「底なし少子化と志願者半減」2年後に共学化…全国最大級の武庫川女子大、理事長を直撃

2年後の共学化を控え、将来の大学ビジョンを語る学校法人・武庫川学院の大河原量理事長=兵庫県西宮市(南雲都撮影)
約1万人の学生を抱え、全国最大規模の女子大として知られる武庫川女子大(兵庫県西宮市)は、令和9年度から全13学部を共学化することを決めた。急速な少子化を背景に募集停止や共学化にかじを切る女子大は多いが、中には京都女子大のように共学化せず、「女子教育堅持」を掲げるところもある。武庫川女子大が共学化の道を選んだ理由、そして目指す「大学像」とは何か―。運営する学校法人・武庫川学院の大河原量理事長に聞いた。(聞き手 浦柚月)

共学化の方針を発表した武庫川女子大=兵庫県西宮市 (南雲都撮影)
――共学化を検討し始めたのはいつごろからか
令和21年の武庫川学院創立100周年に向けて5年ごとに中長期計画を立てているが、85周年を迎えるのを前に、共学化の道を考える必要があると議論になった。
――議論の理由は
底なしの少子化と女子大離れのダブルパンチだ。一般入試の志願者は5年前と比べて半減している。将来大幅に志願者が減少する危機的な数字が予想された。全教職員に活発な意見をもらい、女子大を維持するのは難しいという結論になった。これまで女子大ゆえの限界があり、できないこともあった。多様化する社会で学生が自分らしく一生を描ききる力を身に付けるために、女子大教育のよい面を共学化しても引き継ぎ、特色として伸ばしていこうという考え方になった。
――女性大を取り巻く環境は厳しくなっている
教育研究分野の幅広さは、伝統ある共学大学に及ばない。文部科学省は、理系人材の育成のため理工農系学部への支援を強化する方針を示しているが、女子大として新しい学部学科をつくるのはかなり厳しい。理系の女子高生のマーケットは非常に小さいので、そういう人たちは国公立を目指し、なかなか女子大に志願者は回ってこない。

「ダイバーシティと研究力で旋風を起こす大学」を掲げたいと語る学校法人・武庫川学院の大河原量理事長=兵庫県西宮市(南雲都撮影)
また、女性のみの集団の中で行うリーダーシップ教育は、もちろん良い面がたくさんあるが、一方で男性も含めた多様な意見に触れる環境が不十分という弱点もある。
――共学化し、どんな大学を目指すのか
具体的計画はこれからだが「ダイバーシティと研究力で旋風を起こす大学」というビジョンを掲げている。伝統的な大学のスタイルから未来型の大学に変えていきたいという考えが基本にある。 われわれは女子大ということもあり、「女子大ルーツの共学大学」に意味を持たせたい。例えば、ジェンダー教育。今の時代、女性だけが学ぶのではなく、男性もジェンダーについて学び、互いに理解しあうことが重要だと考えている。

2年後に共学化する武庫川女子大。きめ細かな教育体制の質は維持するという=兵庫県西宮市
――これまでの女子大の意義とはなにか
本学が開学した昭和24年当時女性の大学進学率は2%だった。こうした中、本学は女性にも男性と同じ教育を受ける機会を提供する場として長年機能してきた。他の女子大学が家政学など教養教育に力を入れる中、開校当初から自立して家庭や社会で活躍できる職業婦人を養成すべく「資格教育」に力を入れてきた。そのため、時代に合わせて学部を増やし、現在の13学部の形となった。
今は女性の大学進学率は男性とほぼ差がなくなってきた。そういう意味で、女子大が女性の大学進学率を支えていくという役割は一定終わったと考えている。経営的にも健全な時に10年、15年先を見て決断した。
――共学化決定を発表した7月の記者会見では、現在の在学生が卒業するまで「女子大の環境を維持する」と話していた。具体的には
在学生は制度やカリキュラムは変えず、クラスもそのままで卒業する。男性が入ることはない。環境的には、トイレや更衣室などを整える。ほかにも、クラブ活動で男女別のチームを作るケースも出てくるだろう。学生たちの意見を聞いて、コミュニケーションを取りながら環境整備を進めていければ。
――2年後の共学化に向けて
今のきめ細かな教育体制の質は維持し、研究力を中心に教育を再構築したい。学部時代から研究力をつける教育をして、将来活躍してもらいたい。また多様な社会の中で活躍できるような学生を育てていきたいと思っている。