢を21時40分に出発するダイヤが秀逸だった。夜遅くまで金沢を楽しみ、翌朝は普通に出社できる利便性があった。

 費用はJRの特急・寝台料金を用いると約2万7000円となり、新幹線とビジネスホテルの組み合わせよりやや高い。B寝台個室なら約2万3000円で互角になる。一方で高速バスとの費用競争は依然として厳しい。

 東京~金沢の夜行構想にはもうひとつ課題がある。

・JR東日本

・えちごトキメキ鉄道

・あいの風とやま鉄道

・IRいしかわ鉄道

の4社が関与する点だ。三セク3社が夜行列車のためだけに運転士を確保するのは現実的ではない。

 解決策としては、JR東日本が直江津~金沢間で第二種鉄道事業者となり自前で運転する方法がある。あるいは“ウルトラC”としてJR貨物に運転を委託する案も考えられる。ただし、その場合は貨物運転士に電車運転の教育と訓練が必要になる。

東京~姫路の夜行特急も想定

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サンライズ瀬戸・出雲(画像:写真AC)

 筆者としては東京~姫路の夜行特急にも期待している。現行のサンライズ瀬戸・出雲は、上りが姫路23時33分発、三ノ宮0時11分発、大阪0時33分発で東京7時08分着。下りは東京21時50分発で姫路5時25分着となっている。関西エリアでの停車駅は少なく、臨時のサンライズ出雲でやや増える程度だ。関西は通過点に近く、利便性に欠けるのが実情である。ならば、

「東京~関西を結ぶ専用の夜行特急」

はどうだろうか。上りはサンライズより30分早く、下りは30分遅く設定する。停車駅は姫路、三ノ宮、大阪、京都とし、観光需要とビジネス需要を両方取り込む。

 費用はA寝台個室で約2万6000~2万7000円となる。「新幹線 + ビジネスホテル」よりやや高く、ラグジュアリークラスの高速バスより4000~5000円高い水準だ。だが東京~関西は需要が大きいため、B寝台個室の9600円を基準に数を稼ぐ方式も考えられる。その場合は約2万2000~2万3000円となり、十分競争力を持ちうる。

 一方で課題は首都圏や関西圏の朝の過密ダイヤに組み込めるかどうかにある。

 東京~秋田、東京~金沢、東京~関西はいずれも営業キロで500~700km圏内だ。鉄道移動と他の輸送手段との競合を考えれば、この距離帯が狙い目といえる。さらに幅広い需要に応えるためには、サンライズと同様に

・A寝台個室

・B寝台個室

・ノビノビ座席

の三本立てが望ましい。想定で終わらせず、あとはJRグループと関係各社の判断に期待したい。