2030年度までに売上2000億円を目指す 富士通、初年度堅調の金融業界向け「Uvance」を拡充中
富士通が2025年に始動した、金融業界向けのDXソリューション群である「Uvance for Finance」が堅調なスタートを切っている。2025年度の売上は目標とした700億円を上回る800億円以上を見込む。今後もソリューションを拡充しつつ、2030年度までに2000億円の売上を目指す方針だ。
富士通は、2026年2月24日、Uvance for Financeに関する説明会を開催。富士通の執行役員常務 金融ビジネスグループ長である八木勝氏、Financial Service & Insurance事業本部 本部長である西田浩朗氏より、銀行に加えて保険やリースなど、金融領域全般にわたり強化を進めるUvance for Financeの進捗や推進戦略が語られた。

(左)富士通 執行役員常務 金融ビジネスグループ長 八木勝氏(右)Financial Service & Insurance事業本部 本部長 西田浩朗氏
7つのカテゴリでオファリングを拡充中
富士通は、2025年6月に、金融機関のデジタル変革を支援するソリューションを「Uvance for Finance」として体系化した(参考記事:ネット勘定系シェア5割越えを目指す富士通 ATM撤退で脱ハードウェアを加速)。
このUvance for Financeは“3つの層”で構成されている。第1層は、信頼性と柔軟性を兼ね備えた基幹システムである「コアソリューション」。第2層は、コアソリューションのデータを基に価値を生み出す「AI/データ利活用プラットフォーム」。第3層は、「カスタマーエクスペリエンス向上やスマートソサエティ」を実現するフロント層となっている。
こうした3層を具現化すべく、7つのカテゴリ内で多様なオファリングソリューションを提供するのがUvance for Financeの全体像となっている。
【Uvance for Financeの7つのカテゴリ】
・コアソリューション:「Reliable Core System」
・AI/データ利活用プラットフォーム:「Data Driven Finance」「RegTech & Compliance」「Sustainable Finance」
・カスタマーエクスペリエンスの向上/スマートソサイエティの実現:「Personalized Experience」「Finance Automation」「Embedded Finance」

3層からなるUvance for Finance
コアソリューション:保険・リース業界向けの基幹システムを拡充
最初に、Uvance for Financeの土台となる「コアソリューション」の進捗が説明された。コアソリューションは、パブリッククラウド・マイクロサービスアーキテクチャ・クロスインダストリーという技術的な革新性を取り入れつつ、信頼性も担保された「Reliable Core System」のオファリングとして提供される。
各金融領域向けのコアモジュールの整備が進んでおり、銀行向けには勘定系ソリューション「Fujitsu Core Banking xBank(クロスバンク)」が提供され、ソニー銀行が第1号ユーザーとして稼働を開始している。xBankは、2025年9月に機能開発への生成AI適用を始め、AIドリブン開発への段階的移行を推進中だ。
今回新たに紹介されたのは、保険業界向けの「Fujitsu Cloud for Insurance Japan Edition」とリース業界向けの「LEASING-1 Neo」である。
Fujitsu Cloud for Insurance Japan Editionは、保険ビジネスでグローバルスタンダードとなっている「SAP Fioneer Cloud for Insurance」を基盤に、富士通が日本市場の要件を統合した基幹システムだ。「これまでは、日本の規制要件や商習慣に対応するための顧客の負荷が高かった。ジャパンエディションを富士通が開発し、第一弾として自動車保険に対応したテンプレートを2025年11月に投入している」と西田氏。
まずは損害保険領域向けに展開されているが、マイクロサービスアーキテクチャを採用しており、生命保険領域や代理店向けのモジュールだけを利用することもできる。

保険コアソリューション「Fujitsu Cloud for Insurance Japan Edition」
一方のリース業界向けには、中堅の顧客中心に30年以上の実績を持つ基幹システムLEASING-1 Neoをクラウド化している。現在、大企業の顧客向けの機能を拡充しており、直近では、生成AIやSSO・多要素認証などを実装。2026年度には新リース会計規準に対応し、2027年度以降にはAIエージェントも組み込んでいく予定だ。
同基盤は、FFGリースや日産フィナンシャルサービス、 三菱自動車ファイナンス、FLCSなどへの導入が進んでいるという。

リースコアソリューション「LEASING-1 Neo」

LEASING-1 Neoのロードマップ
現在、こうした8つのオファリングソリューションが整備されており、今後はクレジット業界向けの基幹システムも提供予定だという。
AI/データ利活用プラットフォーム:米金融機関での実績を持つFICOのプラットフォームが中核に
第2層にあたる「AI/データ利活用プラットフォーム」は、データ活用を推進する「Data Driven Finance」、規制遵守とリスク管理を高度化する「RegTech & Compliance」、社会課題の解決と企業成長を両立する「Sustainable Finance」の3つのオファリング体系から構成される。
Data Driven Financeの中核を担うのが、2025年にパートナーシップを結んだFICOのプラットフォームだ。米国の大手金融機関の90%以上が同基盤を採用するという実績を有し、日本でも信用スコアリングで知られる一方で、AIを活用した意思決定プラットフォームのリーダー企業でもある。「我々のAIに、金融の専門性を有するFICOを加えて、データ利活用の領域を切り拓いていく」(西田氏)
FICOのソリューション群のうち、オムニチャネルを活用して顧客とのコミュニケーションを最適化する「FICO Customer Communication Services」を2025年7月より提供し、ドコモ・ファイナンス債権回収やジェーシービーにて導入されている。2026年2月には数学的モデルでコストや利益を最適化する数理最適化サービス「FICO Xpress Optimization」を提供し、FICOのサービス群を統合的に備えた「FICO Platform」も2026年度中に展開予定だ。

FICOのプラットフォーム
なお、RegTech & ComplianceやSustainable Financeのカテゴリのオファリングに関しては、金融機関のニーズを捉えながら、2026年度内に整備していくという。
カスタマーエクスペリエンスの向上・スマートソサエティの実現:BtoB向けのEmbedded Finance基盤をPoC中
フロント層である「カスタマーエクスペリエンスの向上・スマートソサエティの実現」は、顧客の個別ニーズに対応する「Personalized Experience」、バックオフィス業務を自動化する「Finance Automation」、非金融サービス内に金融機能を組み込む「Embedded Finance」の3つのオファリング体系から成る。
Personalized Experienceでは、既に展開中の銀行店舗向けソリューション「Digital Branch(デジタルブランチ)」に加えて、相続領域に特化したソリューション「FinSnaviCloud(フィンスナビクラウド)」を提供中だ。属人的な相続事務をデジタル化するサービスで、直近では戸籍謄本から相続関係説明図を自動生成するAI機能も追加している。2026年2月現在で、24社の金融機関が導入しているという。

相続支援ソリューション「FinSnaviCloud」
Finance Automationでは、信用金庫の補完業務システム向けソリューション「SK-Force」を提供するほか、今後はFICOや同社の生成AI「Takane」を用いたオファリングを拡充していく。
Embedded Financeに関しては、現在、SaaSデータを分析して企業の資金ニーズなどを検知し、ファイナンスサービスにつなげる「Fujitsu Embedded Finance Platform(仮称)」のPoCを金融機関と進めており、2026年度中にリリース予定だ。現在PoC中のSaaSは中堅中小向けのEDIだが、将来的にはERPやCRM、HRTechといったSaaSデータも集約・分析して多様なファイナンスサービスを提供できるプラットフォームへと進化させていくという。

Fujitsu Embedded Finance Platform(仮称)
また、病院と保険会社をつなげて給付金の支払いをオンラインで完結できる「オンライン診断書連携サービス」も、2026年5月より提供予定である。
2030年度までに2000億規模のビジネスへ拡大
このように、2025年に立ち上げたUvance for Financeは急速に拡大しており、2025年度の売上も当初目標の700億円を上回る800億円以上に達する見込みだ。今後も7つのカテゴリのオファリングを拡充しつつ、Uvanceの別領域のオファリングとも連動させ、金融業界に対する価値提供を高めていく。最終的には、2030年度までに「2000億規模」のビジネスへ成長させることを目標としている。
「(この目標達成においては)銀行をはじめ、保険、リース、クレジット業界における基幹システムのクラウド化に対する期待が非常に大きい。そして、クラウド上に溜まったトランザクションを活用するデータ・AIビジネスが押し上げることで、毎年120%ほどの成長を継続していきたい」(八木氏)
こうした成長の鍵となるコアソリューションの市場シェアについて、Uvance for Financeの立ち上げ時に、10年後の2035年までに、ネットバンク勘定系システムで31%から50%以上へ、営業店システムで34%から50%以上へ引き上げる目標を掲げた。今回紹介した保険基幹システムでも10%から30%以上、リース基幹システムでは20%から40%以上のシェア拡大を目指している。

各コアソリューションで市場シェア拡大を目指す
そして2026年度は、xBankやFujitsu Cloud for Insurance Japan Editionを中心としたコアソリューションおよび、Embedded Financeによるクロスインダストリーの推進に注力していく。八木氏は、「金融機関のDXを支援する戦略パートナーとして、見えない安心が誰にでも届く社会を、デジタルを駆使したイノベーションで実現していきたい」と締めくくった。