闘病、愛妻との死別、そして車イス生活…現役引退から10年、ミスタープロレス・天龍源一郎のいま

インタビューに答える天龍源一郎さん。車イス生活となった今でもメディア出演、インタビューなどをこなす

平穏ではなかった10年間…

“ミスタープロレス”こと天龍源一郎さんが現役を引退したのは’15年11月15日、65歳のときだった。13歳で相撲の世界へ入り、26歳でプロレスラーに転向。50年以上の格闘人生を終えてから、10年を迎える。ただ、引退をしたとはいえ、この10年間は天龍さんにとって決して平穏なものではなかった。 

現役時代のダメージの蓄積による身体の不調、入退院の繰り返し、愛妻との死別、闘病、車イス生活。そんな中でも自身のプロレス団体、天龍プロジェクトの興行や各種イベントへの出席など、精力的に活動をこなし、’25年11月4日にはプロレスの聖地、後楽園ホールでの興行、11月15日には引退の地、両国国技館前でのイベントなどを控えている。

「これからは“終活”ということも考えるのかなって」

そんな天龍さんが現役引退後10年を振り返り、自身の“終活”について語る。

「現役時代は、家族に対しても相撲とプロレスしか知らない天龍源一郎っていう存在を押し通してきたけど、引退してからは家族の言うことや、自然のままの流れを受け入れるということができるようになってきた気がします。それまでは流れに逆らってきた人生でしたからね。 

なんていうのかな、ステータスが落ち着いている天龍源一郎もやっぱりいますよね。 

これがどこかに出ていって、激論を交わす相手がいるんだったら戦闘モードにもなるんだろうけど、今はそれがないですから。自分で自分を納得させて、その日を終えるしかない。そんな毎日だから、これからは終活ということも考えるのかなって」

13歳の頃から“戦い”が日常だった天龍さんにとって、引退後の生活はそれまでとは真逆の環境となった。

毎日、対戦相手や試合のことを考えるプレッシャーからは解放されたが、一方で刺激の少ない生活に物足りなさを感じることも多かった。それでも引退後すぐは現役時代のネームバリューや“しゃがれ声と滑舌の悪さ”に注目が集まったこともあり、テレビ番組などに出演する機会も多く、新たな刺激を得ることができていた。

「現役引退後すぐにタレント活動をして、テレビやCMに出させてもらっていました。平野紫耀さんとCMで共演したことや、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)の年末の“笑ってはいけない”に出演したことが特に印象に残っています。 

引退後2年間はタレント活動で年収が数千万円あったので『60代、70代はこの調子でいくんだな』なんて思っていましたが、3年目からパタリと止まった(笑)」 

天龍プロジェクトの興行では解説者も務める。時には辛辣なコメントで選手を鼓舞することも(PHOTO:天龍プロジェクト提供)

コロナ禍に『天龍プロジェクト』が再始動

引退後のタレントバブルも落ち着き、5年目にはコロナ禍がやってきた。さまざまな業界に深刻な影響を与えたが、自身がかつて身を捧げたプロレス界も同様だった。

試合ができなくなり、食い扶持に困る――そんな後輩レスラーに少しでも活躍の場を与えようと立ち上がったのが自身の団体である『天龍プロジェクト』だ。『天龍プロジェクト』はもともと、天龍さんの引退に向けて設立された団体で、自身が出場する試合の興行などを行ってきたが、引退とともにその役割を終えていた。

それがコロナ禍によって再始動することとなり、今でも団体の垣根を越え、さまざまな団体に所属しているプロレスラーやフリーのプロレスラーたちが集まり、興行を続けている。そこで天龍さんは、興行主としてだけでなく、解説者として会場で選手たちの戦いを見守る役割も担っている。

「俺みたいに厳しく目を光らせる人間がいないと、うっかり期待外れのことをしてしまうのがプロレスラーってもので。全日本プロレス時代、ジャイアント馬場さんが期待通りに動かないレスラーたちを見て、しかめっ面で葉巻が一瞬で灰になるような吸い方をしているのを、何度も見ていますから(笑)」

後輩たちの手前そんなことを言うが、それは出場するレスラーに対する期待の裏返しでもあり、一方で彼らを厳しく叱咤するミスタープロレス・天龍源一郎を慕う現役レスラーは今でも多い。そして、そんなレスラーたちが集まった天龍プロジェクトのリングでは、現役時代の天龍さんを彷彿とさせる戦いが繰り広げられている。

どんな小さな会場でも全力で、激しく相手にぶつかるスタイルで「天龍革命」と称された天龍さんのプロレスを体現するかのような試合であり、天龍さんが選手に対して求めている試合でもある。自身にとっても引退後の大きな活動の場となった『天龍プロジェクト』の再始動。しかしその陰で、天龍さんにとってもうひとつ、人生を変える大きな出来事があった。

「ちょうど『天龍プロジェクト』を再始動した頃と同じタイミングで、女房のまき代が癌に罹って闘病生活が始まりました。引退したら今度は俺が女房を支える番だって思っていたのですが……」

天龍源一郎/てんりゅう・げんいちろう。1950年2月2日生まれ、福井県勝山市出身。13歳で二所ノ関部屋に入門。大相撲での最高位は西前頭筆頭。1976年に全日本プロレスへ転向。ジャンボ鶴田、スタン・ハンセンらと激闘を繰り広げトップレスラーへ。1990年にSWSへ移籍、1992年に自身の団体WARを立ち上げる。その後、フリーへ転身。アントニオ猪木、長州力、髙田延彦、ザ・グレート・ムタらと名勝負を繰り広げ、ミスタープロレスと呼ばれるように。’15年に両国国技館でのオカダ・カズチカ戦をもって現役を引退。

ハローベストで首を固定しているときの様子。頭蓋骨に直接ボルトで止めている(PHOTO:天龍プロジェクト提供)

■『天龍源一郎 引退10周年記念興行 ~革命飛翔~ @後楽園ホール』

開催日時:’25年11月4日 17:30 OPEN/18:30 GONG

会場:東京・後楽園ホール

チケット料金(前売りチケット):プレミアムシート(特典付き)3万円 、特別リングサイド1万5000円 、指定席8000円、 小中高生指定席3500円(天龍プロジェクトショップのみ販売)

■『天龍源一郎トリプルイヤーフェス in 両国』

開催日:’25年11月15日

会場:東京・JR両国駅前 両国駅広小路 特設会場

時間帯:一部:11:00〜14:30(予定)、二部:15:00〜18:30(予定)

※内容・演出は各部異なります。両部参加をご希望の方は、それぞれのチケットをご購入ください。

チケット料金(前売り券):プレミアム観覧エリア券(各部)6000円、フリーエリア入場券(各部)2000円

取材・文:高橋ダイスケ