政権交代を狙った立憲・安住幹事長が「決断できなかった」国民民主・玉木代表に思うこと 「政策、政策言っているうちは大きな政局は動かせない」

「自民党もウチも数合わせをやっている。当たり前のこと」――立憲民主党の安住淳幹事長はこう断言して、先の首相指名選挙をめぐる“政局劇”を演出した。首相候補の「有力な選択肢」として国民民主党の玉木雄一郎代表を挙げたことで、政権交代の可能性も一時、現実味を帯びていた。そんな安住氏、率直な物言いにはファンも多い一方で、時に「尊大」「不遜」と批判を浴びることもある。そうした評価を自身ではどう感じているのか。また、政権交代に向けて奔走した“舞台裏”とはどのようなものだったのか。本人を直撃した。
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――先の首相指名選挙で野党統一候補として名前を挙げた国民民主党・玉木代表のことを「玉木」と呼び捨てにしたこともありました。はっきりとした物言いがしばしば話題になり、時には「偉そう」と批判されることもありますが、そのキャラクターは意識してつくっているのですか。
いやいや、私はこの通り、自然体ですよ。高校時代から背伸びして生きてきたことなど全くありません。「ちびっこギャング」とか「インテリヤクザ」などとあだ名をつけられていますが、やるときはどこででも、誰が相手でもやりますよ。石巻(宮城県)の漁師町で育って、その風土のせいかもしれない。言葉は荒くても、正直に、いつでも本音で生きていくしかないから。体裁よく生きていこうなんて思ったことは一回もないです。
――石破茂前首相の辞任表明後、大きな「政局」となり、一時期は政権交代への期待感も高まりました。このとき、野党第1党の幹事長として東奔西走したのが安住さんでしたが、あの政局を振り返ると、どんな思いですか。
どの党も過半数を持っていない以上、どこかの党と組んで政権を担うしかありません。その連立の可能性を探ったのが今回の政局です。新たな連立の枠組みをつくるにあたっては、いくら批判されても、やはり最後は数の足し算にならざるを得ない。とはいえ、自民党が圧倒的な比較第1党で衆議院は196議席。わが党は148ですから、50近い差がある。この差はなかなか大きかったですね。自民党にはどこか一つの党がつけば限りなく過半数(233議席)に近くなる一方で、われわれは国民民主党と日本維新の会を足しても自民党とトントン、過半数に届きません。その意味で、(他の野党には)政権を取りにいくというリアリティーをなかなか感じてもらえませんでした。

■「政策が違う」は断るための方便
――政権を取るための戦略とはいえ、衆議院で148議席を持つ立憲民主党が30議席に届かない国民民主党の代表を担ぐのはかなり思い切った発言に映りました。
あくまで、玉木さん「も」ですから。一緒に政権を担う合意ができたのならば、その政党の代表の中から首相候補を選ぶことになります。その意味で、玉木代表も有資格者だ、と言ったわけです。ただ、珍しいことじゃないですよ。かつては小沢(一郎)さんが細川(護熙)さんを担ぎ、自民党だって政権復帰するときには社会党の村山富市さんを担いだ。過半数を持っていない大きな政党が政権を目指す際のオプションとしてはあり得る選択です。
――結局、野党3党による連立構想は実現しませんでしたが、実現する感触はありましたか。また、何が足りなかったのでしょうか。
維新は「立憲と国民民主さえ合意すれば話に乗る」と言っていたわけだから、ウチと国民民主党がうまく話ができれば、(連立は)あり得たと思いますよ。ただ、国民民主党は迷っていて、最後はやっぱり決断しきれなかったですよね。揺れているというか、煮え切らないというか……。
また、衆議院は何とかなっても、参議院(の会派)では、過半数125議席に対し、立憲・国民民主・維新を足しても87しかない。首班指名を勝てても(政権が)長くは続かないと感じて、ネガティブな反応になっていったんだと思います。
それでも公明党が自民党から離れたわけだから、たとえ連立には加わらなくても法案に賛成してくれれば十分に切り抜けられる数になる。3党でやれないことはないと思っていました。
――つまり、玉木さんが決断できなかった?
残念ながらね。玉木さん自身が主導して、立憲民主党も巻き込んだ形で「自民党政権とは違うものをつくりましょう」と言えば本当に(政権交代は)実現したかもしれないのに。
国会議員を30年やって感じるんですが、こういうチャンスのときに「政策が違う」と言っている人間は絶対に大きい仕事はできないですよ。政策の根本が違うと言うけれど、それは断るための方便だと思います。
玉木さんは旧民主党でわれわれが政権を担っているとき、(旧民主党の)1年生議員でした。財務省出身だけあって質問力はあるし、ちゃんとファクトをつかんでやっていたという点で、非常に頭のいい政治家だと思います。ただ、権力のおこぼれ頂戴みたいな話はできるかもしれないけれど、巨大な権力に挑んで倒していく政治をやる覚悟はあるのかなと。20~30人いる政党というのは都合がよくて、自民党にしてみれば「政策の1つや2つ聞きますよ。その代わり予算案に賛成してね」となるでしょう。要するに陳情ですよ。野党のリーダーとして、「政策、政策」ばかり言っているうちは大きな政局は動かせませんよ。

■高市政権に迎合なんかしない
――高市早苗政権の滑り出しはどう見ていますか。現在はかなり高い支持率が各社の世論調査で出ています。
ファクトをちゃんと調べないで外国人政策の強化をするなど、世論に迎合してスタートした政権のような気がしますね。時間がたっても、本当にその数字を維持できるかが肝でしょう。維新と結んだ(政策協議の)12項目も本当に実現できますか? 言っていることには、かなり矛盾がありますよ。例えば、社会保障制度改革で維新は医療費4兆円削減と言っているけれど、いま地方へ行けば行くほど病院は大赤字ですよ。このインフレの時代、大病院ほど赤字で医療崩壊の危機にあるのだから、われわれは診療報酬を上げざるを得ないと思っています。どこから削減するんだっていう話ですよ。そんな曖昧なものに平気でサインするのが自民党らしいけれど、すぐに行き詰まる可能性があります。選挙制度改革だって乱暴ですよ。いきなり衆院の比例で50も削れって。議会制度の話はこれまで各党で協議会を開いて議論してきたのに、それを飛ばしていきなり2党で合意してしまった。首相に就任することにエネルギーを費やして、高い代償を払っているんじゃないかと感じます。ウチはそんな高市政権に迎合なんかしないですよ。
――次期衆院選についてもうかがいます。最大の支援団体である「連合」は立憲民主党・国民民主党の候補者一本化を要求する一方、国民民主は立憲の現職がいる選挙区にも積極的に候補者を擁立する姿勢を見せています。これにはどう対応しますか。
現実に立てているわけではなくて、「立てる、立てる」というキャンペーンをやっているだけだから、それは気にしていないです。候補者は立てればいいということではなく、勝てるかどうかの話ですから。衆院選の小選挙区で自民党に対抗して勝つっていうのは大変なことですよ。われわれは北海道から沖縄まで自民党とガチンコでやってきましたからね。比例で何議席か取って20~30人で固まって政策要求していこうという政党とはわけが違う。そういう点では立憲民主党だけが自民党に対抗できる勢力なんです。連合だけではなく、さまざまな勢力と連携しながら、1選挙区ずつ勝つための戦略を立てないといけない。もちろん、国民民主党がいい候補者を本当にそろえているのであれば、譲るところは譲るのは全然かまわないですよ。
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取材の最後、記者が安住氏の地元・石巻に通っていることを話すと、ポツリと言った。
「もう(東日本大震災から)14年だからな、年とったよ。俺、あのときは49歳だったんだ。石巻の国会議員は1人だけでさ。いつ辞めてもいいくらい仕事をしてきた自負はありますよ」
そう話す安住氏の目はまだまだ気力に満ちていた。もうしばらくは、安住氏が政局に嵐を起こす可能性はありそうだ。
(聞き手・構成/AERA編集部・川口穣)
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