作家・朝井リョウ、本屋大賞受賞 “ファンダム経済”を舞台に「人が何に突き動かされるのか」
全国の書店員が選んだいちばん!売りたい本を決める『本屋大賞』の授賞式が9日に都内で行われ、『桐島、部活やめるってよ』(2010)など、ヒット作で知られる朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』が大賞に選ばれました。
■『本屋大賞』とは

本屋大賞の授賞式に出席した朝井リョウさん 日テレNEWS NNN
『本屋大賞』の特徴は、“書店員の投票”で大賞作品が選ばれるということ。書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。
2004年の第1回は、小川洋子さんの『博士の愛した数式』が大賞を受賞。これまでに湊かなえさんの『告白』や、辻村深月さんの『かがみの孤城』などが選ばれ、その後多くの作品が映像化されるなど注目の文学賞です。
■朝井リョウ 過去ノミネート含め、3作共通のテーマは“生きる推進力”

本屋大賞で『イン・ザ・メガチャーチ』が大賞に輝いた、朝井リョウさん 日テレNEWS NNN
23回目を迎える今年は、これまでに『本屋大賞』で作品が大賞に選ばれた経験のある、伊坂幸太郎さんや、湊かなえさんら、ヒット作を生み出してきた作家の話題作がノミネート。10作品の中から朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』が大賞に選ばれました。
作品が大賞に選ばれ登壇した朝井さんは「この度は第23回本屋大賞、『イン・ザ・メガチャーチ』いただきまして、本当にありがとうございます」と感謝を伝えました。
朝井さんは「私、今回3回目のノミネートをしていただいて受賞ということになったんですけれども、ノミネートしていただいた作品が『正欲』(2021)、『生殖記』(2024)、そして今回の『イン・ザ・メガチャーチ』、この3作になります。この3作は、“ある共通のテーマ”を実は描いているような3作品だと思っています。その“共通のテーマ”というのが一言で申し上げますと、“生きる推進力”というものです。もう少し言葉を尽くして説明いたしますと、生と死が隣同士に並んでいたとして、生の方を選び取る理由であったりとか、きっかけみたいなものを探りたくて書いた3作ということになっております」と、『イン・ザ・メガチャーチ』は『本屋大賞』に過去ノミネートされた2作と“共通のテーマ”があったことを明かしました。
さらに、3作品を通して“人間”というよりは、“構造・現象”を書きたかったという、浅井さんは「“生きる推進力”を書くということになりますと、私の場合、生きている中で感じるポジティブな感情を描くということには、なかなかならないんです。私の場合、“生きる推進力”を探る作業というのは、この場所に立っておりますが、共同体の構造であったりとか、仕組みであったりとか、そういうことを考えるということが一番作業としては近いのかなというふうに考えています」と、“生きる推進力”についての考え方を語りました。
■大賞作品『イン・ザ・メガチャーチ』 気になる内容は?

『イン・ザ・メガチャーチ』著・朝井リョウ(日経BP 日本経済新聞出版) 日テレNEWS NNN
小説『イン・ザ・メガチャーチ』は、世代や立場の異なる3人が語り手。ファンダム経済を舞台に「今の時代、人を動かすものは何なのか」に迫った作品です。
【あらすじ】
あるアイドルグループの運営に参画することになった、家族と離れて暮らす男。内向的で繊細な気質ゆえ積み重なる心労を癒やしたい大学生。仲間と楽しく舞台俳優を応援していたが、とある報道で状況が一変する女。ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側。世代も立場も異なる3つの視点から、人の心を動かす“物語”の功罪をあぶり出す。好きなアイドルやキャラクターなどを応援する、いわゆる“推し活”に焦点を当てています。
※ファンダムとは、特定の人物や作品等のファン集団のこと。また、“ファンダム経済”とはそれによって生まれる経済圏のことです。
【主な登場人物】
1、久保田慶彦(47)レコード会社に勤務。7年以上前に離婚し、元妻や一人娘・澄香とは離れて暮らしている。過去に洋楽部門で業務を共にした同期から、デビュー間近のアイドルグループ運営への協力を打診される。
2、武藤澄香(19)慶彦の娘。大学生で留学生との交流サークルに所属。最近デビューが決まった男性アイドルのアクリルスタンドを見つけ、やがてそのアイドルが所属するグループに資金、時間、労力を注ぎ始める。
3、隅川絢子(35)契約社員。同じ会社の先輩と俳優・藤見倫太郎を応援。生活は苦しいが、倫太郎を応援している時間と同じ志を持つ仲間の存在が日々の潤いになっている。
■朝井リョウ「人が何に突き動かされるのか」

『イン・ザ・メガチャーチ』について話す朝井さん 日テレNEWS NNN
授賞式を終え、報道陣からの囲み取材では“推し活”に焦点を当てた理由を聞かれました。
朝井さんは「今回は私は“ファンダム経済”と呼ばれるものを舞台に、人が何に突き動かされるのかというものをテーマにしたいと考えていました。それはコロナ禍を経て、人間の行動力というものが、家にいて割と何でもできるようになって食事や仕事も含めて、行動力というものを発揮しなくて良くなったなというのはすごく感じていたんですけど」と話しました。
さらに、「“ファンダム(特定の人物・作品等のファン集団)”と呼ばれる場所には、すごく行動力というものがむしろ膨張しているような印象が、私自身も何かのファンではあるので。そういう場所にいると行動力が、そこにはすごく集中しているなというふうに思っていたので、世間一般で“なくなっているように思えるもの”がすごく集中している場所ということで、何かここに秘密・原動力みたいなものがあるのではないか、ということでテーマに据えました。」と、作品のテーマ性を明かしました。
また、朝井さんは今回の授賞式に“ラベンダー色”の髪色で臨んだ理由について、本作の中で答え合わせができるといい「探っていただきたい」と話しました。
■作家・朝井リョウ プロフィル

作家・朝井リョウさん 日テレNEWS NNN
1989年に岐阜県で生まれた作家・朝井リョウさん。2009年に『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビューを飾りました。その後、『何者』で直木賞、『正欲』で柴田錬三郎賞を受賞。他にも、『スペードの3』や『スター』など、多くの作品を手がけています。