公明連立離脱…「高市さんを支える官僚はいないんじゃないか」総務省文書問題追及の立憲・小西洋之氏が見た“本性”

 久しぶりに政局が大荒れになっている。26年にわたり自民党と連立を組んだ公明党が連立離脱を表明し、政権の枠組みは一気に流動化しているが、比較第1党である自民党の新総裁、高市早苗氏がなお、その1番手にいると言える。ただ、その高市氏を巡っては過去のいくつかの発言への批判が根強く残る。その最たるものが、放送法で定められた「政治的公平」についての政府解釈変更を巡る、総務省行政文書問題だろう。

 放送法では、放送事業者は政治的公平性を確保しなければならいと定められている。公平かどうかは、その放送局の「番組全体で判断する」というのが政府の公式な解釈だったが、2015年5月、時の安倍政権下で「極端な場合は1つの番組のみでも政治的公平性を判断できる」とする事実上の解釈変更を行った。国会でこの答弁をしたのが当時総務相だった高市氏だ。また、高市氏は翌年、「政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合」に電波停止を命じる可能性があるとするなど、放送・報道への権力介入とも取れる発言をした。

 その後23年になって、立憲民主党の小西洋之参議院議員がこの解釈変更にいたる経緯を記した総務省の行政文書を入手・公開した。文書には磯崎陽輔首相補佐官(当時)が官僚とのレクで解釈を変更するよう迫り、それに高市氏が関与する様子が克明に記されていた。

 小西氏は国会で高市氏を追及。経済安全保障担当相だった高市氏は文書について「まったくのねつ造文書だ」と述べ、「もしねつ造でなければ大臣や議員を辞職するということでいいのか」と問われると、「結構だ」と答弁した。総務省はその後、文書が真正の行政文書であると認め、さらに文書を作成した3人の官僚全員が「ねつ造はしていない」と国会に報告したが、高市氏は自身に関する部分について「怪文書のたぐい」「ねつ造」と主張し続け、その後も発言の訂正、撤回などはしていない。高市首相誕生が迫る現状を、小西氏はどう見ているのか。本人を直撃した。

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――高市氏は行政文書に記載されたレクの存在を否定し、文書の内容は「捏造である」と主張し続けました。この問題の本質はどこにありますか。

 文書には、磯崎首相補佐官が解釈の変更を総務省の官僚に迫り、高市氏がそれに加担する経緯がはっきりと記されています。さらに、磯崎氏のシナリオどおりに自民党の参議院議員と芝居がかった国会質問をやって、その芝居の主役として答弁をやってのけたのが高市さんです。彼女は大臣として、自分の責任で、自身の政治的な判断で解釈変更の主役のひとりを担ったわけです。ところが、その経緯が書かれた文書、総務省も本物だと認めた行政文書をねつ造だと言い続けました。この文書をつくった総務省の官僚、つまりかつて自分の部下だった人たちが、国家公務員法違反、公文書偽造・同行使という重大な罪を犯した犯罪者だと言っているのに等しいのです。自分を守るためにこのようなウソをつくのは、政治家として、いや、人間として絶対にやってはいけない卑劣な行為でしょう。この解釈変更自体とてつもなく大きな問題ですが、最大の論点は、過去の部下を犯罪者にでっちあげることを躊躇しない高市氏の人間性です。

■内閣府の官僚は文書すら見ていなかった

 ――総務省は文書を本物と認め、作成者である3人の官僚も「ねつ造はしていない」と国会に報告しましたが、結局、高市さんは大臣辞任も議員辞職もしませんでした。小西さんが「トーンダウンした」と指摘する声もありましたが、「攻めきれなかった」のはなぜでしょうか。

 トーンダウンしたわけではありません。辞任まで追い込めなかったのは、この質疑の最大の目的を果たすことができ、さらに予算委員会での私の出番が終わってしまったからです。この一連の質疑の最大の目的は、「一つの番組で政治的公平性を判断しうる」とする解釈の変更を撤回させることでした。争点としてマスコミに取り上げ続けてもらうために高市氏に辞任を迫り、それがうまくいったのです。そして、実際に解釈変更を事実上撤回させることができました。

 それから、このときの予算委員会の私の出番は前半だけで、後半は出番がなかったんです。時間切れですね。前半と同じように質疑時間があれば首を取っていたはずです。ただね、あそこまで言ったんだから普通は自分から辞めますよ。

 もうひとつ、この質疑で明らかになったのは高市さんを支える官僚がいないということ。辞任発言を引き出したときは、当然質問通告をしているので、内閣府の担当者とレクをやっています。ただ、その内閣府の官僚は公表している文書を見てすらいませんでした。翌日の予算委では高市さんが動揺しているのがはっきりと見て取れた。その瞬間に「辞任」答弁を取る作戦を描きました。自身の政治生命がかかっている問題なのに、自分を支えてくれる官僚は誰ひとりいなかったわけです。

 高市氏がねつ造と言い続けたことに対して、霞が関の何十人もの官僚から「高市さんはホントにひどい」という声を聞いています。高市さんを政治家として信頼して支える官僚は、いないんじゃないでしょうか。

 ――高市氏が首相になることについて、どんな懸念を抱いていますか。

 まさに放送法の解釈変更と文書問題に表れていることですが、高市さんは言論や報道の自由、法の支配、民主主義といった我々の社会の普遍的なルールや原理の価値に何の理解も見いださず、一切のためらいなく自分たちの意の沿うように破壊する人です。安倍晋三氏と同根の姿勢を感じます。世界中で分断が起きる中で、高市さんは今の時代に最も総理大臣になってはいけない人物ですよ。

■首班指名でまとまるための「条件」

 ――政権の枠組みは流動化していますが、依然、高市氏が次期首相候補の1番手です。高市さんに言いたいことは。

 総理大臣になる気があるんだったら、ねつ造発言を撤回して、国民の皆さん、総務省をはじめすべての霞が関の官僚、そして国会に謝罪してください。そうしないと、官僚は誰一人高市さんを支えないでしょうね。

 ――ただし、公明党が連立を離脱するなど、高市政権が本当に誕生するかは見通せなくなっています。立憲民主党の安住淳幹事長は首班指名で「国民民主党の玉木雄一郎代表でまとまることも選択肢」だとしていますが、どう考えますか。

 私は高市政権は絶対阻止しなければいけないと思っていますが、阻止すべき政策と同じようなことを言っている政党が野党の中にもあります。アベノミクスと同様の経済政策や憲法改悪をうたっている政党がある中で、そのすり合わせなしに首班指名でまとまるというのは難しいと思います。玉木さんがどうということではなく、これは一般論ですが、立憲民主党の野田(佳彦)代表以外の人を首班指名するのであれば、当然基本政策の合意があった上だと思います。そして、その基本政策の中には憲法違反やポピュリズムは入れてはいけない。

 ただ、高市政権を阻止して喫緊の物価高対策や日本が直面する内外の国家的課題に取り組むために、新政権の官邸に「国家基本政策会議」を設置して、各党の見解の相違を国民に見えるかたちで議論し、合意を得ていくというのはありでしょう。

 例えば、玉木代表が合憲と述べている安倍政権の集団的自衛権行使の容認は、昭和47年(1972年)政府見解という行政文書の「外国の武力攻撃」という文言の曲解による法解釈ですらない絶対の憲法違反なのですが、元最高裁判事や元内閣法制局長官らも国会陳述したこの民主党時代からの野党第一党の党見解をマスコミがきちんと報道できず、ほとんどの国民は知りません。

 限られた時間で、野田代表、あるいは野田代表以外で新政権をつくるにはこうした方法が最も有力でないかと考えています。

(聞き手・構成/AERA編集部・川口穣)