煮込まず20分"野菜の味が輝く"絶品ラタトゥイユ

野菜のおいしさを引き出したラタトゥイユを作ってみませんか?(画像:『フレンチシェフの引き算レシピ』)
僕がシェフを務めている「LA BONNE TABLE (ラ・ボンヌ・ターブル)」で、お客様に料理を提供するときに一番大切にしているのは、素材本来の味や香りをさらに輝かせることです。
【写真】完成したらこうなる!野菜のおいしさを引き出したラタトゥイユ
そのために必要なのは、ブイヨンやいろいろな調味料を加えて仕上げる「足し算」ではなく、あくまでもシンプルな調理法と味つけで仕上げる「引き算」だと思っています。
ただ、「引き算」といっても、決して楽をすることが目的ではありません。食材に向き合い、素材本来の味を信じて余計なことはしない。切り方や加熱の方法を変えて調理にかかる時間や手間を引く。
食材に無駄な時間を使わないことで、料理を最速で仕上げられると同時に、もっとおいしくできるということをお伝えできたらと思います。ぜひ、フランス料理が意外と簡単に、家でもおいしく作れるということを実感していただければうれしいです。
ラタトゥイユは野菜の水分だけで蒸し焼きに
多めの水分で煮込むと味が薄くなってしまいがちだけど、僕のレシピは野菜の水分だけで蒸し焼きにします。
もう、野菜の味しかしない。この料理が作れるようになれば、どんな料理でもおいしく作れる。料理のテクニックが詰まった、簡単だけど奥深い料理です。
【1】ズッキーニ、なす、パプリカは乱切りにする。ミニトマトは半分に切る。玉ねぎは芯を取り、内側と外側に分けて同じ大きさのくし形切りにする。
【2】鍋にオリーブオイル、にんにくを熱し、香りが立ったらミニトマト以外の【1】を入れる。塩2つまみをふって混ぜ合わせる。
全体に油が回ったらミニトマトをのせて塩ひとつまみをふる。蓋をして弱めの中火で8〜10分ほど蒸し焼きにする。2分おきによくかき混ぜる。
【3】野菜がしんなりしたら火を止め、水大さじ1(分量外)を加えて混ぜ合わせる。油と水が乳化したら火から下ろす。
野菜は切り方で味わいが変わる
ラタトゥイユには料理のテクニックが詰まっています。前述のレシピをもとに、ほかの料理でも参考になる料理のヒントを見ていきましょう。
【火の通りを考えて、切る大きさを変える】

(画像:『フレンチシェフの引き算レシピ』)
パプリカは大きめに乱切りすることで、嚙みしめたときにジューシーさを味わえる。ミニトマトは煮たときに形が残るように、細かくしすぎない。なすは鉛筆を削るようにヘタを切ると無駄がない。
【玉ねぎはバラしてから切ると大きさが揃う】

(画像:『フレンチシェフの引き算レシピ』)
玉ねぎは層になった球体なので、半分に切ってそのまま端から切ると、大きさに差が出る。芯を取り、バラバラにしてから切って大きさを揃える。火が通りやすく煮崩れしやすいので、大きめに切るとよい。取った芯も捨てずに使う。
蒸し焼きにして、野菜の旨みを引き出す
【塩をふるタイミングでおいしさは決まる】

(画像:『フレンチシェフの引き算レシピ』)
塩は味をつけるためだけではない。ラタトゥイユのような料理は、蒸し焼きにする前に塩をふり、素材の水分を引き出し、旨みを凝縮させる。肉や魚の下処理でふる塩も同様。塩の役割を意識することで、仕上がりが格段においしくなる。
【蓋をするのが最大の時短ポイント】

(画像:『フレンチシェフの引き算レシピ』)
少量の水分と油で蒸し焼き・蒸し煮にする調理法「エチュベ」。蓋をして蒸すことで、野菜本来の甘みや旨みを引き出すと同時に、野菜から出た水分が水蒸気となって鍋の中を循環し、早く火が通る。蓋を開けたときに、蓋についた水分も鍋に戻す。
【最後に水分調整をする】

(画像:『フレンチシェフの引き算レシピ』)
食材の水分だけで蒸し焼きにする場合、仕上げの水分調整が一番大切になる。旨みがついた鍋底に少しだけ水を足す(差し水)。
【デグラッセで旨みたっぷりのソースに】

(画像:『フレンチシェフの引き算レシピ』)
デグラッセは、鍋底についた茶色く香ばしいキャラメル状の旨みを水やワインを加えて溶かし出す調理法。こそげ取るようにしながら油と水を乳化させ、油っぽくない、なめらかなソースに仕上げる。鍋底の旨みまで余さず料理にまとわせることで、味と香りがグッと引き立つ。
「形を残すべき野菜」と「溶かすべき野菜」
料理には「形を残すべき野菜」と「溶かすべき野菜」の2つの役割があると考えています。
ラタトゥイユを例にあげると、ズッキーニとなす、パプリカは乱切りにしていますが、これは、ボリューム感を出しながら、それぞれの野菜に均等に火が入るようにするためです。
だから、加熱しても崩れずに形が残り、嚙みしめたときに野菜のジューシーさや食感、香りが最大限に味わえるのです。
一方で、ミニトマトに関しては果肉を少し溶かしてソースにします。ただ、小さく切りすぎると全体に混ざってしまい、ソースがトマト味になってしまう。
だからミニトマトは、エキスだけを出すために半分に切るというように、切り方をデザインしています。料理の仕上がりを見据えて「野菜は切っているときから加熱が始まっている」ことを意識すると、野菜の持ち味や香りが一段と輝く味わいになります。