JR宇都宮線、埼玉で進む「知られざる大規模工事」

GW期間中に列車運休し工事, 「仮線」に切り換えて新しい橋を建設, 夜間の工事で「仮線」に切り換え, 新しい橋はいつできる?

架け替え工事が進行中のJR宇都宮線古利根川橋梁付近を走る列車(記者撮影)

首都圏のJR各線で近年行われている、列車を一時ストップしての「線路切り換え工事」。その代表格は、2018年5月から2023年11月まで5回にわたる切り換えでホームの位置や形を変えた渋谷駅だろう。

【よくわかる図と写真】大型連休中に宇都宮線を一時ストップして線路切り換え工事を行った「古利根川橋梁」はどんなところ?上空から見た切り換え後の線路と橋、まるで田園地帯にそびえるビル工事のようにも見える工事現場の様子

実は、首都圏のJR線では現在も、計4回の線路切り換えを伴う大がかりな工事が進んでいる場所がある。渋谷でもなければ品川や高輪ゲートウェイでもなく、この4月に山手線と京浜東北線を運休して切り換え工事をした田町駅付近でもない。

GW期間中に列車運休し工事

その場所は埼玉県久喜市。JR宇都宮線(東北本線)の東鷲宮―栗橋間にある、一級河川の中川に架かる「古利根川橋梁」の架け替えだ。

【図と写真】GWに宇都宮線を一時ストップして線路切り換え工事を行った「古利根川橋梁」はどんなところ?上空から見た切り換え後の線路と橋、まるで田園地帯にそびえるビル工事のようにも見える工事現場の様子

都心部の工事に比べれば目立たなかったが、大型連休期間中の5月4日夜から5日朝にかけて2回目となる線路の切り換え工事を行った。宇都宮線は4日の午後10時ごろから翌5日の朝7時40分ごろまで、久喜―古河間ですべての列車が運休。同区間は代行バスが走った。

4回にわたる線路切り換えが必要な橋の架け替え、どんな工事なのだろうか。

栗橋から上り列車に乗り、田園地帯が広がる車窓の左側に高い送電鉄塔が見えると列車は鉄橋にさしかかる。車窓には建設中のビルかマンションのようにも見える工事現場が現れる。ここが架け替え工事の進む古利根川橋梁だ。

GW期間中に列車運休し工事, 「仮線」に切り換えて新しい橋を建設, 夜間の工事で「仮線」に切り換え, 新しい橋はいつできる?

古利根川橋梁の位置

橋梁の架け替えは、埼玉県が進める中川の河川改修事業の一環。中川では水害などの被害を防ぐため、県が川幅を広げたり橋を架け替えたりするなどの改修事業を進めている。古利根川橋梁付近では川幅を現在の約30mから約90mに広げる計画で、橋梁もこれに合わせて今までより長いものに架け替える必要がある。

GW期間中に列車運休し工事, 「仮線」に切り換えて新しい橋を建設, 夜間の工事で「仮線」に切り換え, 新しい橋はいつできる?

古利根川橋梁の架け替え工事の現場。手前に見えるのは新しい橋桁を造る作業構台で、後ろを列車が通っている(記者撮影)

「仮線」に切り換えて新しい橋を建設

埼玉県県土整備部河川砂防課の担当者によると、中川の流域は荒川や利根川、江戸川という大河川に囲まれ、水が流れにくくたまりやすい地域といい、過去に何度も水害が発生している。中川の治水対策は長年をかけて行っている事業で、担当者は「都県境付近から始めて、ようやくここ(久喜付近)まで来た」と語る。

古利根川橋梁の部分を含む、中川改修事業の「久喜・幸手工区」の長さは約11.7km。大半は改修が済んでおり、同橋梁付近の約800mが残っている。JR宇都宮線の橋梁架け替えは改修事業の中でも「大きなウェイトを占める」(担当者)部分だ。

GW期間中に列車運休し工事, 「仮線」に切り換えて新しい橋を建設, 夜間の工事で「仮線」に切り換え, 新しい橋はいつできる?

古利根川橋梁と宇都宮線の列車(記者撮影)

県とJRは2021年に橋梁改築に関する協定を締結。2022年3月から工事に着手した。事業の主体は県で、JRは県から設計や工事などを受託する形で実施。期間は2031年3月までの予定だ。

工事は、まず従来の橋梁の隣に仮設の橋を架け、こちらを通る「仮線」に線路を切り換えたうえで従来の橋梁を撤去。その場所に新しい橋梁を架けて、今度は仮線から新しい橋梁を通る本来の線路に再び切り換えるという手順だ。線路の切り換えは下り線・上り線それぞれ1線ずつ行うため、計4回必要となる。

第1回の線路切り換え工事は2024年4月28日夜から29日朝にかけて実施し、まず下り線を仮線に切り換えた。約1年後、今年の5月4日夜から5日朝にかけて行った2回目の工事では上り線を切り換えた。

この時期に工事をするのは理由がある。「河川区域内は、出水期と渇水期の時期があり工事制限があること、また気温の高い時期にレールを破線(切断して作業)できないことなどさまざまな条件を考慮している」(JR東日本大宮支社)ためだ。

【図でわかる】古利根川橋梁架け替えの線路切り換え工事は全4回の予定。どんな手順で進む?
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ドローンで撮影した、上り線の仮線切り換え後の現場付近。手前が東鷲宮側(東京側)。列車が走っているのが上りの仮線、その右側に見える2本の線路が従来の線路だ(写真:JR東日本大宮支社)

夜間の工事で「仮線」に切り換え

今回の切り換え工事の範囲は、橋梁を挟んで東鷲宮(東京)側の「八甫踏切」付近から、栗橋(宇都宮)側の「水沢踏切」付近までの約2.1km(2130m)。仮線の橋梁は1回目の下り線切り換え工事に先立つ2023年3月までに上り・下り線の両方を設置済みだ。

GW期間中に列車運休し工事, 「仮線」に切り換えて新しい橋を建設, 夜間の工事で「仮線」に切り換え, 新しい橋はいつできる?

上り線切り換え工事前の古利根川橋梁付近。手前が栗橋側。仮線の橋梁(右側)はすでに上り線の分も設置されている(写真:JR東日本大宮支社)

工事当夜は、仮線の両端に当たる部分で従来の橋梁につながる線路を切断し、横に移動して仮線に接続。線路の工事には約230人が従事し、東鷲宮側では約65m、栗橋側では約150mにわたって線路をスライドさせ、仮線へとつないだ。

線路の切り換え後は架線や信号などの調整を行い、試運転ののちに午前7時40分過ぎから運転を再開。線路工事のほか架線や信号工事も含めると約310人の現場作業員が携わり、深夜から早朝までの限られた時間内で無事工事を終えた。

GW期間中に列車運休し工事, 「仮線」に切り換えて新しい橋を建設, 夜間の工事で「仮線」に切り換え, 新しい橋はいつできる?

上空から見た夜間工事中の現場付近(写真:JR東日本大宮支社)

上下線とも仮線への切り換えが済んだことで、今後は新しい橋梁の建設と従来の橋梁の撤去作業が加速する。従来の橋梁は長さ約30mだったが、新しい橋梁は川幅を広げるのに合わせてほぼ3倍の約90mに延びる。

新しい橋梁は2つの桁で構成され、このうち栗橋寄りの約60mはアーチ橋になる。JR東日本大宮支社によると、正確にはアーチ橋の一種の「ランガー橋」で、正式名称は「ポストテンション方式PC単純ランガー桁」だ。

新しい橋はいつできる?

このランガー桁は2024年11月ごろから従来の線路脇の作業構台上で製作を開始。ランガー桁の製作後、もう1つの桁である「PRC桁」の製作を始めるという。桁の製作と同時に、今後は旧線を撤去して橋台を構築していく。大きなアーチを描くランガー桁は、田園地帯の中でひときわ目立つ存在になりそうだ。

GW期間中に列車運休し工事, 「仮線」に切り換えて新しい橋を建設, 夜間の工事で「仮線」に切り換え, 新しい橋はいつできる?

新しい橋梁の製作が進む古利根川橋梁。右側を線路が通っている(記者撮影)

【写真をもっと見る】上空から見た線路切り換え後の古利根川橋梁、GW期間中に行われた夜間工事の様子、そして仮線に切り替わった古利根川橋梁を走る列車など

仮線から新しい橋梁への線路切り換えは、上り線が2028年春ごろ、下り線は翌2029年春ごろの予定。その後仮の橋梁などを撤去し、最終的な完成形に至る計画だ。

旅客列車だけでなく、貨物列車も多数走る宇都宮線(東北本線)は首都圏の大動脈。そして中川は埼玉から東京湾へと注ぐ、地域の発展を支えてきた主要な河川だ。その2つが交わる場所である橋梁の架け替えは一見地味ながら、都心部の再開発にも増して重要なインフラ工事といえそうだ。