元報道カメラマンが撮る、積乱雲の脅威と美 昭和記念公園で写真展

平成24年9月8日、東京都豊島区で撮影された巨大積乱雲「スーパーセル」。千葉県方向を望む(瀬戸豊彦さん撮影・提供)
空にそびえたつ積乱雲は、落雷や水害を引き起こす脅威であると同時に、自然のダイナミズムを雄弁に物語る存在でもある。そんな積乱雲に焦点を当てた写真展が、東京都立川市緑町の国営昭和記念公園「花みどり文化センター」で開かれている。観覧無料。19日まで。展示されているのは、風景写真家で昭島市在住の瀬戸豊彦さん(79)が撮影した作品35点だ。
「トトロ」の雲に感銘
展示会場に足を踏み入れると、ずらりと並ぶ巨大な雲の迫力に、圧倒される。上層が水平に広がるかなとこ雲、特に大きな規模のスーパーセル。展示パネルの多くには当日の天気図が添えられ、状況を知ることができる。その時にしかない自然の表情を切り取った数々の作品に、来場者からは「すごいね」と感嘆の声が漏れる。

特に印象的だったというスーパーセルの撮影について説明する、風景写真家の瀬戸豊彦さん=3日、東京都立川市の国営昭和記念公園・花みどり文化センター(黒田悠希撮影)
積乱雲は、上昇気流により顕著に発達した雲をいい、雷、大雨、竜巻などを発生させる。高さは数キロから十数キロに達することがあり、一つの雲あたりでは水平方向に数キロから十数キロに広がる。夏に多いが、一年中発生する。
瀬戸さんは元テレビ朝日の報道カメラマン。在職中の1990年代初めから風景写真を撮り始め、「いい風景にはいい雲がある」と気づいた。そんな中、宮崎駿監督の映画「となりのトトロ」の雲の描写に感銘を受けた。そこから雲の撮影に興味を持ち、気象学も学んだ。積乱雲を撮り続けるのは、特にその姿に魅せられたことと、自身に「収集癖のようなものがあるから」と語る。

平成28年8月21日、東京都豊島区で撮影された「かなとこ雲」。北西方向を望む(瀬戸豊彦さん撮影・提供)
都市と自然の対比
撮影するのは主に東京の空だ。「都市の近くにあり、多くの人に身近な自然こそ、大切ではないかと考えている」と話す。巨大な積乱雲に、暗くけぶる豪雨や竜巻、雷、そして高層ビルなどの建物群が、自然と都市との対比を鮮やかに写し出す。災害をもたらす自然の厳しさと、雲そのものの美しさ。その二面性を、見る者に突きつける。
撮影で利用するのは、主に豊島区の高層ビル「サンシャイン60」や練馬区役所、東京タワーなど高い建物の空を見渡せる場所。天気予報や雨雲レーダーを見て予定を立て撮影チャンスを狙い、施設の開館から閉館まで粘ることもある。空の状況に合わせて頻繁に撮影場所を変えるため、機材はカメラとズームレンズ2本、三脚に抑えて身軽にしている。
ベストな場所の予測は難しく、あまり雲に近すぎても全体像が捉えられない。特に近年は都市の気温上昇により積乱雲の発達スピードが速くなったと感じており、気が抜けない。
姿を知ってほしい
展示の中で自身にとって最も印象的だった雲は、平成25年9月2日、サンシャイン60の展望台から撮影したスーパーセル。このタイプは国内では3~5年に1度程度の発生といい、めったに見ることはできない。その貴重な姿は、発達段階ごとに4点のシリーズで紹介している。
近年よく耳にする「線状降水帯」も積乱雲が同じ場所で次々と発生する現象だ。集中豪雨への関心は高まり、スマートフォンで雨雲の動きを見られるようになったが、雲そのものを見ている人は、少ないのかもしれない。雲に関心を持ってほしい、そんな思いがある。
例えば、大雨災害の報道に被害の模様の映像・画像は多いが、実際に災害を引き起こしている積乱雲の姿が不足しているのではないか。言葉だけで「積乱雲の下で雨が降る」と説明するのではなく、視覚的に伝えることは重要だと話す。どんな雲が危険で要注意か、はっきりとわかるからだ。
だからこそ、これまでの写真展で「外出時に、自分でも雲を見るようになりましたと(作品を見た人に)言ってもらえたときは、本当にうれしかったですね」。そう振り返った。
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写真展は午前9時半から午後5時まで(最終日は午後3時まで)。(黒田悠希)