「Windows 365 Link」の実力は? 手のひらサイズのクラウドPC専用端末
Microsoftが、2024年のIgniteで披露した「Windows 365 Link」。同社が提供するDaaS(Desktop as a Service)の「Windows 365」専用シンクライアント端末であり、2024年4月2日(米国時間)から、日本市場でも一般提供が開始された。
端末内にデータが保存されないため情報漏えいの危険性が低く、Windows 365のシフト業務向けプランと組み合わせることで、コールセンターや工場、店舗用端末としての需要にも応える。参考価格は5万6800円(税抜)。日本では唯一のリセラーとして、日本ビジネスシステムズが販売を担う(個人向け販売はなく、マイクロソフトからの直販も可能)。

Windows 365 Link
本記事では、4月25日に開催された一般提供開始記念イベントから、Windows 365 Linkの概要や、プレビュープログラムに参加したSOMPOシステムズによる評価などを紹介する。
Windows 365 Link+Windows 365の実力、ユースケースは?
働き方改革やコロナ禍に伴うリモートワークの普及を経て、2020年前後から「シンクライアント端末+DaaS」というクライアント環境が普及し始めた。その選択肢のひとつとして登場したのが、Windows 365 Link+Windows 365の組み合わせだ。
Windows 365 Linkは、Windows 365向けに設計されたシンプルで安全なシンクライアント端末である。筐体は手のひらにも収まるCDジャケットサイズ(120mm×120mm)で、ここにUSB-A 3.2ポート×3、USB-C 3.2ポート、HDMIポート、DisplayPort、3.5 mmヘッドフォン ジャック、イーサネットポート、ケンジントンロック、電源コード用端子を搭載。無線接続としては、Wi-Fi 6EやBluetoothを内蔵。ディスプレイは4Kデュアルモニターまで対応しており、ファンレス設計のため動作音は非常に静かだという。

Windows 365 Linkの各種ポート
大きな特徴は、設計段階からセキュリティを重視しているところだ。ローカルストレージを持たず、管理者権限は不要。「Microsoft Entra ID」と連動して、「Microsoft Authenticator」や「USB セキュリティキー」を使用したパスワードレス認証にも対応する。本体やOSのファームウェア・ドライバーやセキュリティパッチなどは自動更新されるほか、セキュリティ関連機能はデフォルトで有効に設定されている。

Windows 365 Linkの概要
ユーザーはこのWindows 365 Linkを使って、マイクロソフトが“クラウドPC”と呼ぶWindows 365にアクセスする。インターネット環境さえあれば、どこからでもAzure上でホストされたWindows環境にアクセスでき、管理者は、運用管理サービスである「Microsoft Intune(Intune)」でシンプルに展開・管理が可能だ。

Windows 365のイメージ
利用にあたっては、Windows 365のSSO (シングル サインオン) が必須となっているため、デスクトップが表示されるまで待機時間はわずかだ。筆者も実機を触ってみたが、操作のレスポンスも早く、違和感は全くなかった。同じAzure上にあるTeamsやOfficeなどのアプリケーションとも親和性が高い。なお、社内リソースにはVPN経由でアクセスできる。
管理者の視点でみると、Intuneを使うことで、Windows 365や既存端末を統合管理できるため管理負荷を軽減できる。一方、現環境では、Windows 365 Linkが「Windowsデバイス」として登録されるため、他のWindows端末と一括りでポリシーが割り当てられる点に注意が必要だ。その際は、動的デバイスグループや特定のフィルターを作成するとWindows 365 Linkだけを制御できる。

Intuneによる動的デバイスグループおよび特定のフィルターの作成
Windows 365 Linkは、どのようなユースケースに最適なのか。MicrosoftのCloud Endpoint Specialistである渡部未来氏は、まず、個人情報や機密情報を取り扱うような業務での利用を挙げる。「Entra IDでクラウドPCの入り口が守られ、データはAzure上でテナントごとに隔離される。なによりクライアント端末にデータが保存されない」と渡部氏。

Microsoft Cloud Endpoint Specialist 渡部未来氏
また、Windows 365のプランのひとつである「Windows 365 Frontline」(詳しくは後述)と組み合わせることで、コールセンターや工場、店舗などのシフト業務用端末や、受付デスクやPC教室に設置する共有PCとしての需要にも応える。これらのユースケースはほんの一例だという。
SOMPOグループはどう評価し、どう使う予定か?
損害保険ジャパン(損保ジャパン)が中枢を担うSOMPOグループの一員として、同グループのシステム開発や保守などを担うSOMPOシステムズ。何千、何万もの端末を抱える同グループでは、そのITコストが課題となっている。そこで、Windows 365 Linkに可能性を見出し、プレビュープログラムに参加したという。
SOMPOシステムズのアーキテクト本部 R&Dグループ 課長である関谷雄太氏は、「シンクライアントやリモートデスクトップなど、都度、何が最適かを問われていた。フルマネージドのシンクライアント端末で、従来のセキュリティ対策が不要になることに魅力を感じ、プレビューに応募した」と振り返る。

SOMPOシステムズ アーキテクト本部 R&Dグループ 課長 関谷雄太氏
Windows 365 Linkを試用してみると、「セットアップの早さ」に驚いたという。「Entra IDで環境を構築したら、1時間以内で端末をセットアップできた」と関谷氏。
また、従来のシンクライアント端末と異なり、通信遅延の影響が少なかったことも高評価だった。「操作してみると、シンクライアント端末であると全く感じなかった。Teams会議では、通信の兼ね合いで画質が粗くみえるところがあったが、レスポンスに関しては良好で、IDE(統合開発環境)のコーディングでも問題がなかった」(関谷氏)
その他にも、端末にデータを残さず、盗難や故障のリスクもないため、課題であるIT管理コストを減らすことができるという。

日本マイクロソフトの西口氏との対談形式でWindows 365 Linkについて語られた
実際の使い方として想定しているのが、全国に263拠点を持つ保険金サービスの「コールセンター用端末」の置き換えだ。シフト業務とWindows 365のFrontlineプランとの相性が良いという。「開発用のテスト端末」や「貸与端末」としての利用も模索していく。
今後は、これらのユースケースに沿って、実際のネットワーク環境で検証を進めていく予定で、3桁以上のユーザー数を見込んでいるという。
Windows 365 Linkの利用コストや購入方法は?
最後に、Windows 365 Linkの利用に必要となる費用をまとめておこう。
まず、Windows 365を利用する前提条件として、ユーザー認証を担う「Microsoft Entra ID P1」、統合管理を担うMicrosoft Intune、そして、仮想Windowsを利用するための「Windows E3」相当のライセンスが必要となる。これらは、Microsoft 365のF3・E3・E5・Business Premiumに含まれている。
加えて、クラウドPCであるWindows 365のライセンス、Windows 365 Linkの端末代金(税抜参考価格:5万6800円)が発生する。Windows 365のネットワークについては、追加費用が発生しない「Microsoftホスト型」と、自社ネットワークを利用し、Azureの利用量に応じて従量課金となる「Azureネットワーク」の2つから選択できる。

Windows 365 Linkの費用イメージ
Windows 365は、利用規模に応じた月額サブスクリプションとなり、3つのプランが用意される。
中小企業向けの「Windows 365 Business」は、300ユーザーまでなどの制限を設けつつ、ライセンスを付与するだけでクラウドPCが利用できる、プロビジョニングや設定が不要なプラン。大企業向けの「Windows 365 Enterprise」は、機能に制限がなく、ユーザー数も無制限。常にPCを利用するデスクワークへの導入に最適な、最も導入が多いプランだ。
そして、シフト業務や共有利用に最適なのが「Windows 365 Frontline」だ。1ライセンスで固定の3人まで利用可能な「専有モード」、 1ライセンスを不特定多数(無制限)で共有可能で、ユーザーのプロファイルやデータがサインアウト時に削除される「共有モード」から選択できる。どちらのモードもクラウドPCへの同時接続はライセンス数までとなる。

Windows 365の3つのプラン
Windows 365 Linkの販売は、認定リセラーからの購入、マイクロソフトからの直販から選べる。現在、日本唯一のWindows 365 Link認定リセラーなのが、日本ビジネスシステムズ(JBS)だ。なお、ウェブからの直販はなく、現時点では個人向けの販売は受け付けていない。
JBSは、2021年の提供開始からWindows 365の導入実績を重ねており、Windows 365 Linkに関してもいち早く販売体制を整えてきた。インターフェースとして必要なマウス・キーボードやWebカメラなど、周辺機器も併せて販売するほか、構想策定から運用までワンストップで支援する。

JBSは周辺機器まで併せて販売
JBSのクラウドソリューション事業本部 マネージャーである柴田隆太氏は、「企業向けのクライアント環境は、いつの時代も“デスクトップ”が中心にあり、時代や用途にあったものを提供・利用する必要がある。その選択肢のひとつが、Windows 365 LinkとWindows 365」だと語った。

日本ビジネスシステムズ クラウドソリューション事業本部 マネージャー 柴田隆太氏
このように、クラウドPC専門のファーストパーティ端末として、さまざまな特徴を持つWindows 365 Link。現時点では、他のフォームファクタ―については発表されていないが、同端末をリファレンスとしてOEMパートナーからの製品提供も期待したい。