愛子さまの「桃花色」のお着物は300年前の伝統色 匠の技が光る京友禅 「八橋」や「染疋田」の美しさ

 3月は卒業の季節。2年前の春、天皇、皇后両陛下の長女、愛子さまは学習院大学を卒業した。その際にお召しだったのが、可憐な桃花色の本振袖だ。2年前は袴を着用されていたが、この1月のご一家での大相撲観戦では、はじめて全体の美しい柄行を目にすることができた。愛子さまの京友禅には、300年前の和の伝統色が用いられているという。

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 この日、両国国技館は桃の花が咲いたような、明るさに包まれた。

 白菫色の訪問着をお召しの皇后雅子さまを、優しい表情で見つめるのは、雅子さまと同色のネクタイをしめた天皇陛下だ。

 そして、隣には桃花色の着物でほほ笑む長女、愛子さまの姿があった。

 2年前の春、学習院大学の卒業式でお召しの京友禅の本振袖だった。そのときは紺色の袴で隠れていた京友禅ならではの品のよい色合いと見事な柄行を、この日は目にすることができた。

 愛子さまの和装の品の良さは、300年前の伝統技法をしっかりと受け継いだ職人たちの確かな腕によるところも大きい。

 桃花色の京友禅。なかでも見事なのは、斜めに配された染疋田(そめびった)の文様だ。疋田鹿の子(かのこ)の四角形を、手で描き染めつけをしてゆく技法だ。

 工程は、とても繊細。まずは、疋田の中心にある点点(てんてん)の柄を入れる作業である。

 染料をつけた型紙を生地に摺(す)り、点点の柄を染めつける。次に、そのひとつひとつの点に定規をあてながら、職人が筆で疋田の四角い線を描いてゆく。

「手書き特有の歪みが、疋田文様の柔らかな表情を生み出すのです」

 そう話すのは、呉服に詳しい人物。立体感のある絞り染とは異なり、配置に自由が効くため、より複雑な文様に組み込まれることも多い。

 

 先の呉服に詳しい人物によれば、愛子さまの着物の品の良さは、職人の技とともに、用いる材料の質の高さに裏打ちされたものだと話す。

 桃の花のような美しい淡赤色である「桃花色」を基調に、淡い梅の花にすこし紫がかった「紅梅色」、「撫子色」、「牡丹色」、「つつじ色」など、美しい日本の伝統色が用いられている。

 これは、300年前の京友禅の発色がかなり忠実に守られているという。

「一部、化学染料を用いながらも染匠が伝統的な染の技法を生かし、洗練された色合いを生み出してゆく。品の良さとともに厚みのある色に仕上がっているのは、日本の伝統色の奥深さと職人の技術の確かさゆえです」(前出の人物)

 卒業式では袴で隠れていた、振袖全体の柄行も目にすることができた。

 たとえば、帯より下の前身頃には、池などに狭い板を架けた橋を表す「八橋(やつはし)」や車輪をモチーフにした源氏車(げんじぐるま)、牛車、扇面の地紙など、『源氏物語』や『伊勢物語』などの雅な世界観を連想させる文様が描かれている。

 なかでも手が込んでいるのが、描疋田や金箔などでデザイン化された八橋の柄行だ。

 たとえば白い八橋は、貝殻を粉末にした胡粉(ごふん)という顔料を用いている。胡粉の八橋の上には、波や波間に扇や桜が浮かぶ情景が金色で描かれている。これは、「塗り切り」や「金小紋箔」という技法によるもので、細部まで妥協のない匠の技。古典柄ながらいまの時代にふさわしく洗練された柄行は、実に優美。

 素材の質の高さも見事だ。たとえば、金で表現された八橋は、純度98%の五毛色(ごもうしょく)の金箔が用いられている。

 また、前身頃や袖の裾には、ぷっくりとした丸みが可愛らしい橘の花と葉が描かれている。これは八橋にも用いた胡粉で、文様のひとつひとつが異なる伝統技法で表現されており、まさに匠の技の結晶といえる。

 愛子さまの着物姿には、なんともいえない品がある。それは、日本の伝統を大切に思う皇女が身に着けているからこそ、なのかもしれない。

(AERA編集部・永井貴子)

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