ホンダ「アコード」の追加グレード「e:HEV Honda SENSING 360+」、高速走行時のハンズオフ機能はやはり楽だった
ホンダの乗用車「アコード」に追加設定されたグレード「e:HEV Honda SENSING 360+」に試乗した。全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360+」を搭載し、高速道路でのハンズオフ(ハンドルから手を離した状態での運転が可能)機能などが付き、運転者の負担が大幅に軽減されたモデルだ。

ホンダの量販車として初のハンズオフ機能がついた「アコード」の追加グレード「e:HEV Honda SENSING 360+」
最初に自動運転レベルについて、改めて整理してみたい。レベルは0~5の6段階に分かれるが、0は運転支援機能がまったくないレベルで、その後は段階的に機能が充実していく。この新グレードはレベル2(運転支援車)に位置付けられる。実はレベル2とレベル3(条件付自動運転車)の間には大きな差がある。レベル2までは運転操作の主体が人間(運転者)なのに対し、レベル3からは主体が自動運行システムになるのだ。
例えば、レベル2のハンズオフ機能では、高速道路でハンドルからの手離し運転ができるものの、スマホを見るといった運転から完全に離れる動作はできない。何かあった場合は即座にハンドル操作に戻れるよう、あくまで一定条件下でのハンズオフを支援するレベルになる。とはいえ、ハンズオフ機能が全てのレベル2のクルマにあるわけではないので、レベル2の中でも高度なレベル2といって良いだろう。
これがレベル3になると、スマホを見ながらの運転が可能となる。レベル3がハンズオフから進んでアイズオフ(視線を外す)と表現されるゆえんだ。レベル3では、基本的にシステムが運行し、主体が運転者に切り替わるのは、システムが正常に作動しない場合や高速道路から一般道路に移る時などに限られる。
レベル3の「レジェンド」での技術を基に開発
ホンダは2021~22年、世界で初めてレベル3を実現した乗用車「レジェンド」を販売した実績がある。世界的に見てもレベル3のシステム搭載実績はまだ少なく、一部の国のメルセデス・ベンツ「EQS」「Sクラス」、BMW「7シリーズ」などのオプション設定に限られている。センサー類を多く搭載するため高額になることから、本格的な販売までには至っていないのが現状だ。
「レジェンド」に搭載されたシステムは「Honda SENSING Elite」で、今回の「Honda SENSING 360+」は、先の技術を基に量販車モデル用に開発したシステムになる。センサーの数を減らす一方、高精度地図や全球測位衛星システム(GNSS)を活用することで全体のコストを抑え、量販車への搭載が可能になった。
実際に運転してみることにする。まずはACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール=センサーが前走車を検知し、車間距離を保ちながら追従する機能)、LKAS(レーンキープアシストシステム=カメラで車線を検知して車線内走行を維持する機能)をともに作動させ、時速70キロ以上の走行中にハンズオフ機能を使用する。

普通にハンドルを握って運転している状態

ハンズオフ(ハンドルから手を離した状態)機能の作動時
今回は関越自動車道(大泉~前橋IC)の走行中にハンズオフ機能を試してみたが、やはり手離し運転は運転時の負担が減ることを実感する。長距離を走る時は、ハンドル、アクセルから解放されるとやはり楽である。また、ハンズオフ走行中にスマートフォンを操作するような素振りをしてみたら、クルマが顔の向きなどを認識して車内に警報が鳴り響いた。
GNSSにより高速走行、雨天のような悪天候でも精度は落ちず

発電用と走行用の二つのモーターを駆使するハイブリッド車(HV)で、低燃費に加えて走行性能も優れている
ハンズオフ機能そのものは、トヨタ自動車(アドバンスト・ドライブ)、日産自動車(プロパイロット2.0)、スバル(アイサイトX=エックス)などにも搭載されている。だが「Honda SENSING 360+」のハンズオフ機能が優れている理由は二つあり、(1)高速走行(時速70キロ以上)が可能、(2)GNSSにより雨天のような悪条件下でもハンズオフ機能を保てることだ。
GNSSについては少し説明が必要かもしれない。衛星測位システムはいくつかあるが、代表的なものが全地球測位システム(GPS)だろう。スマートフォンや一般的なカーナビゲーションなどで使われている。GPSはアメリカが軍事用に開発したシステムで利用できる衛星の数が限られているため、衛星からの信号がビルや山などにさえぎられると精度が落ちるというデメリットがある。
一方、GNSSは、GPSに加えてアメリカ以外の国々が運用している衛星測位システムも併用する。日本の場合、2018年から準天頂衛星システム(みちびき)の運用を始めており、これは24時間、日本上空のみを周回している。その分、GPSより誤差が少なく、最も精度が良い測位方法を使う場合、誤差はセンチ単位に抑えられる。このため、高速走行中も地図上のクルマの位置を認識できるのだ。
カーブ路外逸脱早期警報、レコメンド型車線変更支援なども装備

全球測位衛星システム(GNSS)アンテナはルーフの後席上に設置されている
特に雨天では、カメラやセンサーを使うACCやLKASは視界不良により精度が維持しづらく、一般的なカーナビも厚い雲にさえぎられて衛星電波の減衰などによりGPSの精度が落ちるケースがある。一方、GNSSを使用した場合、雨天のような悪天候でも精度は落ちないため、ハンズオフ機能が継続できるのである。
トヨタやスバルの場合、現行のハンズオフ機能は時速40~50キロまでの渋滞時のアシスト機能に限定していて、高速走行では使用できない。日産のプロパイロット2.0はGNSSを利用していて、ホンダと同じく高速走行に対応している。
「アコード」の新グレードでは、ハンズオフ機能以外にも新たに加わった機能が多い。例えば、高速道路での速度超過によるカーブ逸脱を防ぐ「カーブ路外逸脱早期警報」、システムが自分のクルマより速度が遅い先行車を検知し、追い越し可能な状況と判断した場合、運転者に通知して運転者の承認を経た上で、システムがウィンカー操作、加減速、ステアリング操作を行い、追い越しを支援する「レコメンド型車線変更支援機能」などだ。長距離ドライブの場合、こうした機能は運転者の負担軽減に役立つはずだ。
「アコード」の新グレードと既存グレードの価格差は約40万円。この価格差をどう見るか、人によって価値観が異なるので一概にはいえないが、高速走行が可能なハンズオフ機能などが付いた新グレードはこの価格差に見合う価値は十分あると思った。(デジタル編集部 松崎恵三)
【仕様・主要諸元】
(試乗した新グレード「e:HEV Honda SENSING 360+」の場合)
▼全長・全幅・全高(ミリ) 4975・1860・1450
▼総排気量(L) 1.993
▼燃費 WLTCモード(キロ/リットル) 23.8
▼価格 599.94万円(オプションは除く)