【山で自炊!】登山が楽しくなる「山食のススメ」

気分と山道で食を選びたい, 熱湯を使って作る便利なメニュー, 登山用コッヘルや食器を揃えるとメニューが広がる, 山でもすぐできるカレー, 応用すればほかのメニューにもなる, じっくり煮込む牛丼も美味

山行において、大きな楽しみのひとつの“食事”。今回は佐々木俊尚氏の愛用の調理器具と、簡単ながら満足度の高い山食のメニューについて紹介します(写真:zak/PIXTA)

登山やハイキングなどの山行において、“食事”は大きな楽しみのひとつ。作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏が、試行錯誤のうえたどり着いた愛用の調理器具と、簡単ながら満足度の高い山食のメニューについて紹介します。
※本稿は『歩くを楽しむ、自然を味わう フラット登山』から一部抜粋・再構成したものです。

気分と山道で食を選びたい

わたしがふだんの山仲間と行くときは、当日まで参加人数がはっきりしないこともあって、全員でわいわいとお昼ご飯を作るということはしない。各自の持参に任せている。大休止もせいぜい30分ぐらいしかとらないので、簡易な昼食で済ませることがほとんどだ。

【写真で見る】登山で自炊時のおすすめ持ち物はこれだ!

気分と山道で食を選びたい, 熱湯を使って作る便利なメニュー, 登山用コッヘルや食器を揃えるとメニューが広がる, 山でもすぐできるカレー, 応用すればほかのメニューにもなる, じっくり煮込む牛丼も美味

(『歩くを楽しむ、自然を味わう フラット登山』P.166より/写真提供:モンベル)

秋から冬、春ごろまでの気温の低い季節は、たいていカップラーメン。お湯を沸かすのには、ジェットボイルというコンパクトなガスストーブを愛用している。

1〜2人分のカップラーメンやスープを作る程度の少量のお湯を沸かす用途なら、高性能で定評のあるこの製品の一択だ。

ジェットボイルにはいくつかの種類があるが、わたしがいま使っているのは「ジェットボイル・スタッシュ」。

わずか200グラムと超軽量で、容量800ミリリットルの小さな鍋(コッヘル)が付属しており、中にバーナーヘッドとガスボンベがキレイに収まる。コンパクトの極みである。

他のジェットボイル製品もそうだが、五徳と鍋底の形状に工夫がしてあり、熱効率がとても良いので、あっという間に湯が沸く。

日清カップヌードルは必要な熱湯の量が320ミリリットル、ビッグサイズだと410ミリリットル。ジェットボイル・スタッシュは800ミリリットルのお湯が沸かせるので、ビッグを2杯分ギリギリつくることができる。2人までの山行ならこれで十分だ。

ただフラット登山のコースは、必ずしも山の中で休憩するだけではない。公園の芝生で休むこともあれば、どこかの鉄道の駅舎で休憩することもある。当然だが、そういう場所は火気厳禁なので、ガスストーブは使えない。

ちょうど良いことに、最近は高性能な保温ボトルが登場してきている。最も有名なのが、サーモス社の「山専用ボトル」。通称ヤマセンボトルと呼ばれている製品だ。

公称数字では、熱湯を満タンに入れれば6時間経っても摂氏80度前後をキープという性能で、カップラーメンを作るのにはまあ十分な温度だ。

熱湯を使って作る便利なメニュー

このサーモスの製品に対抗して出てきたのが、モンベルの「アルパイン サーモボトル」。性能的にはヤマセンボトルとほぼ同じと見られている。値段も似たようなものなので、外観で好みのものを選べばいい。

ただ一点だけ違いがあるとすれば、モンベル製品のほうは「アルパイン サーモボトル アクティブ」というボトルから直飲みできるタイプも発売されている。通常製品はサーモスもモンベルも、付属のコップに移して飲む方式なのだ。

なおモンベルは飲み口だけを付属部品としても販売していて、直飲みタイプからコップタイプへ、あるいは逆へと登山のたびに変更できるようにもしている。コップタイプのほうが保温能力が高くなるので、ラーメンを作る場合などはこちらに切り替えるといった使い方ができる。実にモンベルらしい気配りで好感が持てる。

ラーメンなどの調理に使わないのなら、片手で飲めるので直飲みタイプのほうが個人的には良いと感じている。コップ方式は両手を使うし、クエン酸などの甘い飲料を入れているとコップが汚れるのも気になる。ただし熱湯の状態だと、直飲みするとうっかり喉をヤケドしてしまうというリスクはある。このあたりも好みの問題だろう。

カップラーメンもいいが、厳寒期でなければおにぎりも食べたいという人も多いだろう。とはいえ歩いて体力を使っているから、汁物も摂っておいたほうがいい。コンビニのカップ入りのスープなどもわたしはときどきは持っていくが、このときに一緒に持参するのがオーマイの「スープ用パスタ」。

見た目はマカロニのようなふつうのショートパスタなのだが、茹でなくても、熱湯に3分入れておくだけで柔らかくなってくれるという画期的な製品だ。カップスープにこのスープ用パスタを好きなだけ加えてからお湯を注ぐ。15秒ほどかきまぜてから3分待つだけで、即製のスープパスタができあがる。

登山用コッヘルや食器を揃えるとメニューが広がる

カップラーメンやカップスープだけでなく、時にはもう少し凝った料理をつくることもある。たとえば数人分のシチューや鍋ものをつくろうとするとジェットボイルの小さな鍋サイズではもの足りないので、「2〜3人用」や「4〜5人用」の登山用コッヘルやフライパンがほしくなる。

わたしは長年、ユニフレームの「山フライパン」という直径17センチの深型テフロンフライパンに、同じユニフレームの「ライスクッカーミニDX」というご飯炊きコッヘルを使っている。この2つの製品はちょうど重なるので、バックパックに収まりが良い。

ライスクッカーの中には、小さな食器やおたまなども入る。もう少し量をつくりたい時には、チタンマニアという国産メーカーが出している大型コッヘルを使っている。容量が2.1リットルもあって大きいが、軽量のチタンなので重さはわずか248グラム。山フライパンとライスクッカーミニDXもこの鍋にきれいに収まり、収納しやすい。

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(『歩くを楽しむ、自然を味わう フラット登山』P.169より)

食器についても書いておこう。インスタントラーメンを食べたり、鍋やシチューを取り分ける食器。過去にいろんなものを試してみたが、ちょうど良い形とサイズのものがなかなか見つからず、長年かけて探し求めていた。少し前に「これは!」というものをとうとう見つけた。

新製品ではなく、古くからある樹脂製のなんということもないカップである。スウェーデンのウィルドゥというアウトドアメーカーが出している「フォルダーカップ・ビッグ」という製品だ。小さく見えるが、容量は600ミリリットル。小ぶりのどんぶりくらいあり、十分な大きさだ。小さな取っ手がついていて、熱い液体を入れても大丈夫。

そしてこいつのさらにすぐれているのが、柔らかい素材をぐいっと曲げるとフチが内側に折りたためるフォールディング構造になっていることだ。バックパックの中に放りこんでおいても場所を取らないし、コッヘルの中にも収まる。柔らかいので、あちこちにぶつかって音を立てる不快さもない。

シチューや鍋ものを作ったら、山の中であろうとレードル(おたま)も必需品だ。これもいろいろ使ってみたが、最終的にユニフレームの「トレイルレードルTi」に落ち着いた。折りたたみ式なのだが、シンプルかつよくできた仕掛けがあって、汁をよそったときに折りたたまれてしまうことがない。おまけに35グラムと超軽量。

ガスバーナーはどうするか。山フライパンは直径17センチで、ライスクッカーは直径16.5センチ。このぐらいの大きさの鍋となれば、ジェットボイルも含めた直立型のバーナーに乗せるととても不安定になってしまう。そこで登場するのが、五徳部分とボンベ部分が離れていて、ホースでつながっている分離型と呼ばれるタイプのバーナー。

わたしが使っているのはイワタニ・プリムスの「エクスプレス・スパイダーストーブⅡ」だ。五徳部分は地面からの高さが10センチ程度しかないので、非常に安定している。鍋をバーナーに乗せたままレードルでかき回しても、ひっくり返る心配が少ない(手で鍋を押さえておく必要はある、当然)。

山でもすぐできるカレー

さて、鍋もフライパンも食器もそろった。分離型ガスバーナーもある。山中で何を作り、食べようか。

わたしが最もよく作るのは、あまりに平凡で驚くかもしれないが、カレーライスである。ただし普通のカレーライスとは少し異なる工夫がしてある。

まず白米の炊き方を説明しておく必要があるだろう。山中では米を研ぐのが難しいので、無洗米を持っていく。山に行く前に浸水させておく余裕があればなお良い。ただし浸水させるとその分米は重くなる。

コッヘルに米を入れ、水を注ぐ。水の量は2〜3合程度だったら、人差し指を垂直に差し入れて第一関節の高さになるぐらい。

昔から「はじめチョロチョロなかパッパ」みたいな合い言葉もあるが、火にかけたら最初から強火でまったく問題ない。最大の注意を払うべきポイントは、沸騰したらすかさずトロ火に落とすことだ。ここを見逃すと、あっという間に水が蒸発してしまい芯があるのに焦げたご飯になってしまう。

トロ火に落としたら、だいたい10分。火から下ろしたらすぐに蓋を開けて、箸かスプーンでご飯を少量よそって試食してみる。柔らかく炊けていたら、もう一度蓋をしてしばらく蒸らす。芯が強く残ったままだったら、水を大さじ2杯ぐらい振りかけて蓋をし、もう一度トロ火にかける。数分経ったら下ろしてまた味見する。

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(『歩くを楽しむ、自然を味わう フラット登山』P.173より)

さて、カレーである。必要な食材は、以下の通り。

ソーセージ、ベーコンなど比較的傷みにくい加工肉。真夏でなければ、豚のブロック肉をぶつ切りにし凍らせて持っていくこともある。

紙パックのトマト水煮(缶よりもゴミが小さくなり後始末が楽だから)、ニンニクとショウガのチューブ、フライドオニオン、カレールー。

油もあったほうがいい。容器の蓋が完全に閉まるサラダ油やオリーブ油はあまり見かけないので、少量がプラスチックのパッケージに入った小分けタイプをアマゾンで購入して使っている。「オリーブ油 小分け」で検索すればいくつかの製品がヒットするはず。

コッヘルに油を垂らして火にかけ、肉類をざっと炒める。色が変わったら、トマト水煮を加えて水を少し足し、さらにフライドオニオン、ニンニクとショウガのチューブも絞り出して煮込む。煮詰まってきたらカレールーを放りこんで、とろりと美味しそうなにおいがしてきたらできあがり。

このカレーのキモは、味のベースをトマト水煮でつくっていることだ。カレーライスというのは割りにもったりした重い料理だが、トマトが入ることで酸味が加わり、歩いて疲れている身体に染み通っていくような味になる。歩いている時にはクエン酸系の飲み物が酸っぱくて美味しいのと同じで、酸味と疲労は最高のマリアージュなのだ。

ニンニクとショウガも入っているので、身体が火照ってくるほどに温まる。辛いのが大丈夫な人は、それぞれチューブまるまる一本入れてしまうぐらいの気合でもいいだろう。ものすごくホットなカレーができあがる。

応用すればほかのメニューにもなる

このカレーは、他の料理にも転用可能である。最後のカレールーを取りやめて、そのかわりに味噌を団子サイズぐらい、あれば赤ワインをカップ半分ぐらい加えて煮る。そうすると超絶旨いビーフシチューになってくれる。この料理は、味噌のコクがキモである。

ここに水煮のひよこ豆や金時豆など加えて、パプリカやチリペッパーなどお好みの辛い系スパイスを入れると、チリコンカン風になる。辛いのを入れなければ、それはすなわちポークビーンズ。

さらにここにショートパスタを入れて柔らかくなるまで煮れば(先ほどのオーマイのスープ用パスタでもいい。煮る時間が不要になる)、ミネストローネっぽくなる。キャベツを刻んで入れれば、いきなりロールキャベツ味。欧米はトマトベースのシチューの種類がたくさんあるので、どんな風にも変幻自在なのだ。

じっくり煮込む牛丼も美味

白米のおともの料理では、牛丼を作ることもある。牛肉の切り落としを冷凍してどっさりと持っていく。涼しい季節だと自然解凍されない心配があるので、生肉を保冷バッグに入れていくこともある。

鍋に油を垂らして牛肉を盛大に炒め、スライスしたタマネギも加える。水をひたひたに加え、顆粒の和風だしと砂糖を足して煮込む。牛肉が煮えて柔らかくなるまで、できるだけじっくり煮込むのが美味しくする秘訣だ。だから昼食の時間があまりとれない山行では作らない。

煮詰まってきたら最後に醤油をまわしかけて味を調整し、できあがり。ついでに紅ショウガなど持っていくと、なお良い。ハフハフと肉と米に食らいつこう。

肉汁を煮詰めすぎないようにしておき、里芋の水煮とねぎ、キノコなどを加えると山形名物の芋煮になる。焚き火などをしながらの芋煮は、「冬が来たなあ」という風物詩の感じが最高だ。

気分と山道で食を選びたい, 熱湯を使って作る便利なメニュー, 登山用コッヘルや食器を揃えるとメニューが広がる, 山でもすぐできるカレー, 応用すればほかのメニューにもなる, じっくり煮込む牛丼も美味

(『歩くを楽しむ、自然を味わう フラット登山』P.175より)