ロシア軍がじわじわ進軍する中、ウクライナを見限り始めたトランプ政権、焦りを見せる欧州
終わりの見えない戦争

まったく終結する気配が見えないウクライナでの戦争だが、ロシアは戦場での軍事的圧力に加え、外交交渉における駆け引きを活性化させている。地上でロシア軍がさかんに攻撃を行う一方、プーチン大統領はドンバス地方全域の割譲を強硬に求め続けているのだ。クレムリンはウクライナ領の19%あまりを制圧したと主張し、さらに勢力圏を広げる構えだ。
進展しない和平交渉

一方、外交面ではプーチン氏とトランプ米政権のスティーブ・ウィトコフ特使による会談が決裂に終わったと報じられている。28項目から27項目に縮小されたトランプ和平案について、領土割譲と安全保障に関わる重要項目をクレムリンが拒否したためだという。
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ウクライナ側の反応は不透明

また、ウクライナ側が米露協議にどう反応するかは依然として不透明だ。一方、プーチン政権はさらなる譲歩を引き出すために攻勢を強めており、ウクライナ各地では連日、空爆が続いている。
ウクライナ支援をめぐって紛糾するEU

そんな中、ブリュッセルではウクライナに対する財政支援をめぐって攻防が行われている。とりわけ、ロシアの凍結資産を流用すべきかについて意見が別れているが、2027年までのウクライナ支援パッケージ(900億ユーロ規模)はすでに最終調整の段階に入った。資金が枯渇しつつあるウクライナにとって、この議論は軍事作戦に匹敵する緊急課題だと『ガーディアン』紙は伝えている。
ドンバス地方で攻勢を強めるロシア軍

軍事面ではドネツク州のポクロウシクとミルノフラード周辺が激戦地となっている。ロシアは一帯のウクライナ軍部隊をほぼ包囲したと主張、ウクライナ側も数週間にわたって苦しい防戦を余儀なくされていることを認めた。中東衛星放送アルジャジーラによれば、ポクロウシクはウクライナ東部における補給線の要であり、「戦闘の震源地」になっているとのこと。
空爆による被害

また、空爆による犠牲者数も日々、増え続けている。ドニプロでは最近の攻撃で少なくとも4人が死亡。首都キーウやヘルソン、オデーサでもミサイルやドローンにより、死者や多数の負傷者が出ているのだ。同時に、電力インフラや鉄道施設にも被害が広がっている。
自爆ドローンの起爆を阻止するネット

前線から届いた映像には、道路が巨大なクモの巣のようなネットで覆われた光景が広がっている。両陣営が低空から飛来する自爆ドローンを阻止するために設置したものだ。このネットはドローン突入時の衝撃をやわらげることで、起爆を防ぐ役割を果たしのだ。
ドローン攻撃を強化するロシア軍

大規模なドローン攻撃はこの戦争を象徴するものだ。2025年9〜10月にロシア軍が繰り返し行った空爆では、一晩のうちに500~800機あまりものドローンやデコイが投入されたとされる。AP通信によれば、ミサイルおよびドローン550発が発射され、少なくとも5人が死亡したケースもあるという。
シャヘドドローンによる飽和攻撃

また、2025年11月6日には、ロシア軍が5つの方向からシャヘドドローンを大量に発射、ウクライナの防空部隊は108機を撃墜・無力化したものの、複数が命中したという。これはロシア側がはじめた秋季空爆作戦における試験的なドローン攻撃の一つだったと見られる。
「継続的な空爆テロ」

さらに、7月には開戦以来、最大規模となるドローン・ミサイル攻撃が行われた。この空爆ではドローン728機およびミサイル13発が発射され、ウクライナ側はうち711発を撃墜。記録的な空爆となった。フランス24放送はこれについて、ウクライナの都市に対する「継続的な空爆テロ」だとしている。
冬季における常套戦略

ロシアによる大規模攻撃はおもに送電・暖房インフラを狙ったものだが、これは冬季における常套戦略だ。CBS放送によれば、多数のドローンやミサイルが変電所や火力発電所、燃料貯蔵施設に向けて撃ち込まれており、住民を暗闇と寒さに追い込む意図があるという。
激戦地となったポクロウシク

一方、夏の段階でロシア軍が11万人の兵力を投入したとされるポクロウシクは消耗戦の舞台と化している。最近の報道によれば、街中に塹壕が掘られて街角からは人気が消えており、建物は砲撃によって瓦礫と化しているとされる。なお、専門からによれば、ドネツク州の帰趨はこの都市にかかっているとのこと。
「スパイダーウェブ作戦」

一方で、ウクライナ側も手をこまねいているわけではない。2025年6月1日にウクライナは「スパイダーウェブ作戦」を実施。国境から数千キロメートル離れたロシア領内の空軍基地5箇所に対し、ドローン117機を用いて攻撃を仕掛けたのだ。ロイター通信によれば、ロシア側は長距離航空機およそ20機が損傷を受けたほか、少なくとも10機が破壊されたという。
チェルノブイリ原発にドローンが衝突

これに先立つ2025年2月には、チェルノブイリ原発の格納構造にドローンが衝突。死傷者も放射能漏れもなかったが、欧州における原子力リスクの象徴である同施設が再び注目を集めた。なお、ロシアは関与を否定したが、ウクライナはロシア軍の仕業だと非難している。
長続きしなかった「部分的停戦」

その後、米国の仲介によってロシアは1ヶ月間、ウクライナのエネルギーインフラを攻撃しないとする「部分的停戦」が成立した。しかし、アルジャジーラいわく、双方が互いの違反を訴えて、この合意は早々に形骸化してしまった。
サウジアラビアでの和平交渉

また、サウジアラビアの首都リヤドでは米露代表によるサミットが開催され、欧州の安全保障やNATO 拡大の制限など、幅広い枠組みでの交渉が模索された。成果は限定的だったが、外交チャンネルが再開されたことの意義は大きい。
ブダペスト:実現しなかった米露首脳会談

その数ヵ月後、トランプ米大統領はブダペストでプーチン大統領と会談し、ウクライナおよび欧州各国が受け入れられるような停戦案をまとめるという構想を提示。ところが、この計画は数日のうちに潰えてしまった。ロシア側がドンバス地方全域の割譲とと非武装化ウクライナを要求し、ウクライナ側は「敗戦の既成事実化」として拒否したためだ。
物議を醸す28項目のトランプ和平案

その裏で、トランプ政権は28項目からなる和平案をまとめていたことが判明。ウクライナの安全保障や、NATO拡大の制限、ロシア凍結資産の扱い、欧州におけるウクライナの立ち位置といった内容が含まれていた。しかし、欧州各国にとってこの和平案はロシア寄りであり、EUは警戒感を露わにした。
警戒感を露わにするEU

ウクライナ問題をめぐって米露が存在感を増す中、欧州各国の指導者らは自分たちが蚊帳の外に置かれることを懸念。AP通信によれば、EUは依然としてウクライナ支援で中心敵役割を担っているが、ウクライナとEUを置き去りにしたまま米露間で合意が進むことへの不安が吹き出しているとのこと。
変化する局面

欧州メディアによれば、すでに開戦から1,370日あまりが経過。この間、戦争をめぐる局面は初期の電撃戦からドローンを主な兵器とする消耗戦、さらには外交合戦へと移り変わってきた。そして現在、プーチン政権はウクライナに対する攻撃の手を緩めるつもりがまったくないようだ。
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