北朝鮮工作船に射撃、尖閣では中国漁船に衝突された〝生き証人〟 巡視船「みずき」に乗船

「時代の生き証人」といわれる巡視船「みずき」=8日午後、那覇市(大竹直樹撮影)
海上保安庁で「時代の生き証人」と言われる巡視船がある。那覇海上保安部(那覇市)に所属する巡視船「みずき」だ。北朝鮮工作船の銃撃・沈没事件や尖閣諸島中国漁船衝突事件を経験した猛者。平成12年の就役から四半世紀にわたり日本の海を守ってきた「みずき」が8日、報道関係者に公開され、産経新聞の記者が乗り込んだ。

巡視船「みずき」の功績をたたえる表彰パネル=8日午後、那覇市(大竹直樹撮影)
船内には表彰パネル
「ものすごい大きな事案に立ち会った船。まさに時代の生き証人だ」
那覇海上保安部の税所百年部長はそう言って、甲板の20ミリ機関砲を見つめた。
船内には表彰パネルが誇らしげに掲げられており、命がけで北朝鮮工作船に対峙(たいじ)した海上保安官たちと「みずき」の功績を今に伝えている。
平成13年12月、鹿児島県・奄美大島沖の東シナ海で巡視船が不審船を発見。不審船は再三の停船命令に従わず逃走した。その後、巡視船が接舷を試みたところ、不審船は自動小銃とみられる武器で発砲。巡視船は船体射撃で応戦した。
福岡海上保安部に所属していた「みずき」も銃撃戦の渦中にあり、不審船の船首部分に向け、機関砲で射撃している。その後、不審船は自爆して沈没。翌14年に船体を引き揚げ、不審船は北朝鮮の工作船だったことが明らかになった。

巡視船「みずき」の操舵室=8日午後、那覇市沖(大竹直樹撮影)
「みずき」は平成20年、国境警備の最前線である石垣海上保安部に配置換えとなった。事件が起きたのはその2年後だった。
22年9月、尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖で違法操業していた中国漁船が「みずき」と「よなくに」に体当たりしてきたのだ。海保は中国人船長を公務執行妨害容疑で逮捕したが、那覇地検はその後、処分保留のまま船長を釈放した。
今も海を守るベテラン
「みずき」は令和4年、那覇海上保安部に2度目の配置換えとなった。船齢も25とベテラン格。税所部長は「船齢はいっているが、今もしっかりと海を守っている」と胸を張る。
「出航用意。ニュートラルよし。おもかじいっぱい!」
操舵(そうだ)室に乗組員の声が響き、にわかに慌ただしくなる。船尾がそろりと岸壁を離れ、短音の汽笛が3回鳴った。後進する合図だという。

甲板で作業する巡視船「みずき」の乗組員=8日午後、沖縄県浦添市沖(大竹直樹撮影)
「現在コース10度です」
「はい、了解」
乗組員は双眼鏡やレーダーで周囲を航行する船に気を配りながら、那覇港内をゆっくりと進む。ディーゼルエンジンの回転数が上がり、速度が上がる。港を出たようだ。と同時に、船体が左右に大きく揺れた。
「外洋に出ると、うねりを感じるようになる」と伊良皆正芳船長。みずきは全長46メートル、総トン数195トンと比較的小型の巡視船。その分、高い機動力があり、35ノット(時速約65キロ)以上の俊足を誇る。
領海警備の任に就く「みずき」は、大きなうねりのある波の上を高速で航行することもある。下から突き上げるような激しい揺れに襲われるため、操舵室には衝撃を吸収する特殊なシートも備わっている。
それでも船体の揺れはすさまじく、乗組員の体が浮き上がるのは日常茶飯事。「一瞬フリーフォール(自由落下)状態」になることもあるというから、過酷な任務の一端がうかがえる。
領海警備や海難救助、海上災害の防止といった任務に従事する巡視船の中でも、「みずき」ほど第一線で活躍を続けてきた船はそうはないだろう。
中国漁船が衝突した右舷船尾はきれいに修繕されており、痕跡は残っていないが、「みずき」の活躍は今も語り草になっている。第11管区海上保安本部(那覇)の坂本誠志郎本部長は「小さいけれど、海保の中でも功績のある船だ」と評した。(大竹直樹)