「ムチャしない」進次郎政権なら財務省は安堵、高市政権なら減税掲げて衆院解散へ?自民総裁選の行方と続くシナリオ

進次郎氏リードのまま最終盤へ, 高市総裁なら…財務省の反乱を抑えて減税できるか?, 進次郎総裁なら…ムチャしない政権に安堵する財務省, あの時は一番前の席にいたが

自民党新総裁の座を争う小泉進次郎氏と高市早苗氏(写真:アフロ)

(渡辺 喜美:元金融担当相、元みんなの党代表)

進次郎氏リードのまま最終盤へ

 国会議事堂に行くと、至る所に楕円形のレリーフが散りばめられている。これは国会が国民の意思を反映する「鏡」であり、国民の権利を守る「盾」であることを意味する。

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国会議事堂の正面中央にも楕円形のレリーフが見える(写真:cap10hk/イメージマート)

 ところが、自民党国会議員の政治文化は国民世論やネットの声とは乖離があるようだ。平河町ダート総裁G1レースの本命・小泉進次郎氏と対抗・高市早苗氏の差は縮まりこそすれ、国会議員票で逆転はしていない。

 昨年の総裁選で結果を的中させた日テレの「党員・党友」調査の最終版は、295票のうち高市氏35%、小泉氏28%、林芳正氏23%。分析を加え、高市氏110票、小泉氏88票、林氏72票とはじき出している。

 ここに295票の国会議員票が、高市氏に40票台、小泉氏に70票超、林氏に50票超が加わる見通しが示されている。そうなると、麻生太郎氏を筆頭に、勝ち馬に乗りたい態度不明の約70票が帰趨を決めることになりそうである。

◎【自民党総裁選】“党員・党友”調査 高市氏が35%で前回に続き1位 小泉氏と競り合い、林氏追う|日テレNEWS

高市総裁なら…財務省の反乱を抑えて減税できるか?

 高市・林の両候補は赤マル急上昇中だ。

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林芳正氏(写真:共同通信社)

 一方、小泉候補失速の理由は討論会などの力不足と、選挙コンサルが起案したとされるステマ(ステルス・マーケティング)疑惑。そして、最後の直線コースで神奈川9区(川崎市多摩区・麻生区)の党員「強制離党」疑惑が出てきた。

 衆院選で連続4回比例復活ののち昨年落選した中山展宏氏の系列党員826名が今年6月、知らないうちに登録抹消されていたという。川崎市は中選挙区時代、小泉純一郎氏が地盤としていた。多摩区は、純一郎氏の秘書を務めていたベテラン県議で、前県連幹事長の土井隆典氏の地元でもある。

 私も自民党支部長(栃木3区)時代、苦労して3000名超の党員を集めた。私の自民党離党後、党籍は党員各自の判断に任せた。虎の子の党員を勝手に除籍するとは聞いたことがない。参議院選を控えた時期で、そんな事務処理ミスがあるのか? ミステリーである。根深い問題なのかもしれない。

 昔の総裁選のようにカネが飛び交うようなことはないだろう。しかし、ポストの約束手形乱発とか、態度未決定議員が複数陣営に媚びを売るとか、まるで昭和レトロを見せられているようだ。自民党は変わっていない。

 そして、論戦もエッジの立たない妥協的な中身で、正直つまらない。下手に消費税減税などを持ち出して、カオス状態を作りたくないからだろう。

 参院選が終わり、国会議員にとって衆院解散がなければ3年間は選挙のない「黄金期」が訪れた。自民党も公明党も立憲民主党も維新の会も、「負け組」は選挙をやりたくなく、できるだけ落ち着いていたいのだ。これが国会多数派のホンネである。

 そうした状況にあるため、仮に高市総裁が誕生しても、よほど支持率が高くないと本気の所得減税は難しいのではないか。

 財務省の反乱を抑えるためには、安倍さんが消費増税延期のために2度やったように、衆議院を解散して国民の支持を取り付けるしかない。政策には強いが党内基盤の弱い高市氏に、はたしてそれができるだろうか?

進次郎総裁なら…ムチャしない政権に安堵する財務省

 進次郎総裁誕生ならばどうだろう。

 進次郎氏を叩きまくったネットも変わらないどころか、進次郎総裁の方から格好のネタを提供し続けるだろう。何しろ、血統書付きサラブレッド4代目で自民党の数少ない「プリンス」である。

 換言すれば、彼は親ガチャ世襲の宗家の御曹子。実力を伴えば自民党の岩盤支持層の心をくすぐるが、ボロが出ればあっという間にディスりの標的にもなる存在だ。

 自民党の連帯感は利害と打算の上に成り立っている。与党でないと生きていけないのだ。少数でも与党であり続けるためには、「何をやるか」より「誰と組むか」が優先される。

 自民党が野党転落した後、与党復帰のため担いだのは社会党の委員長だった。村山内閣である。これが自民党の生存本能であり、自民党政治文化はその上に成り立つ。

 進次郎総裁が誕生すれば、維新の会の閣外協力(与党国対)、あるいは閣内協力(連立)が視野に入る。周囲を財務省OB議員で固められた進次郎政権がムチャをするとは思えない。永田町・霞が関に安堵の空気が流れる。

 そして、ムチャをしない進次郎政権はきっとたいした減税もやらないだろうから、国民は物価高の苦しみから解放されることもない。

 はて、進次郎氏は1年生議員の時からこれほど財務省寄りのスタンスだっただろうか?

あの時は一番前の席にいたが

 私の記憶では2012年、消費増税の民自公3党合意に反対して民主党を大量離党した小沢一郎氏らが野田内閣不信任案を提出した時、谷垣自民党は棄権を決め、一斉に退出。本会議場には造反した菅義偉氏ら7人が残り、賛成票を投じた。

 その時、一番前の席には進次郎氏の姿があったことを鮮明に覚えている。野田増税総理に退陣を要求した、数少ない自民党議員だったのである。

 それからいつしか進次郎氏は、村井英樹氏など財務省OB議員らに囲まれ、2017年、幼児教育や保育を無償化するため既存の保険料を値上げする「こども保険」の提案者になっていた。これは実現しなかったが、その2年後、2回目の消費増税が行われたのだった。

進次郎氏リードのまま最終盤へ, 高市総裁なら…財務省の反乱を抑えて減税できるか?, 進次郎総裁なら…ムチャしない政権に安堵する財務省, あの時は一番前の席にいたが

「こども保険」創設の提言を発表する小泉進次郎氏(中央)と村井英樹氏(右)ら(写真:共同通信社)

 一方、「保守」が減税と利下げを掲げるのがアメリカをはじめ定番になっている。金融緩和をハト派と呼ぶが如く、リフレーション政策はリベラルのものだった。

 しかし、グローバル資本主義の歪みの結果生まれた「自国第一主義」は「強い国家」と「小さな政府」を目指す。

 リーマンショック対応の周回遅れで始まったアベノミクスは、気がついたら先頭を走っていたのだ。政策的には正当な後継者といえる高市氏は、自民党政治文化の厚い壁を壊せるだろうか?

 泣いても笑っても10月4日には結論が出る。新政権は、国会議事堂に刻まれた「国民を映す鏡」「国民を守る盾」として誕生してほしいものだ。

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