阿部監督は退場、岡田前監督は〝無罪〟 リプレー検証後の抗議で露呈した審判団の二重規範

リプレー検証で判定が覆ったことに抗議し、退場処分を受ける巨人・阿部慎之助監督(右から2人目)=2日、甲子園(中井誠撮影)
杓子(しゃくし)定規!?の退場処分は審判団のダブルスタンダードといわれないのか。巨人・阿部慎之助監督(46)の退場処分を目の当たりにして頭をよぎったのは、2023年8月18日のDeNA戦(横浜)で起きた阪神・岡田彰布監督の5分以上に及ぶ猛抗議だ。いずれもリクエストによるリプレー検証の判定を受けての抗議だったが、阿部監督は一発退場、かたや岡田監督は審判団になだめられてベンチに下がった。180度違う審判団の姿勢をどう見ればいいのか。

大山の遊撃内野安打で二塁から一気に生還した阪神・森下(奥)=2日、甲子園(松永渉平撮影)
川上監督以来51年ぶり
阿部監督が退場処分を受けたのは7月2日の阪神戦(甲子園)。0-0で迎えた八回2死一、二塁で、阪神・大山の打球は遊撃手・泉口の前でイレギュラーし内野安打に。カバーした二塁手・吉川の本塁への返球は一塁側にややそれた。二走の森下はホームベースを回り込んで捕手・甲斐のタッチを逃れようとしたが、判定はアウト。しかし、藤川球児監督のリクエストによるリプレー検証の結果、判定はセーフに覆った。森下の右手は甲斐のタッチをかいくぐってホームベースに触れていたのだ。
納得できない阿部監督は険しい表情で球審に詰め寄った。2分間の抗議中に審判団が集結し、責任審判の吉本一塁塁審が「退場」を宣告。巨人の監督が退場処分を受けたのは、1974年7月9日の大洋(現DeNA)戦の川上哲治監督以来、51年ぶりだった。
5分以上の猛抗議でも…
アグリーメントには「リプレー検証によって出た全ての決定に対して異議を唱えることは許されない。異議を唱えた者と監督は試合から除かれる」と記されている。阿部監督も「抗議したら退場になりますよね」と言いながら「根拠は教えてもらえないんですか」と食い下がった。すると吉本一塁塁審の人さし指が夜空を突いた。退場処分は規則通り…といえばその通りだ。
しかし、2年前の8月18日、阪神が1点を追う九回1死一塁で、代走・熊谷が試みた二盗のセーフ判定を巡り、DeNA・三浦大輔監督がリクエスト。リプレー検証によって判定がアウトに覆った。ただ、遊撃手の京田の足が二塁ベースを覆い、危険な衝突を防ぐためのコリジョンルールに違反しているように見受けられたため、岡田監督はリクエスト判定後にもかかわらず5分以上も猛抗議。それでも審判団は退場を宣告せず、必死になだめているかのような姿勢に映った。

リクエストの結果、判定が覆り、歓喜する阪神・森下翔太(右端)ら=2日、甲子園(中井誠撮影)
審判団への注文
阿部監督はこの日の敗戦により、今季の阪神戦10敗目(4勝)。試合後、「思わずしちゃいけないことをしちゃったので申し訳ない」と頭を垂れた。ところが、試合をテレビ解説していた阪神・岡田彰布オーナー付顧問は「審判団は阿部監督が抗議する前に判定の説明をすべきだ。そうしていたら退場はなかった」と話した。記憶力抜群の岡田さんの脳裏には、2年前の〝横浜事件〟が浮かんでいたのかもしれない。
「リプレー検証の結果が出れば、判定が覆っても監督が説明を求めることも許さず、何か言えば一発退場とは…。あまりにも杓子定規。勝負のかかった重要な判定のケースでは、説明ぐらいしてやればいいのでは」と阪神OBは話した。2年前は岡田監督に懸命に説明していた審判団が、今度は阿部監督を一発退場。ひいきするチームによってはファンの受け取り方も違うのだろうが、やはり審判の姿勢は統一すべきではないか。

DeNA側のリクエストによって熊谷の盗塁がアウト判定に覆り、抗議する阪神・岡田彰布監督(左から2人目)=2023年8月18日、横浜スタジアム(宮沢宗士郎撮影)
では、どちらが腑に落ちるのか。「杓子定規」とは形式や規則にとらわれて融通の利かないこと。ルールの番人に融通は不必要-といわれれば、それまでの話になってしまうが…。
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【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。