低迷が続くヤクルトと中日が明暗を分けた理由 他球団から「低迷する戦力ではない」と指摘されるのは

 昨年は最下位に沈み、3年連続5位以下のヤクルト。昨年は4位で、5年連続Bクラスの中日。低迷が続くセ・リーグの2球団だが、開幕の3カードを終えた時点で明暗がくっきりと分かれた。

  *  *  *

 快進撃を見せているのがヤクルトだ。11試合を終えて8勝3敗で首位。昨年の覇者・阪神と4月7日から敵地・甲子園で3試合を戦い、1勝2敗と負け越したが、粘り強い戦いが印象的だった。8日の試合では初回に2点を奪われながら、6投手の継投でその後は失点を許さず、逆転勝ちしている。

「ヤクルトの戦いを見ると、選手の役割分担が明確になっている。先発は5、6回をゲームメークすることに集中して、その後は継投策に入る。リリーバーは質、量共に豊富なので、終盤以降に自信を持って戦っているように見えます。打線もサンタナ、オスナは決して好調ではありませんが、野手全体につなぐ意識が共有されている。ポイントは5番を打つ岩田幸宏ですね。現在リーグトップの5盗塁。機動力でチャンスメークし、走者を進める役割をしています。8番に投手を置き、打線のつながりに工夫を感じます。池山隆寛監督は明るさを前面に出しますが、野球は緻密ですよ」(スポーツ紙デスク)

 一方、中日は3勝8敗と開幕ダッシュに失敗し、最下位。ヤクルトと明暗を分けた大きな要因は、救援陣の違いだ。ヤクルトが12球団トップの救援防御率1.82なのに対し、中日は12球団ワーストの6.67。守護神の松山晋也が左脇腹の筋挫傷、セットアッパーの清水達也が腰痛で開幕に間に合わなかったことで「勝利の方程式」の構築ができなかった。開幕戦の広島戦で、9回に4点のリードを守れず延長戦の末に逆転負けを喫した試合が象徴的だ。

 中日は打線もつながりを欠き、ちぐはぐさが目立つ。チーム打率.255は阪神に次ぐリーグ2位だが、36得点はリーグ4位。一方のヤクルトがリーグ4位のチーム打率.242ながら、リーグ2位の47得点を奪っているのと対照的だ。

■「カリステが出続けてびっくりしました」

 中日OBはベンチの采配で気になる点があるという。

「ヤクルトのヘッドコーチだった嶋基宏氏をヘッドコーチに招聘しましたが、昨年と比較して戦略面で変化が見られない。継投策のタイミングが遅いし、守備固めや代走の起用法も首をかしげる采配が目立ちます。コーチ陣の意見を反映させて井上一樹監督が決断を下しているようですが、嶋ヘッドコーチが遠慮しているように映る。チームが上昇気流に乗れていないからそう感じるだけなのかもしれませんが、ベンチワークが変わらなければ白星を積み重ねられないのは必然です」

 選手のコンディション管理も気になる。開幕戦では9回に登板して4失点を喫したアブレウが登板中にぎっくり腰を発症していたが、首脳陣は異変を感じつつも続投させていた。4月8日のDeNA戦でもアクシデントがあった。右翼を守るオルランド・カリステが5回1死二、三塁の守備中、突然右膝をグラウンドにつき、体調不良を訴えた。守備位置で嘔吐したようで、平田良介外野守備走塁コーチやトレーナーらが駆けつけ、カリステは苦しそうな表情で歩いてベンチに戻ったが、再びグラウンドに姿を現して出場を続けた。

 報道によると、井上監督は試合後、「(ベンチに)帰ってきてうがいしたら、大丈夫って言うから行かせた。意地もあっただろうし」と説明したという。だが、メジャー球団の元トレーナーは「カリステが出続けてびっくりしました。絶対に交代させるべきです」と語気を強める。

「消化器系のトラブルか、心理的なストレスなのか原因は定かではありませんが、突然嘔吐するということは体に異変が起きていることは間違いない。心筋梗塞など重い病気の危険性がゼロとは言えないですし、交代して安静にさせるべきです。ぎっくり腰を発症したまま投げ続けたアブレウもそうですけど、選手は交代したくないので試合出場を志願する。体の異変を察知して即座にストップをかけることは、首脳陣の大事な役割です」

■8年目の根尾がプロ初勝利

 中日には明るい材料もある。松山が4月7日に1軍に昇格。8日のDeNA戦で今季初セーブを挙げた。そしてこの試合では、ドラフト1位で入団した8年目の根尾昂が、プロ初勝利を挙げている。同点の延長10回に登板し、1回を3人でピシャリと抑え、2三振も奪った。11回に味方が勝ち越し、待望の勝利を手にした。

 中日を取材するスポーツ紙記者は「根尾はオープン戦から状態が良かったんです。開幕1軍入りしましたが、あまり登板機会がなくもったいないと感じていました。ここまで2試合連続無失点。制球にバラつきはありますが、今の根尾に求められるのは結果です。救援陣が不安定なのでチャンスは十分にあります」と期待を込める。

 中日は戦前の下馬評が高かった。昨年、圧倒的な強さでリーグを制した阪神に、中日は13勝12敗と唯一勝ち越した。今年はメジャー通算164本塁打をマークしたサノーを獲得。本拠地・バンテリンドームにホームランウイングが設置されたことで球場が狭くなり、課題の得点力向上も期待された。野球評論家の中には、首位争いを予想する声もあった。ただし、前出のスポーツ紙記者は「阪神以外の5球団の戦力差が少ないことが順位予想に影響していると思います。2年連続で借金15ですし、野球の質が変わらなければ上位浮上は厳しいと思います」とシビアな見方を示す。

 他球団は中日をどう見ているか。

「下位に低迷する戦力ではありません。リードオフマンの岡林勇希が右太もも裏の肉離れで抹消となったのは痛手ですし、投手陣の層が薄いことが指摘されていますが、それでも今のセ・リーグでAクラスに食い込む力は十分に持っている。高橋宏斗、大野雄大、柳裕也、金丸夢斗と2ケタ勝利を挙げる能力を持った投手が4人いて、野手陣も細川成也、福永裕基、田中幹也、村松開人など核になる選手たちがいる。まだシーズンは始まったばかり。勝負はこれからです」(セ・リーグ球団のスコアラー)

 セ・リーグでは阪神の連覇を予想する声が多いが、中日の戦力が整い、ヤクルトも勢いを維持すれば、予想外の展開もあり得るだろう。中日は10日から本拠地・バンテリンドームで阪神を迎え撃つ。相手は難敵だが、ここで結果を出せば、一気に流れを変えられるかもしれない。

(ライター・今川秀悟)

・【写真】ドラフト1位で中日に入団、プロ8年目で待望の初勝利をあげたのはこの投手

・【写真】イケヤマジック恐るべし! 9回2死からサヨナラ勝利の瞬間

・井上監督の「不可解な発言」に批判の声 下馬評高かった中日が開幕3連敗の不安なスタート