やたら立派な新市庁舎ができたと思ったら「やっぱりか」八代「復興の象徴」が汚職事件の舞台になるまで
熊本県八代(やつしろ)市の庁舎建て替え工事を巡り、市議ら3人があっせん収賄容疑で警視庁などに逮捕された。市庁舎は熊本地震で被災し、建て替えには多額の国の資金がつぎ込まれた。被災者のための復興事業が、食い物にされた構図が浮かぶ。地震から10年という節目に発覚した汚職に、地元住民からは批判の声が聞こえる。(戎野文菜)
◆人口は減っているのに、新庁舎の延べ床面積は倍増

熊本県八代市の新庁舎=同市提供
「大きすぎる庁舎だと感じていた。事件になり、やっぱりかという思い」。市内の喫茶店主、出水晃さん(81)は話す。
出水さんの店は1967年に開業し、2016年の熊本地震では半壊。一方、市の新庁舎は2022年に完成し、「復興の象徴」といわれる。
市の人口は約11万8000人に減少する中、延べ床面積は旧庁舎の2倍以上になった。街の変遷を知る出水さんは新庁舎に疑問を示す。「復興の象徴というが、市民目線で整備されたとは思えない」
◆スーツケースで現金6000万円を運び…
事件の構図は次第に明らかになってきている。
捜査関係者などによると、2016年ごろ、建設会社「園川組」(同市)代表取締役園川忠助容疑者(61)が、前田建設工業(東京都千代田区)の当時の九州支店長に市庁舎建て替え計画を伝え、有力な地元市議として成松由紀夫容疑者(54)を紹介した。園川、成松両容疑者は日本大の先輩と後輩。園川組は前田建設の下請け企業でつくる「前友会」の一員だった。

前田側から園川容疑者を通して、同社に便宜を図るように依頼を受けた成松容疑者は、2019年6月ごろ、前田側作成の評価基準案を当時の副市長に渡して採用を働きかけた。
2019年7月公告の入札は、前田が筆頭の共同企業体(JV)だけが参加し、118億円で落札した。落札率は99.92%という高さだった。契約変更や付帯工事で前田が受け取る額は2021年6月~2022年1月にかけ、計約13億円増額された。園川組は下請け工事を受注した。
成松容疑者は前田側に見返りを要求。同社九州支店の2人が2021年6月ごろ、園川容疑者が指定した元市議松浦輝幸容疑者(84)宅までスーツケースで現金6000万円を運び、3容疑者に渡したという。
◆「天の声」との証言に自民市議団は「でっち上げ」と反発
入札を巡る不正の疑いは、市職員の内部告発で明るみに出て、市議会の調査特別委員会(百条委員会)が設置された。複数の市職員が百条委で、前田作成の基準案について、上司から「天の声」などとして、採用を指示されたと証言した。

地震で壁が崩れ落ちた熊本県八代市の旧庁舎=2016年4月撮影、同市提供
これに対し、成松容疑者ら自民党市議団は「事実無根」「でっち上げだ」として、百条委で証言した市職員らを名誉毀損(きそん)や偽証の疑いで告訴すると述べた。
一方、前田建設は成松容疑者らへのわいろについて、内部調査の上、今年1月に警視庁に情報提供し、捜査に協力している。
◆建設費用には国民のお金も投入されている
市庁舎の総事業費は付帯工事を含め、総事業費は171億円に上った。そのうち124億円は国の災害復旧事業債で賄われた。建設の費用は八代市民だけでなく、広く国民が負担する。
先の出水さんは言う。「一部の議員らが力を誇示したかっただけではないか。行政サービスがしっかりしていれば、立派な建物なんていらなかったのに」
八代市庁舎建て替えを巡るあっせん収賄事件 警視庁と熊本県警の合同捜査本部は7日、成松、松浦、園川の3容疑者を逮捕。逮捕容疑は2016〜2019年6月ごろ、前田建設の九州支店の社員から、新庁舎の建設工事について、価格や技術などの評価点で落札者を決める「総合評価方式」にした上、同社など3社の共同企業体(JV)が落札できるようにしてほしいとの依頼を受け、同社が作成した評価基準で入札を実施することや、同社の工事利益を約11億円増やすことを市職員に指示。見返りとして6000万円を受け取ったとされる。
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