東京・丸の内の老舗ホテルで味わう「蜜の味」 都心で採れた蜂蜜が高級デザートになるまで

東京・丸の内の老舗ホテルで味わう「蜜の味」 都心で採れた蜂蜜が高級デザートになるまで
東京都心のオフィス街で養蜂に取り組む「丸の内ハニープロジェクト」。大都会で採れた蜂蜜は、どこでどのように消費されているのだろうか。活用の一例を見せてもらった。
創業100年の記念菓子にも
「うちのホテルで、この蜂蜜を使ったデザートをお出ししているんです。ぜひ味をみてください」
真夏のある日、大手町ビル(千代田区大手町)の屋上で同プロジェクトの活動を取材中、こんな〝甘い誘い〟を受けた。声の主は、丸ノ内ホテル(同区丸の内)の料飲チーフアドバイザー、泉田壮一さん。採蜜作業でひときわ汗をかいていた一人だ。ご厚意に甘え、二つ返事で〝飛んで行った〟。
丸ノ内ホテルは昨年、創業100年の節目を迎えた老舗。日本の玄関口・東京駅に直結する好立地で、国内外から宿泊客を迎え入れている。ホテル内のレストランでおいしい食事を楽しむ利用客も多い。
「昨年は創業100年ということで、記念のオリジナル菓子を作ったんです」。出迎えてくれたのは、丸ノ内ホテルのフレンチレストラン「ポム・ダダン」で腕を振るうシェフパティシエ、進士(しんじ)一郎さん。昨年、日本橋にある系列のホテルから異動し、現在は丸ノ内ホテルのデザートを任されている。

丸ノ内ホテルのシェフパテシィエ、進士一郎さん
進士さんによると、東京産の蜂蜜は思いのほか認知されており、丸の内エリアで採れた蜂蜜を目当てに訪れる客も少なくないという。「ポム・ダダン」では、丸の内産の蜂蜜を使った焼き菓子とプリンを組み合わせたデザートプレートを提供している。
職人技が生む絶妙なバランス
そのデザートプレートが、いよいよ筆者の前に運ばれてきた。マドレーヌ、カヌレ、抹茶のヌガー、プリンの4種類のお菓子とカラメル蜂蜜ソースが、一枚のお皿に美しく盛られている。その上に色鮮やかなリング状の焼き菓子が乗っており、4つのお菓子をつなげる役目を果たしていた。

まず目を見張ったのが、このリング。チュールというクッキーのようなお菓子で、六角形の巣房やハチを模した繊細な形をしていた。鮮やかな紅のグラデーションにも目を奪われた。
壊さないようチュールをそっと動かし、まずいただいたのがマドレーヌ。蜂蜜を20%も使っているそうだが、あっさりとしたほのかな甘みで、しつこさはない。「砂糖をこんなに使うことはないのですが、蜂蜜だと邪魔しない甘さというか。いい感じですよね」(進士さん)。
カヌレは、外側の蜜がカリッとしていて、中はモチッ。卵のうまみが凝縮された味。抹茶のヌガーは、ねっとりまとわりつく感覚がなく、ほどよい口溶けだ。抹茶のほろ苦さを蜂蜜の甘さがサポートして、まとめ上げている。ヌガーの上のチョコレートには、丸ノ内ホテルのエンブレムが刻まれていた。
最後にプリンをいただいた。舌触りはなめらかだが食感は硬めで、カラメルがいいアクセントになっている。「このカラメルに蜂蜜の味を出したかったので、試行錯誤して苦労しました」という進士さんの話に納得した。絶妙なバランスだ。
このデザートプレートのほか、蜂蜜を使ったドリンクも提供している。人気のレモンスカッシュには、シロップに蜂蜜を使用。カクテルにも使っていて、季節のリキュールやスパークリングワインとブレンドしているのだそうだ。
大都会でも地産地消
「丸の内の蜂蜜は、本当に応用範囲が広い。朝食のパンケーキやフレンチトーストにもばっちり合います」と進士さん。泉田さんが「この蜂蜜が東京の丸の内で採蜜されているというのは、夢が広がりますよね」と続けた。
地産地消というと地方の話のようだが、都会の真ん中でも自然と共生するコミュニティーが生まれ、新しい街づくりが模索されている。それを肌で、そして舌で感じることができた。(速水裕樹)