「高校3年生の夏に僕は死んだ」……明るい相方の傍らで悩み続けたティモンディ、前田裕太さんの芸人人生
カリスマキリンへの道

今日は何だか、どSな気分……。
人生は「0」か「100」だと、考えるタイプの人がいます。自分の夢があるとして、達成できなければすべて意味がないと思う人です。ただ、この世で願いが100%かなうことはほぼないので、常に満たされないものを抱えることになります。
野球の名門、愛媛・済美高出身の若手お笑いコンビ「ティモンディ」の前田裕太さん(32)が、お笑い界で活躍するまでの道のりをつづる『自意識のラストダンス』(左右社)を読んで、彼が意外にもこの思考パターンを持っているように感じました。「やればできる」のフレーズで人気の相方の高岸宏行さん(32)が、超前向きなキャラクターだけに驚かされます。
世間にも、似たような考え方をする人は多いのではないでしょうか。相通じる悩みに触れ、共感する読者は多いはずです。
「高校3年生の夏に僕は死んだ」
衝撃的な一文で、第1章は書き出されます。故郷を離れて愛媛県の学校に進んだ前田さんは、打ち込んだ野球で甲子園に出られず、心に大きな穴が開いてしまいます。自分の全てを否定された気持ちのまま大学に進み、明るい学生生活を送る周りの空気にもなじめません。弁護士を目指して、法律の勉強に没頭していきます。

司法試験の勉強中、心の慰めは芸人のラジオ番組でした。高校の同級生の高岸さんに誘われ、お笑いの道を目指します。ネタを書くのに熱中し、ライブのために時間やお金が取られ、家の電気も、ガスも止められます。

お笑いコンビ「ティモンディ」の前田裕太さん(左) と高岸宏行さん
やがて憧れのバラエティー番組「アメトーーク!」と「ゴッドタン」への出演を果たし、コンビはブレイクを果たします。でも今度は、高岸さんばかり注目されることを受け入れられず、悩んで円形脱毛症になり、旅に出ます。
物事を「0か100」で捉える人は、人生の受難者ですが、目標に向かって突き進む爆発力があります。前田さんの葛藤の軌跡を読むと、応援する気持ちと、まだまだもがき突き進んでほしいとの思いがわきます。「50」や「60」で折り合うことを覚えたとき、人は優しくなると同時に、中年の 倦怠(けんたい) が始まるからです。