「石川さんに3000円振り込んで」住信SBIネット銀、AIに頼むだけの新サービス開始へ

左から 半田英二執行役員、UXデザイン部クリエイティブイノベーションG UXデザインエンジニア 田村義希氏、UXデザイン部サービスデザイングループ 吉岡翼氏、関衛介UXデザイン部長
住信SBIネット銀行(8月からドコモSMTBネット銀行)は、2月27日より「NEOBANK ai」のベータテスト版を開始する。テスター募集には数万人が名乗りを上げたが、普段、同行をアクティブに利用している数千人からスタートするという。
NEOBANK aiは音声やテキストでAIに対して、銀行の手続きをお願いできる、新しい操作体系だ。「石川さんに3000円、振り込んで」とお願いすれば、AIがあらかじめ登録されている石川名義の口座番号を呼び出し、ユーザーに確認を求める。あとはユーザーが了承することで、振り込みが完結する。
「三菱UFJ銀行に1万円、振り込んで」とお願いすると、個人名がないので、自分が所有する別の銀行の口座に振り込みしたいんだと判断するなど、かなり賢い。
音声での振り込みだけでなく、残高照会や、間違えて振り込んでしまったときの「組戻」もAIに頼むことできる。
請求書をカメラやキャプチャーで読み込んで振り込んだり、デビッドカードで支払った明細を集約し家計簿としてまとめたり、引っ越しや名義変更などの手続きを呼び出すというのにも対応している。およそ100近い手続きをAIに任せることが可能だ。
開発陣は「パソコンによるネット銀行、スマートフォンのアプリに続く、ユーザーインターゲースのパラダイムシフトとして、生成AIに取り組んだ」という。
銀行取引を助けるエージェント
そもそも、住信SBIネット銀行のアプリは「操作性が使いやすい」と高い評価を得ていた。
しかし、「これがベストだとは思っておらず、新しいアプローチを模索していた」(開発陣)という。
提供するサービスが増えるにつれて、使いたい機能がメニューの階層深くに潜ってしまい、ユーザーが見つけにくいという状況に追い込まれた。
そんななか、AIに話しかけるだけで、手続きの入り口までショートカットでアシストしてくれるようにした。
これまでも銀行アプリでチャットボットとして、ユーザーの質問に答える仕組みはあったが、あくまで、ユーザーは回答まで自分でたどり着き、あとの操作は自分でやらなければならなかった。
今回のAIは「銀行取引を行うAIエージェント」として、手続きの途中までを手助けしてくれる。最後の承認だけはユーザーが行うことで、リスクを回避する。
BaaS提供先にもAI機能展開か
今回のNEOBANK aiは、構想を含めておよそ1年で開発したという。
当初は外部パートナーへの委託も考えたが、コストや開発期間などから断念し、社内の5〜6人のチームでの内製化に切り替えたという。
AIエンジニアだけでなく、APIの仕様やエンジニアリングまで理解して実装に関われるスキルを持ったデザインエンジニアが携わり開発を進めてきた。
そもそも、住信SBIネット銀行は、「JAL NEOBANK」など他社に銀行機能を提供するBaaSに強い銀行だ。他社に銀行機能を提供するため、様々なAPIがすでに存在していた。そうしたAPIをベースに生成AIと組み合わせることで、今回のNEOBANK aiをスピーディに開発することができたようだ。
NEOBANK aiはいまのところは未定だが、将来的にはJAL NEOBANKなどBaaSを提供する他社にも展開する可能性もゼロではないようだ。
銀行アプリの操作体系を音声やテキストなどAIに任せることができるようになると、他のアプリから簡単に銀行機能を呼び出すことも可能になる。例えば、JALマイレージバンクアプリを開きながら、JAL NEOBANKの残高を知るなんてことも簡単になるはずだ。
ドコモ製エージェントと連携も?
また、銀行アプリ自体も、現状は「入出金明細」「振込」「残高照会」などの機能メニューが並んでいるが、将来的には単にアプリを起動して、AIエージェントに話しかけるだけでいい、という操作体系になる可能性もありそうだ。
実際、開発陣が同行の円山法昭社長にプレゼンしたところ「アプリのホーム画面をグーグルみたいに窓だけの真っ白な画面にしてしまおう」と提案されたという。
さすがにいきなり真っ白になってはユーザーが混乱してしまうため、採用はされなかったが、ユーザーがAIによる新しい操作体系に慣れ、メインの使い方になってくれば、「アプリを開くと、画面が真っ白でテキスト入力窓のみ」なんて、画面になる可能性も十分にあるようだ。
実際、昨年12月19日に行われたNTTドコモと三井住友信託銀行との会見では、202X年移行の将来像として「生成AIプラットフォームでの取引」や「OSのネイティブAIとの連携」に言及していた。
つまり、もはや銀行アプリをいちいち、起動するなんてことはせず、GeminiやSiriに振り込みや残高照会をお願いすると、最後にユーザーが確認して了承する直前まで、手続きをやっておいてくれる世界がやってくるかもしれない。
実はNTTドコモでも、AIエージェントを開発している。現状、NTTドコモのAIエージェントNEOBANK aiが連携する開発にはまだ着手していないようだが、今後、様々なAIエージェントとの連携も十分に考えられそうだ。
筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)
スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。