立憲側の甘さで中道は崩壊し「民主党はおしまい」高市“電撃解散”の裏に維新の存在?【「国会通信簿」中編】

4年ぶりに復活した週刊朝日の名物企画「国会通信簿」。中編では、おなじみの御厨貴・東大名誉教授と松原隆一郎・放送大学教授が、衆院選での中道改革連合惨敗の背景、日本維新の会との連立政権の行方について分析する。2009年に自民党から政権を奪取した“民主党”とは何だったのかの総括も含めて語り合い、採点した。
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■党名もトップもセンスがなかった「中道」
御厨 中道は幹部の顔ぶれは民主党政権のころと変わらず、「何で公明党と一緒になったんだ」と叩かれて、大変な選挙でしたね。今回落選した幹部やベテランの顔をテレビで見ていてね、「老けたな」と思いましたよ。民主党政権からもう13年半だからね。
松原 小沢一郎元代表が比例復活もできずに落選したのが象徴的。安住(淳・元財務相)さんや岡田(克也・元外相)さん、枝野(幸男・元官房長官)さんまで一緒に。一気に世代交代できるのは唯一よかったけれど、これまでの経験を党内でつないでいけないですよね。そもそも、今回の選挙で1選挙区あたり1~2万の公明・学会票が移動してくれば勝てると思い込んだ、立憲側の甘さが敗因でしょう。中道として議席は167議席から49議席に減らしました。
御厨 本当に甘すぎた。何よりも党名もトップも、センスがない。だけどあの共同代表2人は大マジメで、勝てると思っていたからね。
松原 略したら中改か中革なのに、それを「略して中道」と言い張る野田(佳彦・前共同代表)さんも斉藤(鉄夫・前共同代表)さんも、真面目でいい人なんでしょう。ただ風を読むのは下手。選挙は大惨敗ですが、できたばかりの党なので中道は採点不能です。
御厨 昭和のおじさん2人と高市早苗(首相)さんで「どっちがいいか」って言われたら、負けるに決まってるわけ。それにしても、政策では安保法制合憲、原発再稼働容認で、選挙では比例の各ブロックでの公明出身者優遇と、立憲は公明に譲りすぎましたね。立憲としてはEだな。中道は小川淳也さんを新代表にしたわけだけど、自民党という巨大な猫が生まれたての中道という猫をいじめる感じになりそう。小川さんはイロモノでしょう。「なぜ君は総理大臣になれないのか」という映画に出ちゃいけませんよ。「なぜ君は総理大臣にならなければいけないのか」だったらいいけどね(笑)。

■民主党に「三度目の正直」はない
松原 そうですね。泣き虫だし、前置きが長く具体的でない話し方はすでに「オガジュン構文」と言われている。公明党は組織防衛という意味ではうまくやったことになりますかね。実際に旧公明の議席は24から28まで増えました。採点はDくらいでしょう。
御厨 公明党は近いうちに衆議院からの撤退戦をやらなきゃいけない感じがあったものね。中道はしばらく続くだろうけれど、同じ轍は踏まないから、参議院が合流することはないでしょう。これで本当に「民主党」が終わった感じがするね。一度は政権を取ったけれどすぐに手放し、希望の党で失敗して。これで本当におしまいでしょう。
松原 2012年に政権を失ったとき、彼らは「お訴えがたりなかった」って言っていました。つまり、自分たちは間違っていなかった、伝わらなかっただけと、原因究明を十分にしなかった。あのときにちゃんとやっていれば、良質なリベラル勢力として残れたはずだと思います。
御厨 自民党が一党でやってきたところに風穴を開けたのは一つの成果だし、政権交代可能な二大政党制を目指すということも間違ってはいなかった。目指したところは立派だった。
松原 振り返ると、安倍政権が民主党の主張を全部実現しちゃいましたよね。安倍(晋三・元首相)さんって、社会福祉政策ではかなりリベラルでした。アイヌ新法やヘイトスピーチ解消法とかも全部立法化して、立憲民主党にできることがどんどん細っていった。“裏金”を糾弾するくらいしかやることが無くなり、目指したものはよかったが実行力で骨抜きにされて、今回で終焉。民主党についても評価するとDですかね。
御厨 結局、民主党政権の反省をせずに、ダラダラくっついたり離れたりしながらここまで来ちゃったよね。民主党は完全に終わったと思います。二度あることは三度あるけど、三度目の正直はなくこれでおしまい。
松原 「悪夢の民主党政権」なんて攻撃されましたけど、本当にひとつ、悪夢だと思うのは優秀な若者の官僚志向をつぶしたこと。事業仕分けをしたり、若いエース級の官僚をテレビの前でつるし上げたり。あのころから東大内で法学部の人気が下がって、優秀な学生が軒並みコンサルに流れるようになってしまいました。

■自民と維新の連立は今後も?
松原 次は連立を組む与党の日本維新の会ですね。高市さんがあそこまで突然解散した理由の一つは維新じゃないのかな。どんなに気を遣っても、「定数1割削減」とか数字に根拠のないことを言って、政権運営がうまくいかない。国民民主党に近付いても玉木(雄一郎・代表)さんは、あの調子。手詰まりになったときに、今なら票が取れる、1回賭けてみようってストーリーになったんじゃないでしょうか。
御厨 そう思う。衆議院の議員定数の1割削減が決まらなかったら政権から降りるとばかり言ってね。それでも大阪ではやっぱり強かった。自民党と選挙協力せずに34議席から36議席までに増やした。選挙協力はしなくても、強いものは強いということを政治家の中で知った人もいると思う。採点としてはCくらいはあげていい。
松原 国レベルでははっきり言ってゼロの党だけれど(笑)、今回一応政権内で丁々発止はやったかな。大阪ではすごい存在感ですね。
御厨 ただ、大阪都構想とかを本気でやりだすと、関係ないところから出ている議員がどこまでついていけるかな。
松原 都構想を国レベルの制度論として論じていませんね。連立の行方はどうですか? 自民と維新の関係は悪くなさそうだけれど、ここに至っても入閣しません。
御厨 秋には入れるって言っているけど、自民党色に染まらないために維新側が入れたくないんでしょう。人材もいないし、前原誠司(前共同代表)を差し出せば、自民にいっちゃいそうだし(笑)。ただ、関係は完全に崩壊するところまで続くでしょうね。公明党との連立だって26年続いたんだよ。
松原 高市さんにしても、この議席数ならうるさい維新を抑え込める。お付き合いしていていいだろうってことになったのでしょう。
(構成/AERA編集部・川口穣、聞き手/岩田智博)
【主要政党の国会通信簿】
自民党 A、日本維新の会 B、中道改革連合 ―、立憲民主党 E
公明党 D、日本共産党 ―、れいわ新選組 E、チームみらい A
参政党 B、日本保守党 ―、社民党 ―、
※A=秀、B=優、C=良、D=可、E=不可、―=採点不能、採点外
御厨貴(みくりや・たかし)東大名誉教授(政治学)/1951年、東京都生まれ。東大法学部卒。東大先端科学技術研究センターフェロー。著書は『天皇退位何が論じられたのか おことばから大嘗祭まで』(編著、中公選書)など多数
松原隆一郎(まつばら・りゅういちろう)放送大学教授(社会経済学)/1956年、神戸市生まれ。東大工学部卒。同大大学院経済学研究科博士課程修了。東大名誉教授。著書は『社会経済の基礎』(放送大学教育振興会)など多数ある
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