男女平等の国スウェーデン 週末の団らんに欠かせない「おばあちゃんのりんごケーキ」

スウェーデンのりんごケーキ「エッペルカーカ」と焼いてくれたおばあちゃん/イラスト=織田博子

マンガ家の織田博子です。世界の家庭料理を訪ねて旅した体験をつづる連載の2回目は、スウェーデンから。おばあちゃんのりんごケーキの思い出です。

平日は夕飯ピザ、タコス。買った総菜、家事軽減

「スウェーデンの家庭料理って、どんな感じ?」。そんな興味から現地を訪れたのはおよそ15年前。当時、知っていた料理は、ジャガイモとアンチョビを使ったグラタン「ヤンソンス・フレステルセ(ヤンソンさんの誘惑…不思議な名前!)」や、ミートボールにコケモモジャムを添える「ショットブッラル」くらいだった。

スウェーデンの郊外へ。アンドレアスさん(右)のおばあちゃんの家でケーキを味わう

首都ストックホルムに暮らす会社員、アンドレアス・マクラさんを訪ねた。日本に留学経験があり、なめらかな日本語を話す。私が訪ねた日は、友人とホームパーティーの真っ最中だった。「これがスウェーデンの家庭料理」と、テーブルに並ぶ料理を指さした。そこには、ピザ、タコス、そしてアボカドの寿司(すし)。

スウェーデンのおばあちゃんお手製のエッペルカーカ

スウェーデンでは男女平等が徹底され、「性別にかかわらず、社会参画するのが普通」。平日は手軽なファストフードを買い食事を済ませる。「料理は、週末のゆったりしたときにするもの」とのことだった。

世界の家庭料理を巡る旅をしていると語る私に、「それなら、アンドレアスのおばあちゃんの家に行こう。世界一の味だから」と友達の一人が言った。

週末に味わうおばあちゃんの手料理

数日後、ストックホルムから地下鉄で、おばあちゃんの家へ。30分ほどで、地平線まで続く森が見えてきた。イメージ通り、広大な景色だ。

マンションの玄関を開けると、「ヴェルコムナ(ようこそ)!」と言って、赤いほっぺのおばあちゃんが出迎えてくれた。

さっそく手料理がふるまわれた。前菜のオープンサンドイッチ「スモーガス」はマヨネーズやサワークリームを塗ったパンに、ハーブのディル、刻んだゆで卵、色とりどりの野菜がのっている。憧れだった家庭料理「ショットブッラル」はミートボールに絡まるクリームのまろやかなソースと、コケモモジャムの酸味が絶妙にマッチしている。

「いよいよお楽しみの時間」と運ばれてきたケーキは「エッペルカーカ」という名前。りんごの薄切りをスポンジ生地にのせ、クランブル(そぼろ状のクッキー生地)をまぶして焼いたもの。それだけでもおいしいが、バニラソースをかけるとさらに格別。サクサクの生地と冷たいソース、そしてりんごの甘みと酸味が口の中に広がった。

「やっぱり、おばあちゃんのケーキは世界一!」とアンドレアスさんとその友達。窓を開け、夏の空気を感じながら、みんなでケーキとおしゃべりを楽しんだ。大人になってもケーキを食べに来る孫がいる。「アンドレアスの事は、何歳になってもかわいいよ」と話すおばあちゃんの笑顔と、暮れゆく夕空の色を、私はずっと覚えている。

数年後に再訪した際、アンドレアスさんが「おばあちゃんは亡くなったんだ」と寂しそうに言った。私は夏になると、いつもおばあちゃんのケーキを作る。そして私の子供たちと食べ、おばあちゃんの事を考える。レシピは国を超え、時空を超えて、伝わっていく。

エッペルカーカ(りんごケーキ)のレシピ

材料

■ケーキ用

りんご…2、3個

バター…125グラム

卵…3個

砂糖…200グラム

小麦粉…250グラム

牛乳…大さじ3

バニラシュガー(なければ粉砂糖)…小さじ1

ベーキングパウダー…小さじ1

■クランブル生地用

小麦粉…200グラム

オートミール…75グラム

砂糖…大さじ2

バター…100グラム

作り方

1.オーブンを180度に熱しておく。バターは室温に置き溶かしておく。りんごは皮をむき、くし形にしてから薄切りにする。

2.クランブル生地の材料をすべてボウルに入れ、手で混ぜて、ほろほろとしたダマ状にしておく。

3.別のボウルにケーキの材料の卵と砂糖を入れ、全体が白っぽくなるまで泡立てるように混ぜる。

4.小麦粉、ベーキングパウダー、バニラシュガーを③にふるい入れ、混ぜる。

5.④に牛乳、バターを入れて混ぜる。

6.ケーキ型(直径24センチ)の内側にバター(分量外)を塗り、⑤を流し入れる。上に①のりんごをのせ、さらに②のクランブル生地を散らす。あればシナモンや粉砂糖をかける。

7.オーブンで⑥を45分焼く。

8.⑦に竹串などを刺し、中まで火が通っているか確かめる。焼けていれば型から出し、ケーキクーラーにのせ冷ます。

※食べる際、バニラソースやアイスクリームを添えてもおいしい。

おだ・ひろこ

マンガ家、料理研究家。料理教室を主宰、3児の母。著書に「世界家庭料理の旅」など。イラスト中のブタのキャラクターは織田さんのトレードマーク。