「まるで長篠」中道"50代新リーダー"は武田勝頼か

中道改革連合の開票センターで結果を見守る野田佳彦共同代表(撮影:尾形文繁)
2月8日に投開票が行われた衆議院選挙で、事前想定をはるかに超える大惨敗となった中道改革連合。9日に野田佳彦、斉藤鉄夫両共同代表が辞意を表明したことを受けて、新たな「党の顔」選びに動き出した。
【写真あり】有力視されているのはこの2人、焼け野原状態の中道改革連合「新リーダー」は誰になる?
ただ、コトはそう簡単に運びそうにない。衆院での勢力が公示前の3割以下となる49議席に激減したうえ、比例単独立候補で公示前を上回る28議席を得た旧公明党系に対し、党の“中軸”だったはずの旧立憲民主党系の当選者は21人にとどまったことで、13日の実施が決まった代表選でも旧立憲系の人材難が際立つ。
そのため、「再建に向けて何とか新体制を発足させても、その後の党内状況次第では近い将来に“溶解”の道へ迷い込む」(政治ジャーナリスト)という最悪の事態も想定される。「前途はまさに茨の道」(党幹部)となるのは間違いなさそうだ。
新代表候補に浮上した2人の50代議員
「非自民の立場で苦楽を共にしてきた先輩、兄貴のような人、同世代、弟のような人たちが一気に議席を失った。痛恨の極みだ」
大惨敗を受けて、中道結成の立役者だった野田氏は9日の記者会見でこう語った。茫然自失の心情を隠せず、落選者への謝罪に追われた。
その一方で、共同代表を務めた野田、斉藤両氏にとって、激減しても野党第1党を維持した中道の再建に向けた新体制づくりが急務となる。当然、18日に召集が予定されている特別国会よりも前の新執行部発足が大前提で、「なりふり構わず、代表選での新代表選出と新執行部づくりに猛進せざるをえない」(党幹部)のが実情だ。
そうした中、9日の記者会見で野田氏は「どうしても時代遅れ感が(自身と斉藤氏の)2人につきまとっていた」と、やや自虐的表現で敗因を解説。そのうえで「中道は時代の要請。種火をしっかり守って大きくしていきたい」と、党再建への意欲と決意を繰り返した。
斉藤氏も、新代表について「新しい時代を感じられるような清新な方をぜひ選出したい」と述べた。周辺には「中道はもともと旧立憲さんが中心の新党。旧公明の当選議員がサポート役に回るのは当然だ」と漏らしているとされる。
そもそも、解散前の旧立憲は衆院議員144人を誇る「圧倒的野党第1党」だった。だが、今回の選挙で8割以上が落選して、わずか21人に激減。その結果、比例上位で優遇された旧公明組より7人も少ない弱小勢力に落ち込んだ。
しかも、旧立憲系では、現執行部の安住淳共同幹事長や本庄知史共同政調会長、さらには立憲創設者で初代代表を務めた枝野幸男氏らが軒並み落選した。SNSでは、重臣たちが相次いで戦死し、戦国大名・武田氏が滅亡へと歩み始めるきっかけとなった合戦を引き合いに出し、「まるで長篠の戦い」と揶揄するコメントが散見された。
このため、新代表の候補者は極めて限られ、しかも政治力学的には小選挙区当選者が優先されることから、50代の泉健太元代表(51)と小川淳也元幹事長(54)の2人が有力視されている。
新代表を待ち受けるあまりにも多くの課題

代表選への立候補が有力視される泉健太元代表(左)と小川淳也元幹事長(写真:時事)
中道の現執行部は11日に議員総会を開き、代表選の日程などを協議するが、すでに12日公示、13日投開票の日程が固まっており、時間の余裕はまったくない。泉、小川両氏も立候補に必要な推薦人10人の確保を含め、慌ただしく出馬準備を進めている。とはいえ、党内からは「誰を選ぶにしても厳しい」という不安の声が相次ぐ。
仮に泉、小川両氏のいずれかがすんなり代表に選出されたとしても、待ち受ける課題は山積している。現執行部は今も参院議員や地方議員が所属している立憲民主党と公明党の合流を視野に入れるが、旧立憲系の落選者は「惨敗の中でも公明側は議席を伸ばした。譲りすぎだ」と怒りを隠さない。
最大の支援者である連合(日本労働組合総連合会)の芳野友子会長も、9日の会見で「結果を見れば、今回の中道の考え方には少し疑問が残る気がする」と、公明優遇への不満を口にした。
仮に旧公明系と離別した場合、旧立憲系は国民民主党(28議席)より小所帯となり、国民民主党と同議席の旧公明系に次ぐ野党第3党に甘んじざるをえない。落選した旧立憲系の有力者は「とにかく野党第1党でないと、落選組は次の衆院選で戦えない」と憤る。
こうした中で、今回落選した重鎮たちもそれぞれ、党の再建をにらんで今後の政局の展開に思いを巡らせる。中でも今回「高市人気」による自民圧勝の波にのみ込まれ、予想外の惨敗・落選となった小沢一郎氏(83)は「高市くんはいずれ行き詰まる」と指摘する。

「政界の壊し屋」小沢一郎氏が語った驚きのシナリオとは?(写真:時事)
小沢氏は故田中角栄元首相に師事し、47歳で自民党の幹事長に就き、権勢を振るった政治家だ。1993年には、当時の宮沢喜一首相(故人)が政治改革関連法案の成立を断念すると、野党が提出した内閣不信任決議案に賛成して自民党を離党。以来、政権交代可能な二大政党制を目指して新党をつくっては壊したことで、「政界の壊し屋」の異名を持つ。
小沢氏は今回の落選まで19回連続で当選し、すでに議員在職は半世紀を超えている。その小沢氏が選挙中に見通していた政局展開は「自民党の大多数は温厚な保守層だから、高市くんは必ず行き詰まる。いずれ、新党(中道)をきっかけに大きな政界再編になっていく」というものだった。
もちろん、自身の落選と中道の壊滅的惨敗で小沢氏の見通しも大きく狂ったが、「長期的に見れば、小沢氏の豊富な経験に基づく見方は注目に値する」(自民党長老)ことは間違いない。
旧立憲の生き残り議員は結束できるか
こうした重鎮たちの中道再建への期待に対し、旧立憲とたもとを分かった国民民主党の玉木雄一郎代表は、小沢氏らの落選について記者団に「民主党時代が終わった。旧民主政権の幹部や閣僚経験者の落選で、本当の意味で民主党時代が区切りを迎えたのだと思う」と述べた。
また、旧民主党の首相候補とされながら離党し、自民党に入った細野豪志氏は、大敗した“古巣”に対して「私が若い頃に(将来を)懸けた民主党がついに終焉を迎えた。中道の旧立民の皆さんも、ここで相当の世代交代ということになるんじゃないですか」と感慨深げに語った。
こうした“関係者”のさまざまな受け止めの中で、中道は旧立憲主導の新体制づくりに挑む。「限られた人材をいかにやりくりして野党第1党の体裁を整えるかが唯一最大の課題で、旧公明組との融和が大前提になる」(政治ジャーナリスト)のは間違いない。
戦国大名・武田氏は長篠の敗戦の後、当主の武田勝頼が重臣の裏切りにより自害し、滅亡した。はたして、生き残り議員たちは結束できるのか。