タイがカンボジアを空爆し、和平合意は形骸化:両国は互いを非難

タイがカンボジアを空爆し、和平合意は形骸化:両国は互いを非難

2025年12月8日、タイ軍の航空機がカンボジア側の拠点を攻撃し、両国の国境地帯でかろうじて保たれていた安定は脆くも崩れ去ってしまった。両国は7月に大規模な軍事衝突に至り、多数の死者や避難民を出す事態となった。その後、和平合意が成立したものの、徐々に実効性を失い、今回の空爆によって対立は大きくエスカレート。CNN放送によれば、タイ政府は今回の空爆について、カンボジアが仕掛けた攻撃によってタイ兵1人が死亡し民間人7人が負傷したことへの報復だと主張。カンボジアによる「容認できない主権侵害」があったと説明している。

しかし、カンボジア側の主張は異なっている。同国政府によれば、数日間にわたって挑発行為を繰り返した挙げ句、攻撃を仕掛けたのはタイ側であり、カンボジア側は国境地帯の集落や住宅が深刻な被害を受けたというのだ。BBC放送は戦闘開始から数時間のうちにカンボジア側の民間人4人が死亡し、複数が負傷、さらに数千人がオッダーミエンチェイ州やプレアヴィヒア州の農村地帯から避難したと伝えている。

数週間にわたりくすぶっていた火種

タイのアヌティン・チャーンウィラクン首相は戦争を望んでいるわけではないが「領土侵犯は決して容認しない」と強調。さらに、タイの外相はCNN放送の取材に対し、主権が脅かされる状況が解消されるまで「軍事行動は続く」とさらに踏み込んだ発言をしている。一方、カンボジア国防省はタイ側の攻撃に応戦した事実はないと主張。数ヵ月前に締結された停戦合意へのコミットメントを堅持するとした。

両国による交戦が頻発化する中、国境地帯では両国合わせて数十万人の民間人が避難を余儀なくされている。タイ側はすでにおよそ40万人の市民を一時避難所に移送したと発表した。

実効性を失う和平合意

現在進行しているのは、最近まで“外交の勝利”だともてはやされていた和平合意の崩壊だ。タイとカンボジアはトランプ米大統領が見守る中、2025年10月にクアラルンプールで和平合意を締結。CNN放送によれば、トランプ氏はこの合意を自身の外交成果のひとつだと誇っていた。ところが、合意成立から2週間も経たないうちに、タイ兵数人が地雷の爆発によって負傷する事件が発生し、和平合意は徐々に実効性を失っていった。

タイとカンボジアの緊張は根深い。両国は数十年にわたり断続的な武力衝突を繰り返しており、2025年7月には5日間の戦闘で数十人が死亡、約20万人が避難する事態となった。問題の核心はフランスが植民地時代に定めたおよそ800キロメートルの国境線であり、タイ側はこれを完全には受け入れていないのだ。戦闘は山岳地帯やジャングルで行われており、丘ひとつの帰属が主権を左右する状況となっている。

さらに、ここ数ヵ月は戦闘が激しさを増しつつある。両軍はドローンや長距離砲、多連装ロケット砲、爆撃機を投入しているのだ。CNN放送にいわく、タイはカンボジア軍が特殊部隊を再配置し、塹壕を掘ってタイ側の陣地上空にドローンを飛来させたと非難。これに対しカンボジア側は、タイが住宅を焼き払い、カンボジアの民間人を難民化させていると反論した。

このような情勢の中、トランプ政権が仲介した合意は崩壊しつつある。ホワイトハウスは暴力の即時停止を要求、両国が和平合意を順守することを期待していると発表したものの、タイは「この危機はタイとカンボジアの間で解決すべきものであり、米国の問題ではない」と冷ややかだ。

現在、カンボジアと国境を接するタイ側の7県のうち、平穏を保っているのは1県のみとなった。全面戦争のおそれも現実味を帯びつつあり、地域全体を巻き込んだ紛争に発展するとの懸念もある。東南アジア諸国連合(ASEAN)は加盟国同士の対立が一帯の安定を揺るがしかねない状況に危機感を隠さない。

その一方で、民間人は避難生活を送りながら、大事にならずに危難が去ることを願っているのだ。

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