「クルド排斥デモ」差し止め訴訟 厳戒態勢の中、始まったが…被告側代理人が欠席 さいたま地裁の一部始終

 クルド人排斥を訴えるデモを繰り返し主催したとして、「日本クルド文化協会」(埼玉県川口市)が神奈川県の男性にデモ差し止めと550万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が23日、さいたま地裁(真辺朋子裁判長)で開かれた。クルド人へのヘイトがエスカレートする中、注目を集めたが、被告側の代理人は欠席し、予定された意見陳述に至らなかった。(池尾伸一、森本智之)

◆双方の支援者、傍聴券を求める抽選に長い列

 訴状によると、被告は「日の丸街宣俱楽部」代表の渡辺賢一氏。2023年9月から少なくとも9回、「自爆テロを支援するクルド協会は日本にいらない」「根絶せよクルド犯罪と偽装難民」などのプラカードを掲げ、協会周辺でデモを展開した。地裁は昨年11月、協会の訴えを受けてデモ禁止の仮処分を決定している。

◆双方の支援者、傍聴券を求める抽選に長い列, ◆原告側「日本の法令を順守している」, ◆被告側代理人は欠席した理由を…, ◆ヘイト禁止条例の働きかけも「両輪で活動」

さいたま地裁(資料写真)

 第1回口頭弁論は、地元のクルド人支援団体が傍聴を呼びかけたこともあり、傍聴券を求める抽選に長い列ができた。渡辺氏の支援者もいた。渡辺氏らと傍聴の市民らが接近しないよう、地裁は時間差をつけて入退場させ、ルートも分けたほか、地裁の敷地内に多くの職員を配置するなど、厳戒態勢の様相だった。

◆原告側「日本の法令を順守している」

 開廷時、原告側は弁護団の14人が席に着いた一方、被告側は渡辺氏だけで、代理人の杉山程彦弁護士は最後まで姿を現さなかった。被告側は請求棄却を求め、23日は双方の代理人が口頭で意見陳述をすることになっていたが、杉山氏の陳述は7月2日の次回期日に先送りされた。

 原告側の神原元(はじめ)弁護士は意見陳述で「協会がテロを支援する活動を行ったことは一切ない。日本の法令を順守している人びとに『偽装難民』などのレッテル貼りをし、排除を扇動することは絶対に許されない」と強調した。

◆被告側代理人は欠席した理由を…

 渡辺氏はデモの際に協会幹部から侮辱されたとして、330万円の損害賠償を求める「反訴」も行った。ただ反訴状には「原告(渡辺氏)は被告(クルド協会)に330万円を支払え」などと、原告と被告を逆にする単純なミスが見つかり、裁判長は「後で代理人に聞く」と述べた。

 閉廷後、渡辺氏が先に外に出て、傍聴者はその後もしばらくは法廷内から出ないよう、指示された。その後、本紙記者らは渡辺氏を追いかけ、裁判所の外で「弁護士が欠席した理由は何か」と質問したが、渡辺氏は「答える必要はない」と回答を拒否。多数の警察官に付き添われて駅に向かった。杉山氏に対しても翌24日、欠席の理由を電話で問い合わせたところ、「お断りします」とだけ答え、電話を切った。

◆ヘイト禁止条例の働きかけも「両輪で活動」

 弁論終了後に、弁護団はさいたま市内で記者会見した。伊須慎一郎弁護士は「意見陳述予定の代理人が欠席するのは私も初めて」と驚いていた。「被告側は不真面目ではないか」と話す支援者もいた。弁護団は約80人に上り、埼玉弁護士会元会長の尾崎康氏は「クルド人へのヘイトは弁護士会としても大変重要な問題で、埼玉を平和で暮らしやすい県にするために取り組んでいく」と訴えた。

◆双方の支援者、傍聴券を求める抽選に長い列, ◆原告側「日本の法令を順守している」, ◆被告側代理人は欠席した理由を…, ◆ヘイト禁止条例の働きかけも「両輪で活動」

閉廷後に記者会見する日本クルド文化協会の関係者と弁護団=23日、さいたま市で

 この日はクルド人の支援者や、排外主義に反対する市民が中心になり、裁判を支援する会が結成された。ネット上で広がるヘイトスピーチ抑止には裁判だけでは限界があり、抜本的に禁じる法律や条例の必要性が指摘されているが、県内の自治体の対応は進んでいない。小川満代表は「県や議会に働きかけて条例を作ることと、裁判の勝利を両輪で活動していきたい」と話した。師岡康子弁護士は「多くの市民が差別に反対する声をあげるきっかけに裁判がなれば」と期待した。

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