外国籍の子ども「日本に来たら、ばかになっちゃった…」 「日本語教育」支援の重要性と「人手不足」というシビアな現実

家族を帯同して日本で働く外国人が増えたことに伴い、外国籍の子どもも増加している。だが、日本語が十分に理解できず、学習や学校生活に悩みを抱えるケースは少なくない。
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■「日本語」がわからなければ…
1+2+3という計算式であれば、解くことができる。
けれども、「たかしくんはミカンを1個持っていて、お母さんから2つ、おばさんから3つもらいました。たかしくんが持っているミカンは全部でいくつですか」と問われた場合、日本語がわからなければ、問題を解くことはできない――。
こうした言葉の壁に、悩む子どもたちがいる。
東京都台東区で日本語教育や多文化共生のコーディネーターを務める山藤弘子さんはこう指摘する。
「本来は算数が得意教科だとしても、日本語の文章が理解できなければ、簡単な足し算さえ解くことはかないません。度重なれば、勉強に対する自信を失ってしまうこともあります」
■「日本に来たら、ばかになっちゃった」
本国では解けていた問題が、日本では解けない――。
「日本に来たら、ばかになっちゃった…」
そう自嘲気味に、あるいは悔しそうに話す外国籍の子どもは「少なくない」という。それは決して能力の問題ではなく、言葉という道具を持たないがゆえに、持てる力を発揮できないもどかしさの現れだ。
台東区の総人口に占める外国人の割合は9.4%(25年1月1日時点)。山藤さんによると、新宿区(13.6%)や豊島区(12.3%)とは異なり、入れ替わりが激しい留学生よりも、地域に根を張って暮らす世帯が多いという。「10年ほど前から1クラス30人のうち、6、7人が外国人」(山藤さん)という小学校もあるそうだ。
■教室に居場所がない
山藤さんは地域に暮らす外国人の子どもたちから学校生活の悩みを聞いてきた。
「多いのは、日本語が理解できないという悩み。授業中も休み時間も言葉がわからず、『つらい』といいます。高学年では『教室に居場所がない』と目に涙をためて訴える子もいます。自分を傷つけたくなるほど精神的に追い詰められてしまう子どもたちもいます」(同)
こうした子どもは家庭での口数が減ったり、怒りっぽくなったりする。保護者からは、「子どもの気持ちがわからない」「登校をひどく嫌がる」といった相談を受けるという。
保護者も、学校の担任に相談しようにも日本語での会話が難しいとためらいがちになる。

■教員も「意思の疎通」にストレス
教員も、児童・生徒や保護者と十分な意思の疎通ができず、ストレスを感じているという。教員の数も十分ではない。文部科学省によると、全国の公立の小中学校や高校、特別支援学校の教員の欠員は25年4月の始業日時点で、4317人に上った。前回の21年の調査と比べて1.7倍に増加した。
「現場の先生方から『十分なサポートをしたいという思いはあるが、現状の体制では物理的な限界を超えている』『地域や専門家の力を借りなければ、もはや学校だけでは支えきれない』という、悲鳴にも似た切実な声を聞きます」(同)
■「学習言語」習得が課題だが…
台東区は日本語の習得が不十分な児童・生徒に対して、日本語指導講師を区立小中学校に派遣し、図書室などで個別、または少人数で日本語を教える「取り出し授業」を行っている。
だが、公的に保障されている日本語の指導時間は、生活に慣れるための最低限しかなく、「授業の内容を理解し、学力を伸ばすには全く足りていません」と、山藤さんは指摘する。
学びのうえでの大きな課題が、「学習言語」の習得だ。
「たとえば、『水』『食べもの』といった生活上の言葉は理解できても、『水分』『食物』といった教科書に出てくる『学習言語』になると難易度が大きく上がります。これを習得できなければ、本来能力のある子でも授業から脱落し、自信を喪失してしまいがちです」(同)
学習言語を身につけ、日本人児童と対等に学ぶには、現在の数倍の日本語教育の時間が必要だという。
■時間と人手どう確保するか
しかし、日本語指導の専任教員は全国約1000人と少ない。文科省の「令和6(24)年度 地方公共団体を対象にした地域日本語教育に関する実態調査」では、7割以上の自治体が「日本語指導担当教員・日本語教育専門人材の確保が難しい」と回答した。
慢性的な教員不足が指摘されるなか、今後さらに必要となる日本語教育を実現する時間と人手を、どう確保するのかは大きな課題だ。

■「なぜ区の予算を外国人の子どもに?」
日本人の保護者から、「なぜ外国人の子どもたちに区の予算を使うのか」と問われることもある。
山藤さんは、この問いに対して、「教育はコストではなく、地域の未来を守るための投資だ」と伝えている。
「教育から取り残され、社会的に孤立してしまう子どもを出すことは、本人だけでなく地域社会にとっても大きなリスクとなる。適切な教育によって彼らが力を発揮できれば、将来は地域を支える貴重な担い手、そして納税者となる。子どもたちが社会の一員として自立できる環境を整えることは、私たち住民全員が安心して暮らせる安全な街を維持することに直結する」(山藤さん)
■学習支援が重要な理由
文科省によると、外国籍の子どもに日本の義務教育への就学義務はないが、希望する場合は、国際人権規約なども踏まえ、日本人児童・生徒と同一の教育を受ける機会を保障する、としている。
今年1月、政府は「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を公表した。日本語教育の体制整備や子どもたちへの学習支援を強化するという。適切な教育機会を保障することが、将来にわたる地域の安定と、共生社会の実現に不可欠であると考えられているからだ。
山藤さんは、こう語る。
「外国籍の子どもを公立の小中学校に通わせている保護者には『日本の社会に溶け込みたい』という意思と覚悟を感じます。彼らへの教育に予算を投じることは、私たち住民全員の安全・安心を守り、豊かな地域社会を維持することに確実につながるはずです」
(AERA編集部・米倉昭仁)
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