大阪梅田駅チカが揺れる! 「若者文化の聖地」から人気ファッション店が次々撤退、街は今後どうなるのか?
街を埋め尽くす若者の流入
大阪梅田駅で列車を降りた若者たちが、駅の東側に向かって一斉に歩き始める。鉄道高架沿いの歩道へ出て横断歩道を渡る。向かう先は多くの商業施設が並ぶ茶屋町だ。11月中旬の週末、10haに満たない狭い区画に大勢の若者が吸い込まれた。
【画像】「マジかぁぁぁぁ!!」 これが40年前の「茶屋町」です(計12枚)
「大学の飲み会で来て以来、茶屋町が気に入った。きょうはコミックを買うつもり」。堺市南区の男性(20歳)は兵庫県西宮市の大学に自宅から通っている。小学時代からアニメや漫画のファンで、アニメやコミック、ゲームの専門店「アニメイト梅田」が商業施設のNU(ヌー)茶屋町にオープンして以来、休日や下校時に茶屋町を訪れる機会が増えたという。
茶屋町には大阪工業大や関西学院大がキャンパスを置くほか、多くのビルが公開空地を設けてベンチを配置し、一般人が自由に立ち入りできるようにしている。公開空地とは、都市計画や建築基準法に基づき、建物の建設者が一定面積以上の土地を一般利用者のために開放する空地のことで、歩行者の通行や憩いの場として活用される。
茶屋町の公開空地の広さは約3ha(3万平方メートル)で、地区面積の約3割に達する。それが美しい景観をつくり、若者たちを引き寄せている。この日もアプローズタワーの前で大勢の若者が談笑していた。
人気店が近隣商業施設へ移転

茶屋町で営業していた梅田ロフト。2024年9月当時(画像:ロフト)
そんな茶屋町が大きな変化のときを迎えている。茶屋町に若者を集めてきた生活雑貨の「梅田ロフト」やファストファッションの
・ユニクロOSAKA店
・ZARA(ザラ)大阪梅田店
が、2025年になって閉店したからだ。ロフトは阪神百貨店梅田本店、ZARAはグラングリーン大阪南館に移転、ユニクロは新旗艦店「ユニクロUMEDA店」をリンクス梅田に開設した。
梅田地区はJR大阪駅周辺でグラングリーン大阪やKITTE(キッテ)大阪など再開発が相次ぎ、新たな商業施設が次々に誕生している。オーバーストア気味といわれるなか、商業施設の客入りを左右する人気店は引っ張りだこ。茶屋町の人気店が次々に奪われた格好だ。
阪急などが次々に再開発

大勢の若者が行き交う茶屋町の交差点(画像:高田泰)
茶屋町は明治時代、旧能勢街道沿いに茶屋があったことから、その名がつき、高度経済成長期まで昔ながらの長屋が並んでいた。それを一気に変えたのが1990(平成2)年に関西初上陸した梅田ロフトだ。おしゃれな生活雑貨を求めて若者たちが次々に集まり、黄色いロフトの買い物袋が街にあふれた。
香川県高松市の女性公務員(46歳)は学生時代を大阪府吹田市で過ごした。週末に出かけるのはもっぱら茶屋町。「お金がないから、デートのときもウインドーショッピングして食事するぐらい。それでも週末になると訪れていた」と懐かしむ。
ロフトの出店とほぼ同時期にTBS系列の準キー局・毎日放送の本社が吹田市から移転してくる。これに続いて阪急グループがNU茶屋町やアプローズタワー、梅田芸術劇場、ホテル阪急インターナショナルなどを整備し、茶屋町が
「阪急村」
と呼ばれるようになった。今ではタワーマンションが生まれ、富裕層とみられる姿も目立つ。
高層建築物の導入効果

茶屋町に置かれた大阪工業大梅田キャンパス(画像:高田泰)
大阪市は2011(平成23)年、茶屋町とその東側の鶴野町のうち、約2.3haで再開発を促す地区計画を施行し、大阪工業大が入るOIT梅田タワー、ユニクロOSAKA店がテナントとして入居していたヤンマー本社ビル、複合商業施設のABC-MART(マート)梅田ビルが誕生した。
大阪市都市計画課は
「茶屋町はJR大阪駅周辺の都市再生緊急整備地域の一角。容積率を緩和するなどし、高層建築物の導入を促して土地利用の高度化を図るのが地区計画の狙い。回遊性に優れた都市空間の形成も目指している」
と説明する。
サブカルの店舗が相次いで進出

4月にオープンしたアニメイト梅田(画像:高田泰)
ロフトなど人気ファッション店の閉店で茶屋町の未来が暗いかといえば、どうもそうではなさそうだ。地元の不動産業者は
「テナント側から見た茶屋町の人気は根強い。内装の自由度が高く、店舗の世界観を出しやすい路面店型で進出先を物色する問い合わせが多い」
という。
阪急大阪梅田駅の1日平均乗車人員は2024年で約45万人。近くにはJRの大阪駅や北新地駅、阪神電鉄大阪梅田駅、大阪メトロの梅田駅、東梅田駅、西梅田駅があり、合計すると200万人を軽く上回る。茶屋町が絶好の場所であることは変わらない。
最近、進出が目立つのはアニメや漫画などサブカルチャーの店舗。アニメイト梅田のほか、カプセルトイの「ガチャガチャの森」、「#C-pla(シープラ)」、アニメグッズの「駿河屋」が2024年以降、茶屋町に出店した。日本のアニメ、漫画に興味を持つ訪日外国人観光客の姿も徐々に増えている。
「若者の街」の変貌期

再開発に向けて取り壊しが進む梅田コミュニティセンター(画像:高田泰)
OIT梅田タワーの北側では、地元の再開発組合と組合員の東急不動産が再開発を計画し、梅田コミュニティセンターの取り壊しに入っている。17階建て延べ約3万平方メートルの複合施設など2棟の施設を整備し、商業施設やホテル、オフィスを入れる計画が打ち出されている。
ファッションの街からサブカルの街へ変ぼうを遂げようとする茶屋町。過渡期を迎えた今も若者のトレンドを先取りしながら、新しい姿を模索しているのだろう。若者文化の最先端であり続けてきた街は、次のステップに向けた準備期間に入っているようだ。