【全選挙区「当落予想」付き】元グラドル自民・森下千里氏の下剋上なるか? 安住淳氏と激戦 自民VS.中道の選挙戦の行方

■「ありえない事態」が起きた, ■震え上がる自民の候補者たち, ■国民民主の目論見は「自民党政権で連立入り」, ■参政党は連立入りの可能性も

 急転直下、高市早苗首相の専権で決まった真冬の衆院選は、対立してきた立憲民主党と公明党による新党の誕生によって、思いもよらぬ展開を迎えている。高市首相が目標とする、与党での過半数(233議席)は実現するのか。政治ジャーナリストの泉宏氏と角谷浩一氏が選挙戦の行方を予想した。

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「高市早苗に国家経営を託していただけるのか。国民のみなさまに直接、ご判断をいただきたい」「自民党と日本維新の会で過半数の議席を賜(たまわ)れましたら高市総理。そうでなければ、野田総理か、斉藤総理か、別の方か――」

 1月19日、高市首相は会見を開き、通常国会が召集される23日に衆議院を解散すると発表した。総選挙は27日公示、2月8日投開票で、真冬の超短期決戦となる。

 政権発足からわずか3カ月。物価高対応といった経済・財政政策をはじめ目立った成果はないなか、年度内の予算成立が困難になってまで今、解散する大義は何なのか。今回本誌が取材した政治ジャーナリスト二氏は、そろって眉をひそめる。

「高市首相としては、自民党で単独過半数の議席を固めることで、連立相手に気兼ねせず政策を進めたくなったのでしょう。自民党にとって、勝てるときに選挙をやるのは当たり前。とはいえ、この1年4カ月の間に国政選挙が3回、自民党総裁選が2回行われ、政治空白が続いてきた。高市首相の独断を許した自民党に危機感を抱きます」(角谷氏)

「党利党略どころか個利個略のウルトラスーパー自己中解散。一部報道で、高市首相自身に政治とカネの問題や旧統一教会との関係性が指摘されるなか、さらなる追及逃れのための解散だと疑われても仕方ない」(泉氏)

 泉氏によると、今年の初め、メディア主催の会合に姿を見せた高市首相は“非常にご機嫌”な様子だったという。報道各社の世論調査で内閣支持率が70%前後をキープする今、選挙に踏み切れば勝てると胸を高鳴らせていたのかもしれない。

■「ありえない事態」が起きた

 しかし1月15日、状況は一変する。立憲民主党の野田佳彦代表と公明党の斉藤鉄夫代表が党首会談を行い、新党結成を決めたのだ。与野党に分かれて激しく対立してきた2党が手を組む、「ありえない事態」(泉氏)だった。

■「ありえない事態」が起きた, ■震え上がる自民の候補者たち, ■国民民主の目論見は「自民党政権で連立入り」, ■参政党は連立入りの可能性も

 党の名前は「中道改革連合」。記者会見で「中道」の意味を問われた斉藤代表は、「粘り強い対話で合意形成を図っていく政治手法」などと答えたが、公明の支持母体である創価学会の基本理念たる仏教用語だ。学会の公式サイトには「相対立する両極端のどちらにも執着せず偏らない見識・行動」とある。

 これまで立憲は、「原発ゼロ社会」「安全保障関連法の違憲部分の廃止」を訴えてきた。しかし中道の基本政策では、原発は「将来的に依存しない社会を目指す」、安保関連法は「合憲」とされ、政策的には立憲が公明の姿勢に歩み寄る形となった。

 さらに、今回の選挙戦では公明が小選挙区から撤退して立憲候補を応援する代わりに、比例代表の統一名簿で公明の現職議員が上位におかれる。

 これらの合意内容について、角谷氏は「立憲が譲歩し過ぎな気もする」と言う。

「無理に一つの党にまとまらず、比例代表の名簿を統一する程度の選挙協力にとどめておく手もあったはず。忸怩(じくじ)たる思いを抱えて新党に合流する立憲議員は一定数います。旧民主党系の議員たちはすぐにケンカをして内紛を起こすと思われている手前もあり、しばらくは我慢するでしょうが、今後の野党再編の火種になるかもしれない」

■震え上がる自民の候補者たち

 一方、泉氏は立憲の決断を、「本気で政権交代を狙いに行く覚悟の表れ」とみる。

「野田代表をはじめ立憲内の保守派は、政権担当能力を示すためには原発ゼロや安保法制は違憲といった主張をやめる必要があると考えていた。今回が絶好のチャンスだと思ったのでは。結局、中道に参加せず離反した立憲議員は2人だけ。公明がもつ創価学会の組織票への期待が大きいのです。学会票は1選挙区あたり1万~3万票あるとされ、学会員たちは『高市を倒せ』という旗印のもと結束を強めている。これまで学会票に頼ってきた自民の候補者たちは震え上がっていますよ」

 朝日新聞デジタル版(17日)の試算によると、自民が大勝した2021年の衆院選でも、公明票の7割が中道に移れば、中道が第1党になるという。

 解散を決断するにあたり、自民の単独過半数議席を目論んでいたであろう高市首相だが、事態の急変に焦りが生まれたのか。19日の会見では、「わずか半年前の参議院選挙で共に戦った相手である立憲民主党に所属しておられた方々を、かつての友党が支援する。少し寂しい気持ちもいたします」と公明に恨み節をこぼしつつ、日本維新の会との連立与党で過半数を目指すと宣言した。

 そんな高市首相に対し、泉氏は、「ほぼ現状維持の与党過半数が勝敗ラインだと納得する人は政界には一人もいない」と冷ややかな眼差しをおくる。

■「ありえない事態」が起きた, ■震え上がる自民の候補者たち, ■国民民主の目論見は「自民党政権で連立入り」, ■参政党は連立入りの可能性も

 とはいえ、中道がどこまで議席を伸ばせるかは未知数だ。朝日新聞が17、18日に行った全国世論調査では、中道が高市政権に対抗できる勢力に「ならない」と答えた人が69%にのぼった。

「中道とは一体どんな政党なのか、有権者に理解を広げられるかがカギ。無党派層を取り込めなければ、しょせんは組織票頼みとなり、大きなうねりは起こせない」(泉氏)

■国民民主の目論見は「自民党政権で連立入り」

 対して、他党の情勢はどうか。野党第2党として26の議席をもつ国民民主党は今回、中道には合流しない。

「玉木雄一郎代表や榛葉賀津也幹事長は、自民党政権で連立入りしたいのが本音で、野党で政権を取りに行くつもりはない。立憲同様、労働組合を束ねる連合の支援を受けている手前、これまでは立憲の現職候補がいる選挙区には国民の候補を立てない『現職不可侵』を守ってきたが、その約束を破る動きを見せている。連合と手を切る覚悟を決めているのかもしれない」(角谷氏)

 そんな国民民主の姿勢を「自民VS.中道という対決の構図のなかで完全に埋没した」とみるのが泉氏だ。

「国民民主が訴えてきた、所得税の課税ライン“160万円の壁”が178万円に引き上げられることが決まった今、支持者の熱が冷めてきている。存在感を示すべく、必死に候補者をかきあつめているが、苦戦している模様。当初の目標である51議席獲得はまず無理でしょう」

 自民と連立を組む維新については、角谷氏と泉氏で評価が割れた。

「1年4カ月前の衆院選は大阪の選挙区で全勝したが、今回は甘くない。大阪都構想の実現に向けて民意を問うとして、党代表の吉村洋文大阪府知事と副代表の横山英幸大阪市長が辞職し、衆院選に合わせてダブル選挙を仕掛けたことは、相当評判が悪い。自民との選挙協力もしないということで、影響は兵庫の激戦区にも及ぶでしょう」(角谷氏)

「たしかにダブル選挙はマイナスに働くが、連立入りして一定の力を持つ維新がお膝元の大阪で負けるほどの逆風にはならないだろう。ただ、兵庫では以前から維新離れが進んでいて、今回も苦戦するはず」(泉氏)

■「ありえない事態」が起きた, ■震え上がる自民の候補者たち, ■国民民主の目論見は「自民党政権で連立入り」, ■参政党は連立入りの可能性も

■参政党は連立入りの可能性も

 ここで気になるのが、参政党の動きだ。神谷宗幣代表は14日、記者団の取材に応じ、高市政権とは「考えが近い」としたうえで、「高市さんの足を引っ張ろうとしている自民党の議員」がいる選挙区に積極的に候補者を擁立する考えを示した。参政の候補が出馬すれば、高市首相を支持する保守層が投票する可能性はある。泉氏によると、選挙後に第2次高市政権が発足した場合、参政が連立入りすることも十分に考えられるという。

 続いて、各選挙区においてどのような戦いが繰り広げられるのか。北海道・東北ブロックの注目区の情勢を両氏が分析する。

【北海道ブロック】

■北海道8区

泉「北海道は昔から自民が弱い地域。しかも公明の支持母体である創価学会の信者が多く、自民候補はこれまで以上に苦戦する。中道の逢坂誠二氏が勝つだろう」

角谷「都市部は中道が強いが、地方に行くと自民が底力を見せるのではないか。逢坂氏はベテランだが、支持者離れが進んでいれば、自民の向山淳氏に軍配が上がる」

【東北ブロック】

■宮城4区

角谷「安住淳氏は今回、中道の共同幹事長として日本全国を行脚しなければならない。一方、対抗馬の自民・森下千里氏はこまめに地元を回り、評価を上げている。2021年の衆院選で二人が激突した際は、安住氏8万票に対して森下氏6万票と勝負になっていたので、今回は森下氏がどこまで差をつめられたか。激戦になりそうだ」

■山形1区

泉「自民・遠藤寛明氏が、父である利明氏の後継者として出馬する。世襲であることが吉と出るか凶と出るか……」

角谷「利明氏の選挙対策本部がそのまま寛明氏をバックアップすれば、初陣に不安はないでしょう」

■岩手5区

泉「当選19回と超ベテランの中道・小沢一郎氏は21年、衆院選小選挙区で初めて落選し、比例復活当選したことで話題になった。83歳の小沢氏にとって最後の選挙になるだろうが、今回は公明票の上乗せもあって当選するはず」

(AERA編集部・大谷百合絵、川口穣)

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