やっと捕獲…シカ1頭で大阪市は大混乱 大阪と奈良で押し付け合い、「維新は情けない」と場外乱闘も

大阪市内の住宅地などで目撃が相次いでいたシカは、3月25日に大阪市によって捕獲された。今後、府内の施設が受け入れることになりそうだという。シカ1頭を巡って警察官や市職員が大量動員され、首長たちも対応に追われたシカ騒動は、ようやく幕を閉じた。
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今回、大阪市で目撃されたシカは、市中心部から約30キロ東にある奈良公園(奈良市)にいたシカが移動したとみられている。関西テレビは奈良公園の西側にあたる奈良市帝塚山の住宅地に3月10日にシカ6頭が出没していたことを取り上げ、その一部が生駒山を越えて大阪府の東大阪市に「大移動」したとみられると報じ、生駒山には野生のシカはいないので奈良公園からやってきた可能性が高いと解説している。
東大阪市では11日から目撃談があり、その後、21日ごろから大阪市東部の城東区、鶴見区、都島区、旭区で目撃談や110番通報が相次いだ。大阪市内で目撃されたシカは1頭で、角が枝分かれしていない「1本角」のため、1~2歳のオスとみられている。道路を歩いて車の交通に支障が出たこともあり、警察官や市職員が出動して、何日間もシカの動向を見守り続けた。
■人や車に慣れているシカ
記者がシカに遭遇したのは、3月22日の午前10時30分ごろだった。
「河川敷あたりにシカがいるらしい」
と知り合いから連絡をもらって都島区内の公園に行くと、パトカーが赤色灯をつけて止まっていて、警察官や大阪市職員が見守る中、河川敷にある公園の茂みにシカ1頭が横たわって体を休めていた。散歩コースになっている公園であり、その日は日曜日だったこともあって、次第に人が集まり、100人ほどの人たちが遠巻きにシカを見守る形になった。
1時間ほどたった昼過ぎ、シカが立ち上がって歩き出した。すると人々も動き出し、近寄ってスマートフォンで撮影したり、動画で「実況中継」を始めたりする人たちも出現。ギャラリーはますます膨らんでいった。警察官が「危ないから離れて」と距離をとるよう大声を出し、市職員はシカが公園を出て幹線道路に出ないよう手を広げて誘導するなど、ちょっとした騒動になった。シカはというと、人が集まって歓声をあげたり、シャッター音を立ててカメラ撮影したり、近くで救急車がサイレンを鳴らして走ったりしても、まったく動じる気配がない。集まった人からは、
「奈良公園にいた鹿じゃないのか。人や車に慣れている」
と感心するような声があがっていた。そんな “攻防”は夜まで続き、シカはその日の夜は公園内にとどまったようだ。

■府警の施設に自ら“出頭”
翌23日、シカは公園を出て徘徊しはじめ、大阪拘置所(都島区)近くにあるマンションの植栽などを歩き回った。24日は都島区、城東区と移動を続けて、最終的に城東区内の大阪府警関連施設に入っていった。
「シカをおびき寄せたわけでもなく、勝手に入っていった。ただ公的な施設なのでまたここから外に出れば追いかけっこになってしまう。すぐに門を閉めてシカが外に出ないようにした。夜を徹して、様子を見守った」(大阪府警関係者)
そして、25日、大阪市の横山英幸市長は自身のXに、
〈大阪市内にいらっしゃった鹿の件について、現在公的機関の敷地内に滞在し安全確保が可能な状況となったため捕獲対応に移ります〉
とポスト(投稿)して、その直後に、
〈とポストしてる間に保護完了したとの一報がありました(13:40現在)いまのところ個体は無事とのこと。ひとまず大阪市内の一時保護施設に移ります〉
と続けてポスト。捕獲されたシカは大阪市動物管理センターに移され、受け入れ先が決まるまで保護されるという。
横山市長は23日の段階では、
〈奈良の山下知事と協議し奈良公園に受け入れ可能か奈良県と大阪市で協議しています〉
などとポストし、奈良から大阪に迷い込んできたシカなら、奈良公園に戻せばいいように記していたが、これに対して奈良県の山下真知事は25日の会見でこう話した。
「(奈良公園などの保護対象エリアから)いったん出たシカについては文化財保護法上の天然記念物ではない。イノシシやクマと同様の野生生物ということになる。大阪府下で捕獲されたシカについては、大阪府下で放獣してくださいとお願いすることになる」
シカを押し付け合っているようなやり取りだ。維新の大阪市議はこう話す。
「横山市長も山下知事も同じ維新ですので、気軽に『奈良公園で』と頼めると思っていたのでしょう。山下知事は弁護士でもあり、冷静沈着なタイプ。維新の本拠地大阪と、隣の奈良では微妙な距離感があって、今後もめごとにならなければいいが」
また、山下知事の長年の支援者はこんな話をする。
「大阪の維新から見れば、『なんで受け入れてくれないんや』と感じる人もいるでしょう。でも、山下知事は2023年の知事選で維新に擁立されて当選したが、その前は市民団体をバックに、無所属で生駒市長になり、奈良市長選や知事選に出馬してきた人。政治姿勢はちょっと違うところもあるので、大阪の維新から言われても原則論で押し切る、そういう面が出たのかもしれません」
シカへの対応が、政治的な確執を生みかねない状況になっている。

■維新の創設者が横山市長らを批判
さらに、警察官や市職員を大量動員しながらシカを見守る状況が続いていたことにかみついたのが、維新の創設者である橋下徹氏。25日の関西テレビ系のテレビ番組に出演して、
「維新の政治力のなさ。情けない」
と発言。大阪の吉村洋文知事、横山市長、奈良の山下知事が維新の政治家であることに触れて、
「みんな維新の会のグループなんですから、政治的にパンと決めればいい」
「見るしかないなんて、何の判断もしなかったことによって、大混乱になった」
と横山市長らの対応を批判した。

■奈良公園のシカは過密状態
大阪に迷い込んだ1頭のシカで大騒動だが、奈良公園周辺ではシカが歩き回るのは当たり前だ。公園に隣接する奈良地裁の敷地にもシカは自由に出入りしていて、安倍晋三元首相銃撃事件の公判があって厳重警戒態勢だったときでも、シカは裁判所内で自由に草をはんでいた。
過去にも奈良公園のシカが遠方で発見されることはあった。2010年1月5日の朝日新聞はこう報じている。
〈(奈良のシカが)記録上、最も遠方で見つかった例は大阪市。1951年に御堂筋で進駐軍に見つかり、天王寺動物園に保護された。角きりの跡があったため、奈良公園の鹿と判明したとか。78年には大阪府東大阪市の児童公園で2歳の雄鹿が捕獲された〉
奈良公園のシカは増加傾向で、保護団体「奈良の鹿愛護会」は昨年、公園内のシカは過去最多の1465頭だったと発表。今回のシカ騒動では「公園内のシカは過密状態で、他の地域に出ていってもおかしくない」とメディアにコメントしている。
今後も大阪市などにシカが迷い込んで、騒動を引き起こしそうだ。
(AERA編集部・今西憲之)
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