わずか21票差で勝ち残った「立憲一期生」議員は「中道」に何を思うのか 「また別れたら『君たちは何だ』となる」「自分の責任を捨てる発言は正しくない」

 先の衆院選で“壊滅状態”となった中道改革連合の中で、小選挙区で唯一勝ち残った「立憲一期生」がいる。北海道10区の神谷裕衆議院議員(57)だ。自民候補者との熾烈な争いを制したが、その差はわずか21票。文字通り“薄氷の勝利”だった。多くの「旧立憲」議員が議席を失ったが、神谷氏は中道で戦ったことをどう感じているのか。旧執行部に思うところはあるのか。本人に胸中を聞いた。

*  *  *

 2017年、希望の党の“分裂騒動”を経て枝野幸男氏が設立した(旧)立憲民主党は、同年の総選挙で旋風を巻き起こし、野党第一党の地位を確保した。神谷氏はこの総選挙で立憲民主党から出馬して当選した「立憲一期生」だ。今回の総選挙では、長妻昭氏や西村智奈美氏ら数人の「立憲一期生」が議席を得たが、いずれも比例復活で、小選挙区で勝ち抜けたのは神谷氏ただ一人だった。

――立憲民主党と公明党の突然の合流があり、新党「中道改革連合」として選挙戦を戦いました。合流を決めた理由は。

 立憲民主党と公明党の間で「協力してやっていこう」という話があることは、何となく伝え聞いていました。それでも、率直に言えば、合併が発表されるときまで私は立憲民主党として選挙を戦うものだと思っていました。それが突然できなくなり、中道改革連合に移るのか、無所属で出馬するのかの二択を迫られたわけです。

 北海道10区はこれまで公明党の稲津久さん(24年に政界引退)が立たれていて、もう何年も選挙を戦ってきています。公明党を応援してきた方々のなかに「神谷」という名への忌避感はないのか、これまで私を支援してくださった方々が私の決断を「是」とするのか、いろいろ悩みましたよ。ただ、議会活動なかでは会派が非常に重要で、大きな塊として行動するほうがいい。その塊の中で努力するのが筋だと思ったんです。

――神谷さんはかつて、希望の党からの出馬をよしとせずに(旧)立憲民主党に加わりました。中道改革連合は原発政策や安全保障政策などで従来立憲が掲げてきた姿勢から変化が見られますが、「変節」したのでしょうか。

 私自身は、これまで言ってきたことと変化があるとは思っていません。原発や安保について、これまで立憲民主党と公明党で若干の「表現の違い」があったことは事実です。道筋やプロセスにおいても異なる部分があったでしょう。ただ、原発政策について言えば、最終的に原発のない世界を目指すというゴールは同じです。安保法制についても、「違憲部分」に議論があったのは事実です。しかしいまの法体系、あるいは実際の運用からみれば、個別的自衛権の範囲ですべて整理が付くと考えています。お互いの主張を包含しながら一つのしっかりとしたものをつくれたと思っています。

■「寂しい思いはありますよ」

――これまで神谷さんと公明党が激戦を繰り広げてきた北海道10区は、中道設立の「象徴区」になるとも言われてきました。自民候補と21票差の大激戦を制しましたが、どんな選挙戦でしたか。

 これまで私を支援してくださっていた方に加えて、公明党を応援してこられた皆さんの活動がなければ勝ち残れませんでした。こんなにも1票の尊さ、1票のありがたさがわかる選挙はなかなかないですよね。支援者の皆さんも「私の1票がなかったらつらかったね」とおっしゃっていますし、多くの方に1票の大切さを知ってもらえる結果になったと思います。

――全国的には中道への大逆風で大きく議席を減らす結果になりました。新党は解党して、再び立憲・公明に戻るべきだとの主張も一部にありますが、中道改革連合として今後やっていけるのでしょうか。

 私自身、2017年に立憲民主党の候補としてはじめて議席を預かり、ずっと立憲でやってきましたから、寂しい思いはありますよ。それは紛れもない事実です。

 ただ、これからは中道改革連合として前を向くしかないですよ。仮にまた別れるなんてことになれば、いよいよ「君たちは何なんだ」という評価になるでしょう。それに、私自身も含めて、みな自分で決断をし、中道に加入すると決めて入党しています。そんなに軽いものではありません。旧執行部への批判はあるかもしれませんが、少なくても中道の候補になった人間は自らの意思、決断で進んだのですから、結果の是非はあろうとも、自らの責任を捨てるような発言は正しくないと思います。

――そんななかで「自民党一強」の国会が始まりました。本会議場の景色は変わりましたか。

 与野党伯仲だった前国会で、本会議場の私の席はちょうど真ん中付近でした。それが今回、自民党の議席が中央を超えて大きく張り出す形になって、私の議席は(議長席から見て)グッと左側へ移動しました。議事進行係の動議に対する与党議員の「よし」という掛け声もかなりボリュームが大きくなっています。初日から、五感で国会が変わってしまったことを感じました。50議席に届かない現状では単独で内閣不信任案も予算関連法案も出せませんし、臨時国会の開会要求もできない。法案を出すにも仲間集めから始めなければならないという状況は、苦しいことは事実です。

 ただ、立憲民主党が立ち上がった当初も55議席という小所帯からのスタートでした。野党第一党として、与党の皆さんと向き合いながら議会運営をやっていくことは変わりませんし、小なりとはいえ、与党と向き合って論戦をしていくことは十分可能だろうと思っています。

(聞き手・構成/AERA編集部・川口穣)

・【写真】取材に応じず、雲隠れした「中道」のキーパーソンはこちら

・【写真】創価学会「女性部」の怒りを買って失脚した公明党議員はこちら

・【写真】中道の党名発表で「5G(爺)」と揶揄されたのは、こちら