銃撃事件公判で山上被告、母親の信仰理由に事件起こし「非常につらい立場に立たせてしまった」
安倍晋三・元首相が2022年に奈良市で演説中に銃撃されて死亡した事件で、殺人罪などに問われた無職山上徹也被告(45)の第10回公判が20日、奈良地裁であり、被告人質問が始まった。山上被告は「このような結果になってしまい、大変ご迷惑をおかけしております」と語り、母親や妹への心情も述べた。公の場で事件への思いを語ったのは初めて。
■「生きるべきではない」

弁護側の質問に答える山上被告(イラスト・構成 竹本佐治)
午後3時45分頃、黒のスエットにベージュのズボン姿の山上被告は田中伸一裁判長に促され、ゆっくりとした足取りで証言台に向かい、裁判長に一礼した後、着席した。
冒頭、弁護人から「45歳まで生きていると思っていたか」と問われ、「生きているべきではなかったと思います」と発言。理由を問われると、数秒間沈黙した後、「大変ご迷惑をおかけしておりますので」と語った。
弁護人は「遺族への気持ちは後日聞く」と言い、生い立ちについての質問に移った。
■壊れた家族関係

山上被告と事件を巡る経緯
山上被告は初公判で殺人罪を認めた。公判では、母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に総額1億円の献金をしたことによる家庭崩壊が、事件に与えた影響をどこまで量刑に反映するかが焦点となっている。
被告は弁護人の質問に対し、時折沈黙し、言葉を選びながら落ち着いた口調で答えた。
被告の説明によると、被告が母親の入信を知ったのは中学2年で、献金がわかり、家族間のトラブルが始まった。
同居していた母方の祖父は、脱会を求めても応じようとしない母親について、「このままでは全て財産を持っていってしまうぞ」と口にしていた。自宅から母親を閉め出したり、家族のいる場で「(母親を)殺害して自分も死ぬ」と包丁を持ち出したりしていた。
山上被告は「それまでの人生観とは、考え方が根本的に変わってしまった気がしていた」と振り返り、高校への進学について「義務教育ではないので、通うことが当然ではないと思っていた」と述べた。

弁護側の証人尋問を聞く山上被告(イラスト・構成 竹本佐治)
高校時代に家庭環境を教師に相談しなかった理由を尋ねられると、「教師の領分ではないと思った」と答えた。
高校卒業後に約2週間、母親の勧めで教団施設のある韓国に渡航したと明かし、「強い勧めで、断り切れなかった」と説明。自身の入信については、「母親がしていることを知っているので、入ろうと思わなかった」とした。
20歳代前半で海上自衛隊に入隊した後は、母親を経済的に支援していたとし、「非常に不満だった。教団に間接的に利用されていると思っていた」と述べた。
■「献金さえなければ」
山上被告は母親について「基本的には悪い人ではないと思っているが、教団に関することでは理解しがたいことが多々あった。あれほど多額の献金さえなければ、(入信したことは)それでよかったと思う」と語った。
母親は18日の証人尋問で、「私が加害者」と証言。尋問後には「てっちゃん、ごめんね」と被告に語りかけた。山上被告は被告人質問で「(事件によって)非常につらい立場に立たせてしまった。母親の信仰を理由とした事件を起こしてしまい、母親も責任を感じているのだと思う」と推し量った。
自身と同じく母親の献金に苦しんできた4歳下の妹への思いを問われると、「一番傷ついていたのではないかと思った」と気遣った。
被告人質問は25日と12月2~4日にも行われる予定で、今後、事件に至る経緯や動機を詳しく語るとみられる。