【特集】キリスト教の教えを軸に新時代に対応した多様な進路を…聖ドミニコ
聖ドミニコ学園中学高等学校 (東京都世田谷区)で2025年春、「インターナショナルコース」の1期生が卒業し、5人が海外大学に進学を果たした。同コースは「アカデミックコース」とともに2019年度に導入され、同時に開始された独自の探究プログラム「ドミニコ学」を展開しつつ、国内でも生徒の多様な進路を実現しつつある。これらの改革を 牽(けん)引(いん) する高橋幸子校長に、目指す教育について聞いた。
海外大学への進学者が増加し、学外の活動も活発に
同校は2019年度、新時代に活躍する生徒を育てるため「インターナショナル」と「アカデミック」の2コースを設置し、「21世紀型教育」を開始。「インターナショナル」コースでは英語・数学・理科をオールイングリッシュで教えるユニークな教育体制をとってきた。
――2コース制と「ドミニコ学」の導入などで、どのような成果がありましたか。

「生徒と対話する時は、教え諭すのではなく、人間対人間の関わりを意識しています」と語る髙橋校長
今春、英語・数学・理科をオールイングリッシュで学ぶ「インターナショナルコース」の1期生が高校を卒業しました。これまでも年に1、2人が海外大学に進学していましたが、昨年度は同コースの13人中5人が海外大学に進学したほか、中学修了後、アメリカの高校に進学する者も出てきて、生徒の世界が広がっていると感じます。こうした成果が少しずつ浸透し、インターナショナルコースの受験者数が増えています。
一方、総合的な学習・探究の時間を充てた「ドミニコ学」では、アカデミックコースとインターナショナルコースの生徒が共にグループワークを行うため、生徒同士が好影響を与え合い、自分から発信する力が伸びています。
そのせいか、学外での活動も、より活発になっています。例えば、東京都市大学付属中学校・高等学校(東京都世田谷区)の生徒が中心となったSDGs(持続可能な開発目標)に関する活動「Olive Project」に生徒会役員などが参加し、昨年1月に本学園で勉強会などが行われました。また、本学園は以前からボランティア活動を大切にし、被災地支援や街頭募金などを行っていますが、生徒会役員がNPО法人と協力し、マラウイ共和国の学校給食支援となるコーヒーを販売するなど、活動の幅が広がっています。
キリスト教の教えを軸に「対話」を重視した教育

「Olive Project」の活動に参加する生徒たち
高橋校長は、1985年から聖ドミニコ学院(仙台市)の宗教科及び社会科の教員を務めた。2000年にフィリピンでの慈善活動に参加し、その翌年、聖ドミニコ学園の宗教の専任教員となり、副校長を経て11年から現職。
――校長としてどういう教育に取り組んできましたか。
本学園は、聖ドミニコの教えを基盤とし、「真理を求め、自由に生きる」を教育理念に掲げています。生徒には、中高6年間を通して、一人一人が神の愛をもって祝福された、かけがえのない存在であることを伝え、おのおのに与えられたタラント(たまもの)や、自分を生かせる場を見つけてほしいと考えています。
私自身も受け持つ週1回の宗教の授業では、聖書について学ぶほか、現代社会の問題について考えます。世界にはキリスト教を土台に発展した文化も多く、キリスト教への理解を深めることが、世界の歴史や文化、考え方を学ぶことにつながります。
生徒たちを見ていると、一つの価値観として、キリスト教を自分のものにしていると感じます。さまざまな場面で迷った時も、判断基準としてキリスト教の価値観を持っていることは強みになりますし、新しい希望が芽生えた時も、それを土台に目指していけます。
聖堂は学園の中心となる存在で、パイプオルガンを備え、全校朝礼のほか入学式や卒業式なども行います。聖堂に行くと、生徒も心が落ち着くといい、心のより所となっているようです。
――生徒との「対話」を大切にしていると聞きました。
本学園の淵源となっている修道会「聖ドミニコ会」は民主的で、何事も話し合いで決定します。本学園の教員も、生徒と対話できる関係を構築し、生徒が自己肯定感を持って、生きる喜びや幸せをつかめるようサポートしています。
私自身、生徒と対話する時は、教え諭すのではなく、人間対人間の関わりを意識しています。生徒の話をしっかりと聞いて共感することで、生徒も私の話を受け入れ、自分の意見を返してくれます。
このように、対話を通して多様な考えを受け取り、お互いを認め合う環境ができているため、生徒はのびのびと日々を 謳歌(おうか) し、主体的に進路を決めていきます。本学園には習い事に励む生徒も多く、進路は多様でユニークです。聖堂のパイプオルガンに魅せられ、東京芸術大学でパイプオルガンを専攻した生徒や、中学2年でオペラ座のバレエ学校に合格した生徒、航海士を目指して国立の短期大学校に進学した生徒もいます。
近年は、総合型選抜入試で自身の活動をアピールし、大学に合格する生徒が増えました。校内で年3回、実用英語技能検定の1次試験を受検できるほか、フランス語が中学校の必須科目となっているため、フランス語検定を受検する生徒も多く、語学の実績を生かして大学に合格する生徒も増えています。
理系学部への進学を目指す生徒のサポート強化
――少人数教育も教育の特徴の一つですね。

被災地支援や街頭募金などのボランティア活動をする生徒たち
一学年80人、2、3クラスの編成ですから、学年全体を一つのグループとして教員が見守ります。学校行事や日々の活動では、一人一人に何かしらの役割が与えられ、提案や主張をすることが求められます。困難にぶつかることもありますが、教員や仲間に支えられて乗り越えたとき、新しい自分に出会えて自信が付く。こうした経験を通して、生徒は主体的に自立していきます。
中学では約8割が内部進学者ですが、新しい友達をつくりたいと思う生徒が多く、外部進学者も、あっという間に学園になじみます。学園の小学校ではフランス語を学ぶため、中学校からの入学生には、入学前に4日間のフランス語講習会を開くなど、友達をつくりやすいプログラムも用意しています。中高6年間で築いた絆は卒業後も続き、ファミリーのような関係が生まれています。
――今後は、どのような取り組みを進めていきたいですか。
これまでは私立大学の文系学部に進学する生徒が多かったのですが、最近は理系学部への進学を希望する生徒が増えています。そのため、より多様な道に進めるカリキュラムを構築し、生徒のサポートを充実させていく予定です。
また、ドイツやフランス、フィリピンなど海外の学校から、本学園と交流したいという呼びかけが増えています。時差などの問題で難しい部分もありますが、何かつながりが持てる方法を探していきたいですね。
本学園には、素直さや誠実さ、優しさを持って、お互いに学び合える環境が整っています。生徒たちには、意欲を持って学びながら、多くのことに挑戦してほしいと願っています。
(文:籔智子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:聖ドミニコ学園中学高等学校)
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