認知症になってから「生前整理」では遅すぎる。「親の片付け」を先延ばしにすると待ち受ける困った未来とは

認知症になってから「生前整理」では遅すぎる。「親の片付け」を先延ばしにすると待ち受ける困った未来とは
こんにちは。神奈川県在住、フリーライターの小林真由美です。ここ数年のマイテーマは「介護」。取材でも高齢者にまつわること(介護のほか、終活や相続・遺言など)に関わる機会が増えてきましたが、どこか他人事でした。それがしっかり「自分事」になった途端、驚くほど冷静さを失ってしまったのです。
【アラフィフライターの介護体験記】#32
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▶義母を落ち着かるためについた「嘘」とは
「せっかく昨日、整理したのに(涙)」と落胆する気持ちを抑え、とにかく“被害”を最小限に留めたいと思った私。「そうそう、思い出しました! ○○さん(夫)が持って帰ったんです。また持ってきますね。もうすぐお昼の時間だし、いったん片付けましょう」とその場しのぎの嘘をつき、何とかお義母さんの興奮を静めたのでした。
認知症の「記憶障害」や「見当識障害」(※)で、これまでも「○○がなくなった」「○○が盗まれたかもしれない」と言ったことがあったお義母さん。ただ、いずれも直近で使っていたものばかり。明らかに部屋の中にないものを「昨日はあった」という発言に、少しだけ違和感がありました。
(※)認知症の中核症状のひとつ。時間や場所など、自分が置かれている状況が正しく把握できなくなり、「時間→場所→人物」の順番で認識することが難しくなる。
▶義母がパニックになった原因
セーターは本当にあった? 夫の言葉で見えた意外な真相

その晩、夫に一部始終を報告。
夫:「あっ、それさ、もしかして毛糸をセーターだと思い込んでるかも」
私:「ん? どういうこと?」
お義母さんの部屋には、段ボール5~6箱分ほどの趣味のもの(手芸用品など)があり、それらが20㎡ほどの部屋をしっかりと占領しています。中でも大量にあるのが毛糸で、「晩年、お父さんが気に入っていたセーターを編んだ毛糸」がベッドの周辺に散乱していたため、夫が片付けたというのです。(夫よ、勝手な行動は困るって!)
確かにお義母さんが「昨日まであった」と言ったのが、この毛糸だとすれば、納得です。ただ、悩ましいのは「これは毛糸であって、セーターではない」と説明するかどうか。夫と相談した結果、まずはお義母さんに毛糸を見せて落ち着かせ、そのときの状況で決めることに。
ちなみに、(前回の記事でもお話ししましたが)介護ヘルパーの資格を持つ叔母からは、「たとえ家族でも『大事なモノを勝手に動かした』という記憶が残り『物盗られ妄想』に発展するケースもある。物の位置や場所を変えるときは、お義母さんと一緒にしたほうがいい」といったアドバイスがありました。
現在も、お義母さんの認知症は緩やかに進行中ですが、今のところ食事と歯磨きや洗面、排せつは(一応)1人で行うことができます。また、習慣になっている動きや日常的に目にしているものについては、覚えていることが多い印象です。そう考えると、「あるはずの場所に毛糸がない」と混乱したのは、自然なことだったのかもしれません。
▶元気なうちに「生前整理」をする意味
本人・家族の不安が軽減する「生前整理」という備え

数日後、夫とお義母さん宅へ。「ごめん、ごめん。大掃除のときに片付けちゃって」と夫が謝りながら毛糸を見せると、「あったのね! よかった、よかった」とお義母さんは毛糸の束を抱え、うれしそうにしています。
そこで夫は意を決し、「お母さん、あのさ、これ『セーター』じゃなくて、『毛糸』……だよ」と切り出すと、お義母さんは「(当たり前でしょ、という表情で)そうよ。この毛糸でお父さんのセーターを編んだの。今度は皆に編もうと思ってたのに、見当たらないから心配した。あぁ、よかった」
「お義母さん、ちゃんと毛糸だと分かってた!」と安堵する夫と私。単に「お父さんのセーターを編んでいた毛糸」を「お父さんのセーター」と省略しただけだったのか、その瞬間、毛糸をセーターだと思い込み探していたのか、本当のところは謎です。
ただ、そもそも私たちが不安を抱えたのは、なぜか? 今となっては仕方のないことですが、我が家の場合「生前整理(物の処分)」を始めたタイミングは、お義母さんに認知症の症状が見え始めて以降。お互いに認識のズレがあるのはもちろん、「○○は捨てたのか? 自分が捨ててと言ったのか? 実はこの部屋のどこかにあるのか?」など、いまだにお義母さんには不安や疑問が多くあるのかもしれません。
元気なうちに「生前整理」を進めておくことは、本人だけでなく身近な家族にとっても、心と体の負担軽減につながる気がします。物の処分など具体的に動かなくても、コミュニケーションがとれるうちに家族で話し合い、結果を紙やデータに残しておくだけでもいい。改めて「生前整理の大切さ」を痛感した年末年始の出来事でした。
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