核の脅威で主張を押し通そうとするプーチン政権:実際、ロシアの核戦力はどれほどなのか?
- ウクライナ侵攻で一変した核をめぐる情勢
- 核兵器の使用はタブー
- 合計1万2,700発の核弾頭
- 核兵器保有国は9ヵ国
- 米露が全核兵器の93%を保有
- 突出するロシアの核戦力
- すべてが使用できる状態ではない
- ロシアがすぐに使用できる核弾頭は1,588発
- 戦略核兵器に関する情報は公開が義務付けられている
- ロシアの戦略核兵器は2,565発
- 戦術核兵器は1,912発
- 敵の攻撃に備え、核戦力を分散
- 潜水艦「K-329 ベルゴロド」
- ロシア屈指の強力な兵器
- おそらく世界最大の潜水艦
- 「K-329 ベルゴロド」の装備
- 敵のソナーをあざむく仕組み
- 各魚雷「ポセイドン」
- 「ポセイドン」の威力
- 大陸間弾道ミサイル
- 鳴り物入りで登場した最新兵器
- こけおどしに過ぎない?
- 莫大な維持コスト
- どこがターゲットになるのか?
- 事態を”注視”するNATO
ウクライナ侵攻で一変した核をめぐる情勢

ロシアによるウクライナ侵攻が勃発したことで、冷戦終結後は鎮静化していた核戦争の恐れが一気に高まってしまった。さらに、核拡散防止条約(NPT)も機能不全に陥っており、核兵器保有国における核軍縮という目標は空虚なお題目と化している。
核兵器の使用はタブー

とはいえ、第2次世界大戦後に核兵器が用いられたことは一度もない。核兵器の使用をタブー視する暗黙の了解によって、かろうじて世界の平和が保たれているのだ。
The Daily Digest をフォローして世界のニュースをいつも手元に
合計1万2,700発の核弾頭

米国科学者連盟(FAS)のデータによれば、2022年の時点で核兵器保有国には合計1万2,700発あまりの核弾頭があるとされている。
核兵器保有国は9ヵ国

また、現時点での核兵器保有国はロシア、米国、フランス、イギリス、イスラエル、パキスタン、インド、中国、北朝鮮の9ヵ国だ。
米露が全核兵器の93%を保有

もっとも大きな核戦力を保有しているのは、いうまでもなくロシアと米国だ。ロシアの核弾頭は5,977発、米国は5,428発の核弾頭と推定されており、両国だけで世界に存在する全核兵器のおよそ93%を独占している。
画像:Federation of American Scientists
突出するロシアの核戦力

とりわけ、ロシアの核戦力は突出している。同国が保有する核弾頭の数はNATO全体を上回っているのだ。
すべてが使用できる状態ではない

ただし、ロシアが保有する5,977発の核弾頭のうち1,500発は老朽化しており、いずれ廃棄される見通しとなっている。
ロシアがすぐに使用できる核弾頭は1,588発

とはいえ、プーチン大統領の指示さえあれば、いつでも使用できる核弾頭も少なくない。米国科学者連盟いわく、ロシアには万全な状態の核弾頭が1,588発残されているとのこと。
戦略核兵器に関する情報は公開が義務付けられている

ロシアが保有する戦略核兵器の数について言えば、これは機密情報ではない。米露両国は新戦略核兵器削減条約(新START)の規程によって、自国が保有する戦略核兵器の情報を公開しなくてはならないとされているためだ。なお、戦略核兵器は一般的に戦術核兵器よりも破壊力が大きい。
ロシアの戦略核兵器は2,565発

『原子力科学者会報』誌によれば、ロシアが保有する戦略核兵器は2,565発だとされている。
戦術核兵器

その一方で、ロシアは戦術核兵器も数多く保有している。戦術核兵器は一般的に戦略核兵器よりも威力が低く、射程距離も短い。
戦術核兵器は1,912発

『原子力科学者会報』誌によれば、ロシアに存在する戦略核兵器は1,912発とのこと。
「核の3本柱」

2022年2月にウクライナ侵攻が勃発してからというもの、メディアによって「核の3本柱」が取り上げられることが増えてきた。デジタル百科事典『ブリタニカ・アカデミック』いわく、「米露両国は長期間にわたり、もっとも強力な核の3本柱を有してきた」とのことだが、そもそも「核の3本柱」とは一体、何なのだろうか?
敵の攻撃に備え、核戦力を分散

「核の3本柱」とは、核弾頭を搭載した地上発射型のミサイル、潜水艦および航空機のことだ。核戦力を分散させることで、敵の攻撃を受けたとしても、すべての核兵器が一度に無力化されてしまうのを防ぐというのが狙いだ。
潜水艦「K-329 ベルゴロド」

2022年にノルドストリームが爆破された際には、核兵器を搭載したロシアの潜水艦「K-329 ベルゴロド」の関与が疑われたこともある。
画像上が「K-329 ベルゴロド」:YouTube, Pravda Report(スクリーンショット)
ロシア屈指の強力な兵器

この潜水艦がのノルドストリームの爆破に関与したことを示す証拠はないが、ロシア屈指の強力な兵器であることには変わりない。
画像:YouTube
おそらく世界最大の潜水艦

「K-329 ベルゴロド」は全長184メートル、幅15メートル近い巨大な原子力潜水艦で、深海での索敵や情報収集、救助の能力を備えている。
「K-329 ベルゴロド」の装備

さらに、「K-329 ベルゴロド」は核魚雷「ポセイドン」や小型の無人潜水艇「クラヴェシン」を運搬し、発射することができる。
敵のソナーをあざむく仕組み

また、この潜水艦には無反響タイルが採用されており、敵のソナーによって発見されにくいため、海中における大きな脅威となり得る。
各魚雷「ポセイドン」

「ポセイドン」はコードネームの「ステータス6」としても知られる全長24メートルの魚雷であり、2メガトン級のコバルト60核弾頭を搭載している。
画像:Youtube Screenshot, World's Tech Official
「ポセイドン」の威力

この各魚雷が沿岸部で爆発すると、最大500メートルの「放射能津波」が発生し、内陸部にも被害がおよぶたされている。また、ロシア国営テレビが行ったシミュレーションによれば、英国などはこの魚雷1発で滅ぼされてしまうそうだ。
大陸間弾道ミサイル

しかし、西側諸国はロシアが保有する潜水艦に加え、「サルマト」をはじめとする大陸間弾道ミサイルに警戒感を強めているようだ。
画像:By Mil.ru, Wikimedia commons
鳴り物入りで登場した最新兵器

「サルマト」はロシアがもつ兵器開発技術の粋を集めた最新兵器として、鳴り物入りで登場した。中東衛星放送アルジャジーラによれば、プーチン大統領はこの弾道ミサイルについて、世界に「類を見ない」ものであり、「いかなるミサイル防衛システムをもってしても回避不可能」だと豪語したという。なお、搭載可能な核弾頭は15発、射程距離は最大1万8,000キロメートルとされている。
こけおどしに過ぎない?

ロシアの核戦力が実用的なものなのか、こけおどしに過ぎないのかは不明だ。しかし、『ニューヨーク・タイムズ』紙をはじめとするメディア各社はロシアの戦術核兵器について、実戦能力があると見ている。
莫大な維持コスト

ただし、核戦力を維持するには長期にわたって莫大なコストがかかるため、むやみに使用することはできない。さらに、プーチン政権といえども、核兵器を使用して同盟国から白眼視されるのは避けたいところだ。
どこがターゲットになるのか?

一方、『ガーディアン』紙はロシアが核兵器使用に踏み切るとしたら、どこを狙うのかについて分析を行った。それによると、仮にプーチン政権が核兵器に手を出すとしても、ウクライナ領内の戦略拠点やウクライナ軍部隊の一部に対し、戦術核兵器を限定的に打ち込むという形になると見られている。
NATOは介入する?

また、ロシアがウクライナに対して核兵器を使用したとしても、NATOが直接介入に動く可能性は低い。そもそも、ウクライナはNATO加盟ではないため、同国が被ばくしてもNATOに参戦の義務はない。しかし、NATOが何らかの対応をとった場合、ウクライナ侵攻は世界規模の戦争へと発展するだろう。
事態を”注視”するNATO

ロシアが住民投票によってウクライナ東部4州の一方的な併合を宣言したとき、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長(当時)は記者会見の中で、ロシアが振りかざす「核のレトリック」は危険だと断言。「NATOはロシア軍の行動を常に注視している」と付け加えた。
米国の立場は?

また、米国のジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官(当時)も2022年9月30日にホワイトハウスで行われた記者会見において、プーチン政権が「暗黒の道」を進むなら、米国は断固たる対応をとるとした上で、ロシアと直接協議していることを明かした。
The Daily Digest をフォローして世界のニュースをいつも手元に