久しぶりの豊漁「サンマ」 脂の乗った旬の味にお祭り騒ぎ

煙と音を上げながら炭火で焼くサンマは昔ながらの秋の風物詩=東京都中央区「鶏鬨 勝どき店」(酒巻俊介撮影)

スーパーの鮮魚売り場が、まばゆく輝いている。主役は色つやのいいサンマ。深刻な不漁が続いた昨年までとは違い、今年は大きく太って、脂の乗りも上々。価格も手頃だ。

東京の魚市場、豊洲市場にほど近い中央区勝どき。《秋刀魚(さんま)の炭火焼き》と手書きされた、立て看板に足が止まった。そこは鶏料理のお店だった。

「今年はサイズが大きい」

「鶏は季節感を出しづらいので、時季のサンマは秋のメニューに欠かせません。今年はサイズが大きくて焼き応えがあり、テーブルに運ばれると歓声が上がります」

「鶏鬨(とりどき) 勝どき店」の新谷匠蔵店長(35)は静かに燃える備長炭から目を離さず、こう語った。

金串を打ったサンマにうまみの強いヒマラヤ岩塩をまとわせ、焼き台へ。まず皮に焼き目をつけて脂を閉じ込める。それでもじゅわじゅわと、わくように脂がにじみ出る。サンマも炭も、こまめに動かしながら絶妙な火加減でじっくりと熱を通す。

器に盛られてもまだ音を立てるサンマにスダチを搾り、焼きたてをほおばる。皮はパリッと香ばしく、身はふっくら、しっとり。炭火焼きならではの醍醐味(だいごみ)と、ワタのほろ苦さを嚙(か)み締め、思わずうなる。器には頭の付いた骨だけが残った。

「想定外に取れすぎて心配」

3年前に過去最低だった水揚げ量は回復しつつあり、ようやく大衆魚に戻ったのはうれしい限り。ところが、「想定外に取れすぎて心配です」。そう言って困惑の表情を浮かべるのは、「全国さんま棒受網漁業協同組合」の専務理事、大石浩平さん(68)だ。

大石さんによると例年、9月までは片道2~3日かかる公海で漁をするが、今年は日本の200カイリ水域内にできた漁場で好調な水揚げが続き、日帰り操業が可能に。だが、受け入れる港では、魚箱や氷などの資材も人員も足りず、パンク状態に陥ったという。さらに、今年の漁獲可能量(約8万6千トン)に漁期途中で達する可能性も出てきたため、13年ぶりに全船が休漁する措置が取られた。

旬の和菓子「さゝめさゝ栗」

「だからといって姿を消すことはありません。秋の深まりとともに、どうしても小ぶりになるので大きなうちにたっぷりと味わってほしい」(大石さん)

都内では12日、恒例の「目黒のさんま祭」が開かれる。漢字で「秋刀魚」と書く以外に、かつては魚へんに祭の「鰶」も使われていた。今も昔も人々をお祭り騒ぎにさせるほど魅力にあふれている。

秋を彩る「さゝめさゝ栗」

ホクホクの栗を使ったお菓子が味覚の秋を彩る。「栗菓子の聖地」と名高い岐阜県中津川市には、県内外から大勢のファンが足を運ぶ。

蒸した栗の実に砂糖を加えて炊き上げた名物「栗きんとん」と並び、創業160余年の老舗「川上屋」では、「さゝめさゝ栗」が人気を集める。

栗きんとんを芯にして外側を蒸し羊羹(ようかん)地で包み、さらに竹皮で包んで蒸し上げた銘菓。栗蒸し羊羹とは、ひと味もふた味も趣が異なる。

「栗は宮崎県や熊本県の九州産、茨城県産を主に使用しています。栗きんとんの豊かな風味と、蒸し羊羹のもちもちとした食感の相性が好評です」と広報担当者。

半世紀に渡って親しまれているその味は、コク深いコーヒーにもよく合う。1本1944円。(榊聡美)