東向島で見た東武特急「けごん」、強烈な個性は健在だった

 【汐留鉄道倶楽部】関東地方の私鉄で営業距離が最長の東武鉄道は、複々線の距離でも日本一など多くの特徴を持つ。学生のころは東武に対して〝武骨で野武士〟のイメージを勝手に抱いていた。長年気になってきたのが東武電車だった。

博物館前に展示されている1720系デラックスロマンスカー(DRC)

 その東武のかつての名物特急1720系デラックスロマンスカー(DRC)の企画展が、東京・東向島の東武博物館で開かれていると知って見に行った。かなり以前に1度だけ足を運んだことがあるから、久しぶりの訪問となる。東武スカイツリーライン東向島駅の高架下に造られているため、入り口は狭く見えても、館内には本物の東武初の蒸気機関車や電車、バス、レールや大きな鉄道模型、実物の運転台を使った電車のシミュレーションなど趣向を凝らした見どころが盛りだくさんで、大人も十分楽しめる。高架下を生かして実際の走行する電車の車輪部分をのぞける場所もある。約130年の歴史を持つ大私鉄の歴史と現在が分かる博物館だ。

正面からだと個性的な顔がいっそう際立つDRC

 正面入り口近くの屋外でいきなり目に入ってくるのが、DRCの実物の先頭車両だ。1960年から91年まで31年にわたり浅草と日光・鬼怒川方面を結んだ特急で、国鉄との〝日光戦争〟に勝った主人公でもある。

 最大の特徴は個性的な前面デザイン。両サイドの縦長枠内に上から前照灯、補助前照灯、警笛、尾灯がきれいに並び、真ん中にはシンボルマーク、その下に大きく「けごん」と太字で書かれた愛称名板。横から見ると草原のサイかカバをほうふつとさせる迫力だ。

博物館館内ではDRCの運転席が見える。操作ボタンがずらりと並ぶ

 説明板によると「当時の車両技術の粋を集めたオール電動車6両固定編成で、昭和48年までに7編成作られました」とあり、ジュークボックス付きサロン室を備え、長い間東武鉄道の看板特急だった、と書いてあった。文字通り豪華の粋を集めた特急車両だった。

展示されていたヘッドマーク。「けごん」と並び「きぬ」は知っていたが「さち」もあったらしい

 館内に入り企画展をのぞくとデビューから65年たったことを機に、OBを中心に運転士や車掌、駅員、案内業務を担うスチュワーデス(当時)らのエピソードが「こぼれ話」として紹介されていた。正面デザインは「発売直後のプリンス・スカイラインの後部をモジった」とあった。私自身は長い間別の乗用車の正面に似ているな、と思っていたが勘違いだった。当時国鉄にデビューした特急「こだま」の丸みのある流線形に対抗してデザインした、ともあった。徹底して「こだま」を意識して誕生したようだ。楽しい裏話もあり、関係者の期待を集めたあこがれの車両だったことがうかがえる企画展だった。

 かくいう私はDRCに乗ったことはあるのだろうか。小学校の修学旅行先は日光だったが、交通手段が思い出せない。「けごん」に乗ったのだろうか。小学生の分際で東武電車のロマンスカーなんて贅沢(ぜいたく)すぎるな、とすると実は乗車未経験なのかもしれない。浅草駅で見たことがある、という程度なのかもしれない。

東向島駅。旧駅名「玉ノ井」を掲示しているのはとてもいいことだと思う

 「武骨で野武士」といったイメージはとうの昔に消えている。いまや東武も初代に増して豪華で贅を尽くした特急「スペーシアX」に引き継がれた。通勤車両も昔に比べてはるかにスマートですてきになった。色とりどりの二つの地下鉄車両までもが複々線を走る姿は華やかだ。DRCの精神を連綿と継いだ東武の特急で日光に行こう。というより、最近とみに増えた各地の私鉄の新型豪華特急にもぜひ乗りたいものだ。

 ☆共同通信・植村昌則