介護保険の母・樋口恵子さん93歳。第4回樋口恵子賞授賞式で「何しろみなさま、おめでとうございます!」と元気に挨拶
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売名行為と言われるかもと悩んだことも
「誰もが生きがいをもって安心して暮らせる超高齢社会の創造と、次世代の輝く未来を目指して活動する個人または団体を応援します」。そんな思いから樋口恵子さんがこれまで受賞した賞の賞金などを社会に還元すべく創設した樋口恵子賞。第4回の授賞式には樋口さんが出席、受賞者を祝福しました。
「ご本人からひとこと」とマイクを向けられると樋口さん、
「賞を立ち上げたときは、何をしたらいいのか、そもそも樋口恵子という姓名を賞の名前にすることは売名的でよくないんじゃないかなどと、いろいろな悩みもございました。でも今年で4回目。回を重ねることは素晴らしいことです。4回の間に賞そのものは次第に洗練されてまいりました。このまま続けろよ、という天の声を聴いたように思っているところでございます」
と笑顔をまじえて話します。
長いスピーチは控えるようにと付添う助手が袖を引くと、「言いたいことがたくさんあるのに、少し長くなるとこうやって妨害が入るのです」と会場を笑わせました。
最後は、
「何しろみなさま、おめでとうございます!」
と元気に締めくくり、マイクを戻しました。樋口さんのユーモアあふれる言動に、会場の空気がほっこりと温まった一幕でした。
世代やジェンダーにかかわりなく安心して暮らせる社会を

実行委員長の袖井孝子さん(撮影:婦人公論編集部)
第4回となる樋口恵子賞。全国から113件の応募があり、1名と3団体が受賞しました。実行委員長の袖井孝子さんによれば、2回目までは首都圏近郊から高齢者の応募が多かったとのこと。
「最初は、高齢者の高齢者による高齢者のための活動だと思われていたのでしょう(笑)。これではいけないと私どもも試行錯誤し、だんだん皆様の間にこの賞のことが広まって、応募してくださる方が全国に広がりました」(袖井委員長)
もう一つの変化は、多彩な活動が見られるようになったこと。初期の応募は高齢者に対する支援が大半を占めましたが、今回はLGBTQや国際的な弱者の支援、子育てサポート、女性の貧困対策……と、幅広い活動にまつわる応募が増えています。
袖井さんは、「高齢者のための活動ではなく、世代やジェンダーにかかわりなく誰もが安心して暮らせる超高齢社会を作っていく。そんな活動を応援したい。今回はバラエティに富んだ活動の方々を表彰できてよかったと思っております」と語りました。
受賞した多彩な活動
第4回樋口恵子賞を受賞した1人と3団体をご紹介しましょう。
◎相川明子さん(神奈川県)

選考委員の浅倉むつ子さんから賞状を受け取る相川明子さん(撮影:婦人公論編集部)
今回、個人での受賞となった神奈川県の相川明子さんは、1985年に6人の母親たちと鎌倉の自然のなかで子育てをしようと「なかよし会」を発足。40年たつ今も会の活動は続き、1~3歳の子どもたちが野山でどろんこになって遊んでいます。自然環境を変えかねない開発計画が起こった時は15年もの間、市に自然保護を訴え続け、景観と生態系を守る形の公園として決着。同会では農作業体験の実践なども行っています。
「思わぬ賞を受賞して感謝感激でございます。1985年から40年になりました」と相川さんは感慨深げに挨拶しました。
◎(認定)特定非営利活動法人 生活困窮・ホームレス自立支援ガンバの会(千葉県)――代表者 副田一朗さん

活動内容を説明する生活困窮・ホームレス自立支援ガンバの会(千葉県)の副田一朗さん(撮影:婦人公論編集部)
1997年より千葉県市川市でホームレス支援を開始、今は居住支援を中心に活動するガンバの会。代表の副田さんは、「活動して28年。私たちのような団体は早く日本社会から消えるべき、そんな日が来てほしいと思いながらやっておりますので、脚光を浴びるのはやや複雑です」と語ります。
「生活に伴走しながら」人生の支援を徹底して行う同会。ホームレスのアパート入居に始まり高齢者の通院等の生活支援、さらには葬祭や墓地の運営まで。「人は一人では生きていけない。孤立をどう防ぐかが大きな命題」とし、支援を受ける人同士の交流を目的に旅行などを企画。現在は、応援する人たちの高齢化が課題だそう。添田さんは「経済格差がない社会を」と強く呼びかけました。
◎NPO法人 虹色の会 よっちゃん家 井野川(群馬県)――代表者 池田優子さん

活動内容を説明するNPO法人 虹色の会 よっちゃん家 井野川(群馬県)代表の池田優子さん(撮影:婦人公論編集部)
退職後、第二の人生をどう生きる? 元看護職や看護教員の女性たちが集まって話し合ったことから立ち上がった同法人。親戚の空き家を活用し、子どもから高齢者まで誰もが安心して集える場所を作ろうと活動をスタートしました。現在では子ども預かり事業、生活困窮者のためのフードパントリー活動、認知症カフェやナースカフェの運営、認知症サポーター養成研修などを行っています。
「自分たちも楽しめる場を作ろうと始めたのですが、メンバーも70代に入り、だいぶ会の性格が変わってきた」と言うのは代表の池田さん。「高齢社会の真っただ中でどう生きていくべきか、それにはまず自分たちが健康じゃなきゃ。そしてできることをやっていきたい」と語ります。
◎わくわくシニアシングルズ――――代表者 大矢さよ子さん(東京都)

わくわくシニアシングルズ(東京都)代表の大矢さよ子さん(撮影:婦人公論編集部)
中年期・高齢期のシングル女性がひとりでも生きられる社会を目指して2015年に発足した任意団体「わくわくシニアシングルズ」。立ち上げの背景にあったのは、社会の中で見過ごされている中年期・高齢期単身女性の貧困・困窮です。内閣府が2012年の男女共同参画白書で取り上げた貧困は、若年層と50歳以上の単身者にフォーカスしたもの。中年期以降のシングル女性の抱える非正規雇用や高齢期の住まいといった課題には触れられず、自己責任のように語られていることに強い危機感がありました。
「女性の貧困は高齢期に高くなる」と代表の大矢さん。高齢単身者の44%は貧困というデータも。同会は中高年シングルも日本の貧困支援に含めてと訴えるべく2016年と2022年に調査結果を発表し政策提言を行っています。「年金も貯金も少ないおひとりさまがどう暮らしていけるか。この賞に力を得て当事者につながることをやっていきたい」と大矢さんは力を込めます。
袖井実行委員長の「樋口恵子賞は地道に活動を続けている方にこそ光を当てたい。受賞者の歩みがこれからの社会を照らす希望の光となることを心より願っております」という言葉が胸に迫る授賞式でした。
