検証:米国とイスラエルはイランの軍事施設をどの程度破壊したのか

連合軍の攻撃は「超現代戦」と言えるものか, 攻撃開始から4週間の結果と今後の注目点, 連合軍の戦果と残存するイランの反撃力, イランは戦争を継続できるのか

米空軍のステルス戦闘機「F-35AライトニングⅡ」(3月5日英国での訓練飛行、米空軍のサイトより)

連合軍の攻撃は「超現代戦」と言えるものか

 私はウクライナ戦争をこれまで見ていて、「ウクライナ戦争が現代戦の実態だ」と認識していた。

 ところが、2月28日に開始された米国・イスラエルの連合軍(以下連合軍)によるイランへの攻撃、特に空中からの攻撃は、ロシアの航空攻撃・ミサイル攻撃をはるかに超える。

 戦闘開始から今までにイラン空軍の攻撃を受け撃墜された連合軍機はない(友軍誤射を除く)。

 今回の戦いは、一方的に破壊するステルス立体攻撃戦であり、今まで見たことがない現代戦を超える現代戦、つまり「超現代戦」と表現したい。

 これまで、イラン軍は精鋭で恐れられていた。

 だが、連合軍はイラン最高指導者ハメネイ氏などイランの指導者たちの居場所をリアルタイムで掴み、ステルス機で接近し、ピンポイントに数十発のミサイルを同時に撃ち込み完全に破壊して殺害した。

 また、活動中あるいは地下に保管されているミサイル・自爆型無人機・防空兵器、ペルシャ湾・カスピ海に面する海軍艦艇をことごとく破壊しているのである。

 一方、イランの防空兵器は連合軍のステルス機のミサイル攻撃を止められていない。

 連合軍においては、最新のステルス性能とともに戦闘と情報のシステムなどが近代化され、圧倒的な軍事力で、イランの指導者・軍司令官を一方的に殺害しているのが実態である。

 また、連合軍のイランの動きを克明に把握できる情報収集能力と処理、戦闘機・爆撃機へのリアルタイムの情報提供、そして統合攻撃戦闘システムによる攻撃の連携・・・。これらの優位性が、連合軍の戦果につながっているようだ。

 今回の記事は、主に米国戦争研究所「イラン・アップデート特別報告」、米国中央軍発表、Foxニュース、CNN、ウクライナ軍参謀本部発表を参考にして記述したものである。

攻撃開始から4週間の結果と今後の注目点

 連合軍の作戦開始から約4週間が経過したが、ミサイル攻撃は正確で、しかも大量のミサイルが同時に撃ち込まれている。

「攻撃の強度」を緩めず、宗教指導者や革命防衛隊・治安機関のトップらを殺害し続け、治安機関・革命防衛隊、特に防空ミサイル・自爆型無人機(UAV)・弾道ミサイル等を破壊し続けている。

 だが、この作戦は戦争という特性上、米軍の作戦結果を秘匿する必要があるため情報公開が少なく断片的であり、各種要素が複雑に絡み合っている。このため、戦果や残存するイラン軍の実態は不透明なままである。

 連合軍は、イランの最高指導者ハメネイ氏や軍事作戦を担う国防省とその関連施設を、空爆開始と同時に爆破した。

 そして、この4週間、最高指揮統帥機能、国と軍の指揮機能、国民の反乱を防ぐ治安機関、米国等への反撃可能な防空兵器や自爆型無人機部隊、海軍指揮所やあらゆる艦艇、核関連施設を破壊してきた。

 その結果、イランの指導者・軍指揮官約40人が殺害され、国家の機能が混乱しつつあり、イランのミサイルや自爆型無人機による反撃は、段階的に縮小傾向にある。

 そこで、この戦争について注目したい以下の点について考察する。

①連合軍は何を目標として攻撃してきたか

②イラン軍はどれほどの損害を受けているのか

③イラン軍が今後も戦いを継続できる要素

④イラン軍は今後何をするのか

⑤イラン政権の今後の動向に何が影響するのか

連合軍の戦果と残存するイランの反撃力

 連合軍の作戦の実態を見ると、その攻撃目標と狙いが明白である。連合軍の攻撃目標、戦果、イラン軍の損害について、攻撃目標別に解説する。

(1)イラン国家の強硬派の指導者層を爆殺し、穏健指導者層に変える

 連合軍は、作戦開始からイラン最高指導者とそれを支える指導者や軍指揮官などの要人を殺害してきた。

 その後も、政府への抗議活動を弾圧するイラン強硬派の革命防衛隊司令官、軍参謀総長、国防大臣、情報大臣、民兵指導者、安全保障会議書記(抗議活動鎮圧責任者)などの指導者・軍指揮官を探し出しては、殺害している。

 その結果、イラン強硬派の力は確実に削がれてきている。それでも強硬派の指導者は残存しているのが現実だ。

 米国は、引き続き米国に反感を持つ指導者層は殺害し、反米感情が少ない交渉相手となる人物は残していくのではなかろうか。

 指導者をすべて抹消してしまうと、現政権打倒後に国を運営する能力が失われる危険性があるので、交渉可能な、米国が認めやすい人物は残すと考えられる。

(2)強権的指導者層を支える革命防衛隊や治安機関を破壊する

 連合軍は作戦の当初からこれまで、抗議活動を取り締まるイランの治安機関の基地(施設)をピンポイントで破壊し続けている。

 この結果、治安機関の総本部、地方本部、地方の支所の施設の多くが破壊された。

 治安機関の要員は、爆撃当初には多数殺害されたようだが、次第にこれらの施設や建物を離れ、公共施設などを待機場所として避難しているようだ。

 

 連合軍は、イラン治安機関に協力して、市民、特にスパイや現政権に抗議する人々の検閲を行っている会社も破壊している。

 これら治安機関や協力する企業の破壊で、攻撃開始前のような抗議活動を抑え込む力はなくなっているとみられる。

 今後注目すべきは、連合軍が治安機関組織の末端部隊まで破壊できるかどうかだ。それが、強硬なイラン政権を存続させるか、反米政策を強調しない政権になるかのカギとなるだろう。

(3)連合軍の攻撃作戦を妨害する防空兵器を破壊する

 イランは、長距離防空ミサイルではロシア製の「SA-5」(射程約250キロ)、「S-300」(射程約200キロ)を、中距離ではロシア製「SA-11 Buk」(射程約30キロ)、中国製の「紅旗2(HQ-2)」(ロシア製「SA-2」同等、射程約30キロ)、その他ロシア製の短距離ミサイルを保有している。

 イランの防空ミサイルの捜索・捕捉レーダーが電波を発すると、連合軍の電子戦機に探知され、位置が特定されて連合軍のミサイルが飛んでくる。

 連合軍はこれまでに、イランの防空兵器の約85%を破壊したと発表している。

 連合軍機は、友軍からの誤射を除いて、上記の防空兵器と戦闘機を保有するイラン空軍に撃墜されてはいない。これほどまでに完璧に勝利する空中戦は歴史上ないのではなかろうか。

 とはいえ、すべての連合軍機は、イランの防空兵器が少しでも残存していれば、機種に応じて飛行範囲を規定し、作戦を実施しなければならない。

 一方、イランの空軍基地そのものと軍用機は地上で破壊されている。空軍機は飛び立つことさえできず、連合軍機を迎え撃つ能力が全くないのである。

(4)イランが反撃に使える唯一のミサイル・自爆型無人機を破壊する

 連合軍は作戦当初から、イランが中東の米軍の基地やイスラエルの国土を攻撃するミサイルや自爆型無人機の基地を爆撃し続けている。

 この攻撃でイスラエル軍は3月1日までの2日間でイランが保有するミサイルの約半数を破壊したと発表した。その後も、破壊を継続している。

 イランは連合軍の攻撃を受けた後もミサイルと自爆型無人機の攻撃を継続している。

 とはいえ、イランがUAE(アラブ首長国連邦)、サウジアラビア、クウェート、バーレーンに行ったミサイルと自爆型無人機攻撃の推移は、下図で示したように、当初の2日間だけは特別に多かったものの、その後は急激に減少した。

 具体的には、2月28日と3月1日の2日間のミサイル攻撃が約510発、自爆型無人機攻撃が約670機であり、3月21日・22日と当初の2日間を比較すると、ミサイルは約95%、自爆型無人機は約90%減少している。

図1 イランによるミサイル・自爆型無人機攻撃数の推移

連合軍の攻撃は「超現代戦」と言えるものか, 攻撃開始から4週間の結果と今後の注目点, 連合軍の戦果と残存するイランの反撃力, イランは戦争を継続できるのか

出典:米国戦争研究所「イラン・アップデート特別報告」を筆者がグラフにしたもの

 攻撃対象は、UAE、サウジ、クウェート、バーレーンの4か国を合計したもので、イスラエルについては、情報が少ないために算定していない。

 イランは最近の1週間の平均では、1日当たりミサイルが約15発、自爆型無人機が約80機である。

 イスラエル情報によると、イランが保有する発射機の数量は470基であり、そのうちの約330基(約70%)が破壊されていて、残りが約140基(約30%)あると推測されている。

 イランの基地が爆撃を受け破壊され続け、攻撃開始から1か月経っているにもかかわらずこれだけの数を日々発射可能なのは、イランには隠して保管しているミサイルや自爆型無人機があるということを示している。

 連合軍は、早急に破壊しなければならない目標を攻撃した後で、ミサイル・自爆型無人機の増産を阻止するために、3月3日頃からはイランが兵器増産を進める軍事産業基盤、兵器研究機関を破壊し始め、現在も続けている。

 同時に、連合軍はミサイルや自爆型無人機の保管場所を引き続き捜索して、攻撃を続けるだろう。

 イラン側では、ミサイル等の攻撃は当面、中央の指示に関係なく、強硬派の小部隊による攻撃は継続するだろうが、攻撃回数はさらに減少するだろう。しかし、なくなることはないだろう。

(5)ホルムズ海峡の通峡を妨害する海軍艦艇を破壊する

 連合軍は、発見したイラン海軍の艦艇のほとんどを破壊している。主要な艦艇から小型の高速艇までだ。

 注目に値するのは、ペルシャ湾のタンカーなどに自爆攻撃可能な小船までも破壊していることだ。しかし、民間の小型船まで破壊することはできていないようである。

 今後は、現状が続く場合も停戦となっても、革命防衛隊の強硬派の一部はイラン中央政府の指示に従わず、民間の船舶を使って爆弾を搭載して自爆攻撃することが予想される。

 また、対艦ミサイルを使って、通峡するタンカー等をゲリラ的に攻撃する可能性も十分にある。

 この行動のすべてを事前に止めることは不可能に近い。そのため、連合軍は、これからも偵察用無人機を使って常時監視を行い、新たに投入された「A-10」攻撃機や自爆型無人機で攻撃できる態勢を取って対応するだろう。

 ホルムズ海峡を通峡するタンカーなどにとって懸念されるのは、イランが中国製の地対艦ミサイルを多数保有していることだ。

 連合軍はイランの海軍基地と特に弾薬庫を破壊しているが、この対艦ミサイルをどの程度破壊できたのかという情報は全くなく、今後の不安要素として残っている。

(6)ようやく現在、革命防衛隊地上軍への攻撃に重点が移る

 イラン革命防衛隊の地上軍は、32の州に配備されていて、39個の師団(約1万人の部隊)・旅団(約5000人の部隊)を保有している。

 連合軍は、3月22・23日にイラン革命防衛隊の地上軍に対して、本格的に爆撃を開始した。この2日間に9個の師団・旅団が爆撃された。

図2 イラン革命防衛隊地上軍の配備と連合軍に攻撃を受けた部隊

連合軍の攻撃は「超現代戦」と言えるものか, 攻撃開始から4週間の結果と今後の注目点, 連合軍の戦果と残存するイランの反撃力, イランは戦争を継続できるのか

左:イラン北西部(3月22日)、右:ペルシャ湾側(3月23日)。出典:米国戦争研究所「イラン・アップデート特別報告」を抜粋したもの

 これまでイラン革命防衛隊の海軍・空軍はほとんど爆撃されて、おそらく壊滅状態にある。残存しているのは前述の地上軍部隊である。

 この地上部隊が健在していれば、イランの強硬派は権力を維持できるだろう。逆に、治安機関とともに地上部隊が破壊されてしまえば、強硬派の主張を押し通すことができなくなるとみられる。

 連合軍が革命防衛隊地上軍を壊滅すれば、米国はイランとの交渉を進め、停戦協議が進展する可能性が高くなる。

 この地上軍への攻撃が、今後の交渉の進展を左右すると言っていいだろう。

(7)ロシアとイランの技術支援を阻止する

 連合軍は、ロシアによるイランへの兵器やその技術支援を止めたいと考えている。もしも、ロシアがイランを永続的に支援することになれば、イランのミサイルや自爆型無人機攻撃が長期間継続する可能性があるからだ。

 ウクライナは、自爆型無人機やその関連部品をロシアに提供させないために、カスピ海に面するロシアのアストラハンに停泊していたイランの貨物船(自爆型無人機を輸送していた)を自爆型無人機で攻撃したことがある。

 今回は反対に、連合軍はロシアからのイラン支援を止めるために、カスピ海の海上交通路(ロシアのアストラハンとイランのバンダレ・アンザリー港)を止める必要がある。

 そこで、イスラエル軍は、イランとロシアが貿易に利用しているカスピ海のバンダレ・アンザリー港を爆撃し、海軍司令部と数十隻の艦船を爆撃した。

 ウクライナが連合軍のイラン攻撃に間接的に協力していることがある。

 それは、ウクライナ参謀本部の情報によれば、イラン攻撃が始まってから約10日後の3月10日、英国製のストームシャドウでロシア・ブリャンスクの軍事工場(高精度兵器の生産ラインの重要拠点)をウクライナが破壊したことだ。

 英国は、ウクライナが英国製のストームシャドウでロシア国内を攻撃することを一時的に許可していたこともあったが、最近は控えさせている。

 ところが、この時期に、ウクライナがなぜかストームシャドウを使って攻撃したのだ。

 このことは、英国がこのミサイルでロシア国内、それも重要な軍事工場を破壊することを許可したと考えるのが妥当だろう。

 ストームシャドウの使用を許可し、ロシアの重要な軍事工場を破壊したのは、ウクライナの一存ではなく、米国が背後でウクライナに実行させた可能性も考えられないこともない。

 連合軍を間接的に支援する国々にとって、この時期に、弾道ミサイルなどに搭載する電子機器や部品を製造していたこの工場を確実に破壊しておく必要があったのであろう。

 ロシアには大きな痛みだったようだ。その証拠に、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が強く反発したのだ。

イランは戦争を継続できるのか

 これまで、イラン強硬派の指導者や軍司令官は、約40人が殺害された。それでも、強硬派の後継者たちが国家の統制を行っているようだ。

 とはいえ、強硬派の指導者たちは、自分が発見されれば、空爆されて殺害されるという心理的な恐怖を抱えているだろう。

 イランは、連合軍に対してほとんど反撃ができていないことから、戦争が長引けば長引くほど、革命防衛隊の地上軍は次第にすり潰されていくだろう。

 イランは、国を維持するために必要な軍事力である革命防衛隊の地上軍を温存するか、それとも、その戦力がすり潰されていくまで戦うのかという判断が迫られている。

 連合軍や米国に協力する中東諸国に対する反撃が可能な兵器は、ミサイルや自爆型無人機であるが、約70%が破壊された。

 連合軍は、継続して保管されているこれらの兵器、製造施設を破壊し、それらの発射を制限している。海軍・空軍基地はほとんど破壊した。

 だが、民間船舶を使った機雷敷設、ホルムズ海峡を通峡する艦艇への対艦ミサイル攻撃、無人艇による自爆攻撃、対戦車ロケットを使ったゲリラ的な攻撃などは、いつでも実施できる能力がある。

 ゲリラ的攻撃は、米国とイランとで停戦協定が成立したとしても、不満を持つ革命防衛隊の兵士が、長期間にわたり実行する可能性は高い。

 米国とイランとの協議が進み、停戦できるかどうかは、革命防衛隊の地上軍部隊がどれほど破壊できるかにかかっている。

 革命防衛隊地上軍への攻撃は、主に3月22日から始まったが、いまだに主力は残存していると考えられる。

 連合軍の革命防衛隊地上軍の破壊の程度が、今後の停戦協議に大きく影響するものと考えられる。

関連記事

イスラエル軍と米軍によるイラン攻撃の下地を作ったウクライナ戦争

最新型駆逐艦のCIWSを急遽取り替えた北朝鮮、金正恩が抱く不安と恐れ

米国とロシアのヘリボーン作戦比較:ロシアはなぜキーウで失敗し米国はカラカスで成功したか