「消防車が入れない」軽自動車1台がやっとの道…古い木造家屋がひしめく密集市街地で首都直下地震が起きたら

 首都直下地震=マグニチュード(M)7級=の新しい被害想定では最大死者約1万8000人のうち、7割近い約1万2000人が火災で死亡するとされた。特に耐震、耐火性が低い老朽木造住宅などが密集して立つ市街地での火災リスクが指摘されており、対策が急がれる。(今坂直暉)

◆大規模な火災、狭い道路がふさがり避難困難になるリスク

◆大規模な火災、狭い道路がふさがり避難困難になるリスク, ◆多くはサラリーマン家庭…日中は高齢者と子どもばかり, ◆狭い土地を分割して新しい家が…「密集度は増している」, ◆「2020年度までに密集市街地の解消100%」未達成

住宅が密集して幅が狭い道路が入り組む上十条5丁目(一部画像処理)

 「消防車が入ってこられないのはわかっている。住民でどれだけ初期消火ができるかにかかっている」。東京都北区の「上十条五丁目町会」で町会長を務める小菅和子さん(90)が、力を込めて自主防災の重要性を語る。

 同地区は国が「著しく危険な密集市街地(密集市街地)」に定めた都内の4地区の一つ。古い木造建物が密集し、地震時に延焼が拡大して大規模な火災が起きたり、狭い道路がふさがって避難が困難になったりする可能性があり、特に対策が必要とされるエリアだ。

 周辺を歩くと、狭い所で道幅は2メートルほど。住宅が隙間なく立っているところも多く、袋小路も散見された。軽乗用車が1台やっと通れるような道も。車は路地を曲がるのに、ぶつからないよう苦労してゆっくり走行しているようだった。

◆多くはサラリーマン家庭…日中は高齢者と子どもばかり

 町会では、街頭の消火栓に金属製パイプをつないでホースを接続できるようにして簡易的に放水できる「スタンドパイプ」を地区の7カ所に配置してきた。

◆大規模な火災、狭い道路がふさがり避難困難になるリスク, ◆多くはサラリーマン家庭…日中は高齢者と子どもばかり, ◆狭い土地を分割して新しい家が…「密集度は増している」, ◆「2020年度までに密集市街地の解消100%」未達成

自宅の敷地にスタンドパイプを設置している小菅さん

 スタンドパイプは、地区内に分散して家庭の敷地などに保管。近隣住民がいつでも使えるように敷地内に置いている家庭は門に鍵をかけないなど徹底している。隔月で放水訓練も実施。消火器の設置も町会で各戸に指導して、路上の電柱脇などにも置いている。

 地区の約1800世帯の多くはサラリーマン家庭で、日中は高齢者と子どもばかりになる。地震ではまず建物倒壊などから身の安全を守ることが最優先で、初期消火は次の段階だ。そもそも水道が止まってしまえば消火作業はできない。

◆狭い土地を分割して新しい家が…「密集度は増している」

 最近は不動産価格の高騰で、もともと狭い土地をさらに分割して狭小住宅が建つようになったという。小菅さんは「前より密集度合いは増している気がする。今のままで初期消火ができるか心配だ」と気をもむ。

 国などは密集市街地の解消を急いでいる。道路の拡幅や老朽建築の撤去などを進め、国土交通省によると、初公表した2012年時点で都内に1683ヘクタールあったが2024年度末までに45ヘクタールに減少。首都直下地震の影響を受ける1都3県(埼玉、千葉、神奈川)では2011年度の約2500ヘクタールのうち、2023年度までに約82%が解消された。それでも東京ドーム約90個分に相当する約400ヘクタールが残る。

◆「2020年度までに密集市街地の解消100%」未達成

◆大規模な火災、狭い道路がふさがり避難困難になるリスク, ◆多くはサラリーマン家庭…日中は高齢者と子どもばかり, ◆狭い土地を分割して新しい家が…「密集度は増している」, ◆「2020年度までに密集市街地の解消100%」未達成

 当初、解消率を2020年度までに「100%に近づけることを目指す」としていたが、目標は未達成。密集市街地には該当しなくても、木造建物が集中している場所は数多く残り、潜在的なリスクも高いままだ。

 自治体などは、地震を検知して電気を遮断し電気火災の防止に有効とされる「感震ブレーカー」の設置も推進してきたが、普及は低調だ。関東地方と山梨、静岡両県での設置率は約20%で、試算ではすべての住宅に感震ブレーカーを設置すれば、地震による火災を72%減らせるとされるが、密集市街地での設置率も約30%にとどまる。

 自治体による設置補助金もあり、上十条五丁目町会としても住民に設置を促しているものの、小菅さんは「強制はできないので、町会としてはどれくらい設置が進んでいるか把握できていない」と話した。

密集市街地 太平洋戦争の空襲を受けなかったり、高度経済成長期に人口が増えた際に区画整理が不十分なまま住宅が建てられたりした郊外に多く見られる。このうち1ヘクタールあたりの住宅戸数が80戸以上など特に火災が燃え広がりやすく避難が難しい地域について、国は2012年に「著しく危険な密集市街地」として公表した。

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