狭い家「モノを浮かせる工夫」 突っ張り、吊るす、磁石…探せ!お助け商品

木材の上下に器具をセット。突っ張りの圧力で柱を固定すれば、ネジを使うのも棚を渡すのも自在だ=埼玉県吉川市の「カインズ」吉川美南店(重松明子撮影)

経済力を誇った1980年代の日本でも、住宅だけは「ラビットハッチ(ウサギ小屋)」と揶揄(やゆ)されていた。現代においても東京都内では空前の住宅価格高騰に見舞われ〝超狭小物件〟が満室という。狭さは国の宿命か? しかし、ものは考えようだ。モノを置くスペースがないなら、浮かせてみよう。隙間が収納になり、家電や自転車も空中に設置できる。ホームセンターに足を運ぶと、マジックみたいな商品とアイデアに出合えて、気分も〝浮き浮き〟高揚してきた!?

日本独自に発展したDIY

「足元に5cmあれば」天井近くまで棚を設置できる「壁面&すき間用 突っ張り収納ラック」=埼玉県吉川市の「カインズ」吉川美南店(重松明子撮影)

従来のワンルームマンションの半分の狭さ。居室約9平方メートルで家賃を周辺相場より2万~3万円安く抑えた賃貸物件を東京都内で展開する不動産会社スピリタス(東京都港区)によると、約1500室が常に満室という。激セマだが天井が約3・5~4メートルと高くロフト付きで、「入居者が独自に工夫して暮らしている」と広報担当。縦面を活用する暮らしをホームページで見ることができる。

「住まいが多様化している。それぞれの暮らしを快適にする工夫を、手が届く価格で提案したい」とは、全国251店舗を展開するホームセンター「カインズ」広報部の鈴木ゆう子さん。JR武蔵野線吉川美南駅前に昨年末開店したばかりの、売り場面積1万2300平方メートルの大型店舗、吉川美南店(埼玉県吉川市)を案内してもらった。

「足元に5cmあれば設置可能」の文字が目を引く。「壁面&すき間用 突っ張り収納ラック」(5980円)は、高さ2・5メートルまでの空間に棚を浮かせることができる。洗濯機横の隙間も活用でき、洗濯パンのへこみにも対応。一昨年発売し、インスタグラムで発信すると564万回以上再生される大反響となり、一時品切れになった。2月にはつり下げ収納をプラスした新商品も追加された。

ここに柱があったらネジを差し込みたい…。そんな願いをかなえ、部屋のどこにでも柱を取り付けられる器具も発見。2×4(ツーバイフォー)の木材の上下にセットすると床から天井まで、突っ張りの圧力で柱を固定できる。1組880~1280円で、木材は6フィート(約183センチ)598円が目安だ。長い柱の持ち帰りには軽トラックを無料で貸してもらえる。「テレビや自転車を引っかけてディスプレーしたり、棚を渡したり、さまざまなものを浮かせられます」

キャットタワーが置けなくても、壁に浮かせた板で飼い猫が運動できる「猫家具」(平安伸銅工業提供)

これらの突っ張り機能は平安伸銅工業(大阪市)の創業者が考案し、昭和50年に発売した「突っ張り棒」がベースになっている。日本の住宅事情にマッチし、進化してきた。同社は突っ張り以外の方法でも「浮かせる」商品を多数開発。4月には、狭いマンションでも飼い猫が壁伝いに運動できる「猫家具」を発売する。

さらに売り場を進むと、最大40キロ耐荷重の「浮かせる家具ブラケット」というパーツもある。壁に大きな穴をあけずに複数の石膏(せっこう)ピンで取り付け、これをベースに棚などを浮かせて固定できる。「DIY本場の米国では工具を使って大掛かりな作業をするが、日本人は持ち家でもできれば壁に穴をあけたくない方が多い。〝DIY女子〟ともいわれる層が手軽にできる色々なアイデアをSNSで発信するようになり、日本独自の文化として広がっているようです」と鈴木さんが指摘した。

浴室では椅子も洗面器も浮かせて、省スペース&ヌメリを防ぐ=埼玉県吉川市の「カインズ」吉川美南店(重松明子撮影)

浴室用品売り場では椅子や洗面器、ブラシや棚もマグネットで浮いている。トイレタリー売り場にあった花王「つりさげノズル」は、シャンプーなどの詰め替えパックの注ぎ口にセットして逆さにつるすと、詰め替えの必要なく最後まで無駄なく使える優れものだ。

浴室のモノを浮かせると、カビやぬめりを防ぐ効果も期待できる。ニトリでも、令和5年発売のシャンプー容器「下から出るマグネットディスペンサー」が、シリーズ累計120万個超販売とヒット中だ。

東京23区のマンション平均価格(70平方メートル換算)は中古でも1億2千万円を超えた(東京カンテイ、2月発表)。こんな時代。狭いからこその工夫を楽しみ、気持ちだけでもおおらかに暮らそう。(重松明子)