通信費が0円に?楽天がモバイルWi-Fiをバラまく本当の狙い

筆者提供
楽天グループは、楽天市場出店者向けのイベント「楽天新春カンファレンス2026」を開催。基調講演に三木谷浩史会長が登壇した。45分弱に渡るプレゼンの中、特に興味深かったのが「福利厚生としてモバイルWi-Fiルーターを従業員に配る」という施策の紹介だった。
従業員といっても楽天グループの社員ではない。
手羽先で有名な飲食店「世界の山ちゃん」を手がけるエスワイフードにおいて、従業員に向けて、福利厚生の一環として楽天モバイルの回線を使ったモバイルWi-Fiルーターを配っているというのだ。
従業員とすれば、モバイルWi-Fiルーターが手元にあれば、スマホの通信料金だけでなく、自宅の固定回線も不要になる。家族では難しいかもしれないが、一人暮らしの社員であれば、朝から晩までモバイルWi-Fiルーターでネットに繋ぐというもの不可能ではないのではないか。
手元に無料で配られるモバイルWi-Fiルーターがあれば、スマホはpovoにして、個人の通信負担をゼロにするということもできる。
なかなか、魅力的な福利厚生ではないか。
在日外国人スタッフは大歓迎
実際、エスワイフードとしても、モバイルWi-Fiルーターを配布することで、社員の可処分所得をあげたいという狙いがある。確かに月に数千円、 1年で考えれば万単位の可処分所得が上がることだろう。
エスワイフードでは、これまで23.5%であった離職率が6.7%まで減少したという。もちろん、モバイルWi-Fiルーターだけの効果ではないが、従業員に相当、喜ばれているのは間違いなさそうだ。
特に在日外国人のスタッフは、日本で通信契約を行うにも苦労しており、モバイルWi-Fiルーターの配布は大歓迎のようだ。
昨年末、1000万契約を突破した楽天モバイルにとって、モバイルWi-Fiルーターのバラマキは重要な戦略と言えるだろう。
2年近くデータ通信が使い放題
2025年10月からは、楽天ビジネスカードの契約者を対象に楽天ポイント 1ポイントでモバイルWi-Fiルーターを提供するという施策を展開している。
しかも、月額の通信料金は無料。2027年9月末までデータ通信が使い放題なのだ。
2027年10月以降はモバイルWi-Fiルーターの返却は不要。契約の自動更新もない。
つまり、2年近く、データ通信が使い放題という太っ腹な施策なのだ。
楽天ビジネスカードは年会費 1万1000円の楽天プレミアムカードを所有し、さらに年会費2200円で、追加で持てるカードとなっている。
個人事業主や経営者など所有するには条件がある。とはいうものの、先着5万名までの施策なので、すでに楽天ビジネスカードを所有している人、あるいはカードを持っていない個人事業主や経営者は是非ともこの際、楽天ビジネスカードデビューするといいだろう。
楽天グループが“MVNO”として施策を展開
この施策を展開しているのは楽天モバイルではなく、楽天グループという建て付けだ。
楽天グループは楽天モバイルのMVNOという関係性になっているようで、楽天モバイルとしてはサービス内容には関与していないというスタンスのようだ。
楽天カードが配布するモバイルWi-Fiルーターは4Gのみの対応だが、楽天モバイルでは3月より新製品として「Rakuten WiFi Pocket 5G」を発売する。
本体価格は 1万6800円だが、一部の人を対象にキャンペーンが実施され、1円で購入できるようになるという。
スマホ業界的には「春商戦」の真っ盛りと言える。
新入生や新社会人など、新生活を迎えるにあたって、通信環境を整えるという人が増えてくる。
「新たに一人暮らしを始める」という人にとって「自宅に固定回線を引くか」は本当に悩ましい問題だ。
そんな中、楽天モバイルの通信料金でデータが使い放題となるモバイルWi-Fiルーターが手元にあれば、通信費をかなり節約できるだろう。
既存3社が諦めつつある市場を掘り起こし
既存3社を見ると、ここ数年はあまりモバイルWi-Fiルーターや据え置き型のWi-Fiルーターを積極的に売っている感はない。
既存3社がもはや諦めつつあるモバイルWi-Fiルーター市場を、楽天モバイルはここから掘り起こしていくようだ。
筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)
スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。