「フラフラしすぎた」国民民主・玉木代表 チームみらいは本当にリベラル? “参政党効果”で誕生した高市首相【「国会通信簿」後編】

 衆院選は自民党の歴史的な大勝に終わり、「高市一強」の国会が始まった。自民党圧勝の影で躍進する新党があれば、壊滅的な打撃をこうむる党もあった。復活した「国会通信簿」後編では、御厨貴・東大名誉教授と松原隆一郎・放送大学教授が国民民主党や参政党、チームみらい、社民党といった野党の衆院選と今後について語り、採点した。

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■1度も首相にならなかった小沢一郎・元民主党代表

御厨 27議席から28議席になった国民民主党は本当はもっと取れる力があったと思うけれど、石破政権のころからフラフラしすぎたね。与党に近付いてみたり、政策連合だけやってもっと引き出そうとしたり、この間一番フラフラしていたのが玉木(雄一郎・代表)さんですよ。完全に与(よ)党と野(や)党の間にいる「ゆ」党。

松原 そうですね。立憲民主党と日本維新の会から「首相に」という動きもあったのにフラフラして一晩寝ているうちに維新が自民党ににじり寄り結局、連立入り。見事にしてやられた感じですね。

御厨 玉木さんは楽観論者だから。「何とかなるさ」は政治家としてはダメなんです。何ともならないのよ。彼が首相になる道は険しくなったのではないか。小沢一郎(元民主党代表)さんが1989年に47歳の最年少で自民党幹事長に就任して以来の破竹の勢いを見ていて、遂に1度も首相にならずに選挙で負けるとは思ってもいなかった。首相のチャンスというのはそういうもの。

松原 榛葉(賀津也・幹事長)さんも会見は見栄えが良いものの、少し自民的で昭和感がある。国民は玉木さんの個人商店な感じもしますよね。連合との付き合い方もちょっと……。連合の芳野友子会長と高市早苗首相という二人の女性との付き合い方が、玉木さんは下手過ぎ(笑)。それでも現状維持ではあるのでCはあげられるでしょう。

御厨 共産党は我々が20年来、「党名を変えなさい」って言ってきたんだけれど、8議席から4議席に減らして、どうにもならないところまで来ちゃったね。悪いけど点数外。党の構造改革をやって名前も変えて、新たな支持者の獲得に行く積極性が出れば、点数の対象になるでしょうけれど。

松原 共産党はこの間、「党首公選」を訴えたジャーナリストの党員を除名にした問題も相当響きましたよね。いまだに異論を封じていると明らかになった。こんなことをしたら今の時代、ネットに書かれて叩かれるに決まっているのに。

■参政党から“右”の票を奪い返す

御厨 れいわ新選組は今回1議席。それも自民党の比例名簿不足で回ってきた議席だから、ほぼ「全滅」なのでE。

松原 大石さんらの激烈に攻撃する手法が飽きられた、そして嫌われたんでしょう。カスタマーハラスメントやクレームへの拒否感が強くなっている世代には、あのやり方はない。山本太郎代表は騒いでも愛嬌があったけれど、病気を患って。

御厨 山本太郎さんはくさっても俳優だから。それでも1人芝居でやり過ぎたね。

松原 代わって目立ったのはチームみらいの躍進でした。議席は0から11議席へ。消費税減税を言わなかったことでも目立ったし、マーケティングリサーチというか、集中的、効率的に票を取ろうとして成功した。Aでいいでしょう。

御厨 余計な小選挙区は立てずに、いかに死票を出さないかを目指してうまくいきましたね。れいわからもゴソッと票を取ったんでしょう。

松原 彼らはリベラルなことも言っているんだけれど、福祉政策は現役世代優先の高齢者叩きですよね。スタートアップ起業家の同友会みたいなイメージがありながら、あそこまで票を取るとは驚きです。

御厨 思い出すのは初期の民主党です。当初はIT関係者が多かったんだけど、1回当選しても次に負けたらそれっきり。チームみらいの場合も、次の選挙でも同じような勢いを維持できるのか。あの党はまだ政策が見えてない部分があるから。じいさん叩きはいいけど、具体的に何をするのか。そこがまだ見えていないですよね。

松原 参政党は2議席から15議席へと大きく伸ばしましたけれど、去年の勢いは維持できませんでした。高市政権誕生で票を取り戻されたように思います。

御厨 自民党は去年の参院選で相当焦ったよね。参政党から“右”の票を奪い返せるアジテーターが必要だった。高市さんにして成功しましたね。マッチョなおじさんの参政党に対して、女性だったのも大きい。

■社民党は逆転現象が起きてる? 

松原 地方の大学の先生に聞くと、学生には参政党支持が相当多いらしい。いわゆるインテリ層とは違うんですが、魅力的に見えるんでしょう。衆院選も行くところまで行っちゃうのかなとハラハラしたけれど、高市さんが出てきて勢いが止まった。自民党は本当に、死にかけたらなんでもやりますね。

御厨 自民党は基本的には参政党的な主張は好きじゃないんですよね。ただ、彼らに票を取られちゃうのは困るから結局、高市さんを持ってきた。まさにキャッチオールパーティー(包括政党)!

松原 それでも参政党は地方に相当根を張っていますよね。ヨーロッパでも右派は地方から積み上げていくケースが多い。いま外国人労働者が増えて、地方ではアルバイトを取られるようなケースもあるでしょう。イメージ戦略がうまくいきました。Bくらいはあげていい。

御厨 問題は、参政党のおじさん(神谷宗幣代表)。最初はいいんだけれど聞いているとだんだん化けの皮がはがれてくる。深みのある政策って彼らは持っていなくて、言ってることがチルディッシュ(幼稚)なんだよ。

松原 組織の中で深い政策議論ができるようにならないと、ちょっと持たないですよね。れいわ新選組と同じでスターが1人しかいないのも辛い。

御厨 中川秀直元官房長官の息子の中川俊直さんを党内に入れたりしていますが、おぼっちゃんだとマッチョのおじさんに組み敷かれる(笑)。それでも、自民党の危機感をあおって頑張らせた。自分たちも地方に足がついているってことを考えると、よくやった。

松原 対照的に日本保守党や社民党は苦しかったですね。

御厨 どっちも採点外ですね。社民党は福島瑞穂党首の政治生命を永らえるために党が存続しているかのような、逆転現象が起きちゃっている。

松原 社会党時代から含めて、終わりを迎えるということで、総括宣言をした方がいいかもしれませんね。

御厨 そう。社民党には、「自らの総括が出来る力を残しておいて下さい」という勧告を出しておきましょう。

(構成/AERA編集部・川口穣、聞き手/岩田智博)

【主要政党の国会通信簿】

自民党 A、日本維新の会 C、中道改革連合 ―、立憲民主党 E

公明党 D、国民民主党 C、日本共産党 ―、れいわ新選組 E、チームみらい A

参政党 B、日本保守党 ―、社民党 ―、

※A=秀、B=優、C=良、D=可、E=不可、―=採点不能、採点外

御厨貴(みくりや・たかし)東大名誉教授(政治学)/1951年、東京都生まれ。東大法学部卒。東大先端科学技術研究センターフェロー。著書は『天皇退位何が論じられたのか おことばから大嘗祭まで』(編著、中公選書)など多数

松原隆一郎(まつばら・りゅういちろう)放送大学教授(社会経済学)/1956年、神戸市生まれ。東大工学部卒。同大大学院経済学研究科博士課程修了。東大名誉教授。著書は『社会経済の基礎』(放送大学教育振興会)など多数ある

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