木星は定説よりも小さくて扁平だった? ボイジャーの観測以来半世紀ぶりのサイズ更新

こちらは、太陽系最大の惑星・木星のサイズに関する最新の数値と従来の数値を比較した図です。

若干見分けづらいかもしれませんが、濃い黄色が従来の定説にもとづいた数値、薄い黄色が最新の研究成果にもとづいた数値を示しています。

【▲ NASAの木星探査機「Juno(ジュノー)」の観測データをもとに更新された木星の赤道半径と極半径を示した図(Credit: Weizmann Institute of Science)】

図で示されている数値をテキストにすると、以下のようになります。

・赤道半径(Equatorial radius):71,492kmから71,488kmへ4km減少

・極半径(Polar radius):66,854kmから66,842kmへ12km減少

※巨大ガス惑星や巨大氷惑星では一般的に「大気圧が1バール(地球の海面気圧と同程度)になる深さ」を便宜上の表面と定義し、中心からそこまでの距離を半径としています。

地球の約11倍もの大きさを持つ木星において、赤道で4km・極で12kmという半径の縮小は一見するとごくわずかですが、惑星科学にとっては大きなインパクトがあります。木星がこれまで考えられていたよりも全体的に小さく、上下に押しつぶされた扁平な形をしていることを意味するからです。

1970年代以来およそ半世紀ぶりのアップデート

ワイツマン科学研究所のEli Galantiさんをはじめとする国際研究チームは、NASA(アメリカ航空宇宙局)の木星探査機「Juno(ジュノー)」の観測データに基づき、木星の形状に関する従来の定説を覆す研究結果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は「Nature Astronomy」に掲載されています。

これまで学術研究や教科書などで使われてきた木星のサイズは、主に「Pioneer(パイオニア)」や「Voyager(ボイジャー)」といったNASAの探査機が1970年代に観測したデータに基づくものでした。以来およそ半世紀にわたってこの値が用いられてきたものの、当時のデータは観測回数が少なく、誤差も大きいという課題がありました。

【▲ NASAの木星探査機「Juno(ジュノー)」のCGイメージ(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

そこで研究チームは、Junoによる13回の木星フライバイ(接近通過)時の観測データを解析。木星の形状推定の不確定性(誤差の範囲)を従来の約4kmから0.4kmへと縮め、精度を一桁向上させることに成功しました。

結果として得られた木星の赤道半径と極半径は前述の通りで、半世紀前の観測データに基づく値と比べて赤道で4km・極で12km小さかったことが示されたのです。

鍵は「電波掩蔽」と「強力な風」

今回の高精度な測定を可能にしたのは、「電波掩蔽(Radio occultation)」と呼ばれる観測手法と、木星特有の「風」への着目です。

電波掩蔽とは、惑星や衛星の裏側に隠れる探査機から地球へ送られる電波が、大気をかすめて通過することを利用した観測方法です。大気中を通過する電波は屈折するため、真空中を通過する場合と比べて、地球に届くタイミングがわずかに遅れます。この微妙な変化を分析することで、大気の温度や圧力、そして惑星や衛星の正確な形状を割り出すことができます。

さらに画期的なのは、遠心力などによって惑星の形状を歪ませる力を持つ、木星の強力な帯状風の影響を計算に組み込んだことです。研究に参加したワイツマン科学研究所のYohai Kaspi教授は、「以前の測定では、この強力な風の影響が考慮されていませんでした」と指摘しています。風の影響を計算モデルに反映させたことで、従来のモデルで生じていたデータの不整合が解消され、木星のいわば“真の姿”を捉えることができたのです。

たかが数km、されど数km

【▲ HST(ハッブル宇宙望遠鏡)のWFC3(広視野カメラ3)で2024年1月に観測した木星(Credit: NASA, ESA, J. DePasquale (STScI), A. Simon (NASA-GSFC))】

今回の研究で明らかになった従来よりも正確な木星の半径は、木星の内部構造の理解に大きな影響を与えます。従来の推定と比べて小さいということは、内部の密度や組成に関する推測についても修正が必要になる可能性を示唆するからです。

研究チームによれば、新しい形状モデルは木星の大気が水素やヘリウムよりも重い元素(重元素)をこれまでの想定以上に多く含んでいて、温度が低い可能性を支持しています。これは、かつてNASAの木星探査機「Galileo(ガリレオ)」が木星の大気に突入した時に得られたデータとも整合性が取れるものであり、これまでの矛盾を説明する重要な手掛かりになり得ます。

また、木星は太陽系外惑星を研究する際の基準としても扱われます。はるか彼方の巨大ガス惑星の大きさや構造を推測する際には木星のデータが用いられるため、その正確性を高めることは、惑星形成の理論を洗練させる上でも極めて重要なのです。

Juno探査機がもたらした今回の成果は、私たちの巨大ガス惑星に関する理解を書き換えることにつながるかもしれません。

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典

・NASA - NASA’s Juno Mission Redefines Size, Shape of Jupiter

・Weizmann Institute of Science - Giant Planet’s Slimmer Profile