恋をかなえに列車で来い来い 願いがかなうピンク色の駅 智頭急行・恋山形駅

ピンク色に染められた恋山形駅。「恋がかなう」と人気を集めている
全国の鉄道には「なぜこんな場所に」「デザインが面白い」といったユニークな駅が存在する。鳥取県には駅舎やベンチなどがピンク色に彩られた不思議な雰囲気のローカル駅がある。京阪神や岡山から鳥取地方への最短ルートを担う第三セクター、智頭急行の「恋山形駅」(鳥取県智頭町)だ。ピンクとハートにとことんこだわった「恋がかなう駅」として人気を集めている。

ホームにあるハートのモニュメント。取り囲むように多くの絵馬がかけられている
関西発の「スーパーはくと」、岡山から出る「スーパーいなば」といった特急が1日に上下14往復走る智頭急行。そんな「特急街道」の普通列車しか止まらない無人駅だが、その見た目のインパクトはまさに「ここだけの駅」だ。

駅へ続く道は「恋ロード」と呼ばれ、世界各国の「恋」の言葉が並んでいる
駅に続く道はピンク色の「恋ロード」。イタリア語の「amore」など世界各国の言葉で「恋」が表記されている。駅の入り口にはピンク色の「恋ポスト」。手紙は週に1度集められ、地元郵便局のハート形の風景印を押して配達してくれる。ホームに入ると「ハートのモニュメント」。ハート形の絵馬がつるされ、それぞれ願い事が書かれている。絵馬は駅横の自動販売機で売っている。
駅は平成6年に智頭急行が開業した当初から存在する。予定では「因幡山形」という駅名だったが、外から人に来てほしいという地元の「来い山形」という思いをかけて「恋山形」になった。もちろん誕生時の外観は普通の駅。転機は24年にやってきた。
全国4駅で連携
「恋」の字が使われている全国の4駅(恋山形のほかは母恋(ぼこい)=JR北海道、恋し浜=三陸鉄道、恋ヶ窪=西武鉄道)がそれぞれの地域の活性化を図ろうと「恋駅プロジェクト」を立ち上げた。
4社共同の「恋駅きっぷ」を発売したほか、智頭急行の独自の取り組みとして25年6月、恋山形駅をピンク色に染め上げた。
それ以来、恋のパワースポットとしてバスツアーの目的地になるなど、人気を呼んだ。さらに昨秋、全国から注目を集める出来事があった。人気ラッパーがSNSに恋山形駅の写真とともに「何だこの駅…気持ちわりぃ…」と投稿したことでインターネット上で議論となったのだ。
この騒ぎは鳥取県議会でも取り上げられた。平井伸治知事は「鳥取県は基本は炎上商法でやっている。まんまと引っかかった」と冗談交じりに語った。この直後、「#恋山形駅」をつけてSNSで同駅の写真とともに応援コメントを投稿すれば駅名入りのキーホルダーをプレゼントする期間限定のキャンペーンを展開。「多くのメディアに取り上げられた」(智頭急行)といい、県や同社の「試合巧者」ぶりが目立った。

ピンク色になる前の恋山形駅。ごく普通のローカル駅だった(智頭急行提供)
恋山形駅は車やバイクで訪れる人が多い。そこで列車での来訪を促進すべく、同駅に15分停車する列車を1往復設定している。上郡10時27分発の智頭行き、鳥取11時5分発の上郡行きだ。両列車は12時5分から同12分まで、1、2番線に並んで停車する。
智頭急行では「写真などで見たことはあっても、実際にお越しいただくとやはり印象的に感じていただけると思います。ぜひ一度、列車で訪れてみてください」と呼びかけている。
駅になった「宮本武蔵」
恋山形駅から普通列車で南へ下って約30分。全国でも珍しい人名を使った「宮本武蔵駅」(岡山県美作市)がある。
江戸時代初期の剣術家で二刀流や佐々木小次郎との巌流島の決闘で知られる武蔵。駅付近が生誕地とする説があることから命名された。駅前には武蔵の少年時代の銅像があり、ホームに上がれば晩年の武蔵を描いた肖像画が迫力満点だ。待合室には駅ノートがあり、武蔵ファンの熱心な書き込みが見られる。
駅近くには、太鼓を2本のバチで打つ様子を見た武蔵が二刀流を思いついた場所とされる「讃甘(さのも)神社」、武蔵の生家跡、武蔵がまつられている「武蔵神社」など、ゆかりの地が点在している。
平成15年にNHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」が放映された際は注目を集め、特急列車が臨時停車することもあった。(鮫島敬三)