「便利そうには見えるけど…」カーリースはなぜ選ばれないのか? 5割超が「利用したくない」と答えた根本理由

車の持ち方と選択行動の変化

 ナイル(東京都品川区)が公表した調査結果(2026年4月22日発表)から、自家用車の保有をめぐる市場構造の変化が浮き彫りになった。2025年度(2025年4月~2026年3月)に車を取得した1060人を対象とした調査によると、カーリースの認知率は73.7%に達している。認知層のうち62.9%が取得時に候補として検討しており、選択肢のひとつとして定着したといえるだろう。

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 焦点は検討後の判断だ。実際に契約に至った割合は18.6%にとどまった。契約を見送った層に今後の利用意向を聞くと、「利用したい」の24.4%、「わからない」の20.9%に対し、「利用したくない」は54.7%に達した。

 過半数が示した拒絶反応は、未知のサービスへの不安ではなく、仕組みを理解した上での明確な判断とみられる。定額利用(サブスクリプション)が普及するなかでも、利便性や効率性の訴求だけでは受け入れられない領域があることを示している。比較検討を経た上での「不採用」という結果は、所有権を持たない利用形態そのものに対する根強い抵抗感を反映しているだろう。

車の持ち方と選択の変化

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個人向けカーリースの契約台数の推移。日本自動車リース協会連合会の資料を基に作成(画像:Merkmal編集部)

 個人の意識と市場の統計には乖離(かいり)がある。日本自動車リース協会連合会によると、個人向けカーリースの契約台数は2008(平成20)年の12万9017台から右肩上がりで推移してきた。2018年に25万6936台、2021年に43万7743台、2024年に67万1404台となり、2025年には72万3599台に達した。数値上は一貫して普及が進んでいる。

 ただ、台数の伸びをそのまま利用形態の受容と捉えるのは早計だ。先の調査で検討者の半数以上が今後も「利用したくない」と回答した結果を踏まえると、市場の拡大は利用者の自発的な変化によるものとはいい切れない。

・車両価格の上昇

・所得の伸び悩み

を受け、本来は購入を希望しながら断念した層が代替手段として選択している側面がある。所有を望みながらも、経済的理由からリースを選ばざるを得ないのが実情だ。

 足元の普及は前向きな選択の集積というより、所有の断念を余儀なくされる状況が押し広げたといえる。市場拡大の裏側で、所有への意欲と現実との間には距離が残ったままであり、統計の増加とは別の力学が働いているのではないか。

車の持ち方と価値観の違い

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車の持ち方に関する調査(画像:ナイル)

「利用したくない」と回答した層の具体的コメントからは、サービスへの違和感の正体が浮き彫りになる。38歳男性は

「自分の車を所有したいと考えていてその車を自由に自分がカスタムしていきたいから最終的に返すという概念がないから」

と述べた。返却を前提とする利用形態は、車を所有物として使い切りたい層の志向となじまない実態がある。

 コスト面への厳しい視線も目立つ。38歳女性は「買ったほうが安いから」と断じ、49歳男性も「トータルの支払い額が多くなるから」と懸念を示した。月額料金に含まれる諸経費の利便性よりも、最終的な総支出額を重視する姿勢が鮮明だ。

 普及の障壁となっているのが、周囲の利用実績の少なさだ。43歳男性は

「リースの仕組みがよくわからず、家族でも今までリースを使用したことがないといっていたので、利用したくないを選びました」

と回答した。サービスが社会的に認知されつつあっても、身近な実例の欠如が判断を慎重にさせている。

 一連の声を整理すると、否定的な回答を寄せた層にとって、カーリースは利便性をもたらす手段ではない。むしろ、所有によって得られる満足度や納得感を損なう選択肢として捉えられている。

所有と利用の意識の違い

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車の持ち方に関する調査(画像:ナイル)

 車両の所有は移動手段の確保にとどまらない。38歳男性が述べたように、返却を前提とする仕組みを拒むのは、車を自己の管理権限が及ぶ範囲と捉えているためだ。所有とは、使用や改造、処分時期の決定権が一体となった状態を指すだろう。

 これに対し、カーリースは所有権から「使用」の機能のみを切り出した形態だ。しかし、走行距離の制限や原状回復義務は、所有にともなう自由を制約するものと受け止められている。生活の一部として車を扱う層にとって、管理権限の欠如はコスト以上に重い判断材料となる。所有への固執は、私生活に外部の規律を持ち込むことへの抵抗感の表れといえる。

 費用面への懸念も根強い。前述のとおり、購入の安さを指摘する38歳女性や、総支払額を不安視する49歳男性の視点は、表面的な月額料金の背後にある不透明さを突いている。購入であれば将来の売却による資金回収の可能性があるが、リースは支払い完了後に資産が残らない。この差が

「含み損」

への警戒心を強めている。今後利用したくないと考える層は、利便性よりも資産形成ができない不安を優先した結果といえるだろう。

 普及を阻むもうひとつの要因は、既存の商習慣だ。家族の利用経験がないと話す43歳男性の言葉は、論理的な説明だけでは解消できない心理的障壁を示している。

 国内では現金やローンによる取得が長く標準とされてきた。高額消費において、周囲に先行事例がない新形態は検討段階で除外されやすい。契約率が伸び悩む背景には、こうした社会的な慣習の影響がある。市場のさらなる拡大には、制度解説以上に身近な利用実績の蓄積が不可欠となるだろう。

利便性と所有意識のずれ

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車の持ち方に関する調査(画像:ナイル)

 検討の遡上に載りながら選ばれない背景には、

・供給側の訴求ポイント

・需要側の志向のミスマッチ

があるのではないか。リース会社は、車検や整備に付随する手間の軽減を利点に掲げる。対して、今後の利用を否定した層にとって、保守管理は車両を保有・維持する一環として重要な意味を持つ。提供側が「利便性」と説明する要素が、利用者には車を所有する実感の希薄化と映っているのだ。

 認知率が高まり、検討層が厚くなりながら、実際の契約率が低い水準にとどまるのは、検討過程でこの価値観の相違が顕在化するためだろう。効率を優先する仕組みと、対象を自ら管理したいという欲求が対立。多くの消費者が最終的にリースを回避したのは、利便性の代償として管理の自由が制限されることへの抵抗感が強かったためといえる。

 市場の将来動向は、三つの観点から整理できる。まず、現状の延長線上にある拡大だ。統計データによると、契約台数は2008年から一貫して増加している。ただ、検討層の多くが利用を望まないと回答している事実を考慮すれば、この拡大は受容の広がりというより、車両価格高騰などで購入が困難になった層が代替手段として選択している側面が強い。

 次に、技術革新が利用型への移行を促す可能性だ。車両のソフトウエア化が進めば、利用者が独自に手を加える余地は狭まる。所有者が関与できる範囲が限定的になれば、返却を前提とした仕組みへの心理的抵抗も減退していくとみられる。

 一方で、所有の価値が再認識される動きも予想される。あらゆる機器がネットワークで管理される社会において、外部の干渉を受けず個人の裁量で運用できる車両は希少な存在となる。利便性が向上するほど、自ら管理・維持したいという欲求を維持しようとする層も一定数残る見通しだ。

所有意識と利用の広がり

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カーリース市場 理想と現実。

 個人向けカーリースの契約台数は2025年に過去最高水準に達し、統計上は普及が進んでいるように映る。しかし、検討層の半数超が今後も「利用したくない」と回答した事実は、台数の増加以上に市場の本質を突いている。この結果は、リース制度の是非ではなく、消費者が車両保有に抱く価値観の相違を浮き彫りにした。

 検討を経て契約を見送った層の判断は、金銭的な損得勘定にとどまらない。自己の所有物に対し、外部の規約や返却義務が介在することへの抵抗感が背景にあるのだ。移動手段としての機能性を重視する視点と、個人の裁量を反映させる対象とする志向は、現状では折り合っていない。

 月額定額制による支出の平準化よりも、売却や改造を自らの判断で行える自由を重視する。こうした選択は、あらゆるサービスが効率化されるなかで、資産の管理権限を保持したいという意思の表れといえるだろう。市場が拡大する一方で否定的な層が根強い現状は、自家用車の理想的な保有形態について、依然として明確な結論が出ていないことを示しているのである。