「魂の始球式」から半年も病状は一進一退 希少がんと闘う元大阪桐蔭球児とオリ森友哉の絆

始球式を終えて、同級生の森友哉選手(右)と抱き合う福森大翔さん=昨年6月15日、大阪市西区の京セラドーム大阪(センス・トラスト提供)

「野球で勇気を与える選手になりたい」。昨季、故障に悩まされたプロ野球オリックス・バファローズの森友哉選手(30)には逆境の中でもそう思わせてくれる友がいる。大阪桐蔭高校(大阪府大東市)時代に甲子園でともに戦った元チームメートの福森大翔(ひろと)さん(30)だ。26歳のときに「10万人に1人」とされる希少がんを宣告された福森さん。一進一退の闘病生活でも前向きに治療に取り組む姿を見せ、森選手の背中を押し続けている。

始球式で森友哉選手に向けてボールを投げようとする福森大翔さん

気迫のノーバウンド

大阪桐蔭の選手として甲子園に出場した福森大翔さん=平成25年8月、兵庫県西宮市の甲子園球場

昨年6月、京セラドーム大阪(大阪市西区)で行われた巨人戦で、始球式に臨んだ福森さん。山なりの高いボールとなったが、ノーバウンドで捕手を務めた森選手のキャッチャーミートにおさまり、マウンド上で2人で抱き合った。

福森大翔さん(右)と森友哉選手(左)の橋渡しをしたセンス・トラストの今中康仁社長=昨年12月22日午後、大阪市浪速区(格清政典撮影)

実は数週間前まで、抗がん剤の副作用などでボールを3メートルも投げられないほど体力が落ちていた。だが持ち前の底力でリハビリに集中し、本番では見事ノーバウンドでボールを届けた。

昨年12月、大阪市内でバファローズの選手らが出演して開催されたトークイベントには特別ゲストとして登壇。始球式の様子が映像で流され、感動を呼んだ。

昨季、森選手は開幕前に右脇腹を痛めるなどし思うように結果を出せない日々が続いたが、この日は五回に決勝打を放つなど2安打1打点と大活躍。ヒーローインタビューのお立ち台では「どうしても活躍したかった」と涙を流して喜んだ。

「今を大切に」友に押される背中

森選手は大阪桐蔭高校で平成24年に1年先輩の藤浪晋太郎投手(31)とバッテリーを組み春夏連覇を達成。翌25年には主将として春夏連続出場し、春のセンバツでは福森さんとクリーンアップを組んで球場をわかせた。

福森さんは高校卒業後、立命館大に進学し大手ハウスメーカーに就職したが、26歳で10万人に1人とされる希少がんを宣告された。3度の手術を経て闘病生活を続ける中、手を差し伸べたのが大阪桐蔭高校のOBで不動産会社「センス・トラスト」(大阪市)の社長を務める今中康仁(こうじ)さん(34)だ。

「想像もつかない病で衝撃を受け、何かできないかと考えた」という今中さんは昨年5月、福森さんの治療費などを支援するクラウドファンディング(CF)に参画。同社は森選手がオリックスに移籍した令和5年から球団のスポンサーを務めており、CFを周知しようと始球式を実現させ4200万円余りの支援金が集まった。

トークショーでは、福森さんが「一進一退の病状だが治療にも向き合って前向きに生きている。一日一日を大切にしたい」と話し、会場の参加者にも「今を大切にしてほしい」と呼びかけた。

森選手は自身が闘病中にもかかわらず「けがをするなよ」と気遣ってくれる福森さんに「背中を押されまくっている。絶対に弱音を吐かない」と敬意を示し、「僕も多くの人に勇気を与えられる選手になりたい」と次のシーズンで三冠王を目指すことを誓った。(格清政典)