米大学で“リベラル狩り”?中国優位に? 教授らに聞く現地の状況 パックン「助成金は国益を考えた政府の“買い物”」

米大学で“リベラル狩り”?中国優位に? 教授らに聞く現地の状況 パックン「助成金は国益を考えた政府の“買い物”」

ノーベル賞受賞者が最も多い、米・ハーバード大学。権威と歴史ある大学に対して、トランプ大統領は「ハーバードは恥だ。彼らの行為は侮辱だ」と言い放った。その理由が“反ユダヤ主義”。3月、トランプ政権は全米の大学に、多様性などを重視した学生選考や反ユダヤ主義の活動に関与した学生に対する処分などを求め、従わなければ助成金などを見直すと発表した。

これに対し、ハーバード大学は声明で「大学は独立性を放棄することも、憲法上の権利を手放すこともしない」と徹底抗戦の構えを見せた。対するトランプ政権は、ハーバード大学への22億ドル(約3200億円)の助成金を凍結。ハーバードは、この措置の取り消しを求めて連邦地方裁判所に提訴。さらに、100を超える大学や学術団体の学長らが、政権の高等教育政策に反対する共同声明を発表する事態に。

一方、助成金の見直しだけではなく、ビザをめぐる混乱も深刻化。CNNによると、

今年に入りアメリカの130以上の大学で、1000人以上の留学生と卒業生のビザが取り消されているという。

大学に圧力をかけるトランプ大統領の狙いは。アメリカにいる研究者や留学生は今後どうなるのか。『ABEMA Prime』で考えた。

■カリフォルニア大バークレー校教授らに聞く現地の状況

カリフォルニア大学バークレー校教授で理論物理学者の野村泰紀氏は、「何が起こっているかわからない、という状況。ビザの取り消しは、ひと月前はカリフォルニア大で44人、バークレイ校で6人だったが、おそらく今は倍以上いると思う。フランスの研究者が空港に降りた時に拘束され、政権批判をしたとそのまま帰らされた話もある。ビザ剥奪を大学側も知らず、学生によっては道を歩いてる時に覆面の移民局の人に囲まれ、車でルイジアナに送還される」と、現地の混乱を説明する。

ジョンズ・ホプキンス大学博士課程の佐々木れな氏は、「ワシントン界隈では、スピード違反や未成年飲酒など軽微な犯罪歴がある人で、いわゆる学生ビザのF-1や、卒業後1年もしくは3年働けるOPTを取り消される事態が発生している。ただ、過激派デモと評される活動に参加した人が必ずしも捕まっているわけではなく、選択基準が不明瞭なのが一番恐ろしい」と指摘。「おそらく犯罪者全体を罰したいのではないか」との見方を示した。

野村氏は「明らかに脅しをかけているようなやり口で、見せしめだ」とした上で、「一番ひどいと思ったのは、“教職員と学生の思想を監視して、政権に報告しなさい”という内容が入っていたこと。これを飲んだら大学は終わりなので、ハーバードは偉かった。とはいえ、税制優遇をなくされたりしたら、普通の大学は潰れてしまう。さらに、その後の政権の対応もめちゃくちゃで、送ったレターは“間違いで流出したんだ”と。ハーバードがのんでいたら、そんなことを言うわけない」と述べた。

ただ、アメリカ国民に大きな影響が及ぶほどではないという。「極端な例だとナチスになぞらえるような人もいるが、そこまでは全然いっていない。自国民がぶち込まれたこともあまりないし、命も直接は失われていない。市民の日常生活に影は落としているかもしれないが、別の世界になった感じではない」。

■「司法をものすごく軽視している」

ハーバード大学卒のパックンは、「この中にトランプ側の味方はいないと思うので」とし、次のような見解を述べる。「野村さんは『何が起きているのかを把握できない』とおっしゃったが、アメリカ国民が選んでいる大統領の意見がわからない、その環境が問題。ジョンズ・ホプキンスやバークレー、ハーバードも、保守派がいないから国民のハートが掴めないのではないか」。

これに野村氏は、「僕自身、ポリコレやDEI(多様性、公平性、包括性)に行き過ぎはあったと都度声を上げていて、その反動が起こっているというのは非常にわかる。そういう意味の“わからない”ではなく、朝令暮改で、基準がはっきりしてないというテクニカルな意味合いだ」と説明。

また、「司法をものすごく軽視している」との懸念を示す。「マサチューセッツで捕まった学生がルイジアナに送られた時、裁判所は移送中止命令を出しているのに、無視して送るわけだ。また、今は戦争中なんだと言い張って敵性外国人法を使うが、これも最高裁判所は使えないという最終判断を出したものの、2人は賛成だった。圧力で司法も寄っていっているし、弁護士事務所も“一切国の仕事は渡さない”“取引した会社も国からの契約はいかない”と言われ、ほとんど折れている」。

佐々木氏は「彼ら(トランプ支持者)から言わせると、テントを置いたり建物を占拠したり、キャンパス内の治安が保てていないということがある。この前仲の良い友人に言われたのが、『(東京大学の)安田講堂を占拠されたらどう思う?』と。外国人が勝手にやってきてキャンパスの治安を乱すということが許せないんだと思う」と回答。パックンの「それをトランプが直そうとするのは正しいのではないか」との指摘には、「共和党のエリートはそう思っていると思う」と返した。

■パックン「助成金は国益を考えた政府の“買い物”」 研究者が萎縮? 中国優位に?

英科学誌『ネイチャー』の調査によると、研究者の75.3%(1200人以上)が、トランプ政権の影響でアメリカを離れることを検討しているという。『ワシントン・ポスト』によると、米在住の研究者が進化生物学に関する論文発表直前で「控えたい」と申し出たといい、政治的にセンシティブな論文に名前が載ることで居住資格を失うことを懸念したり、普通の学術的発言すら怖がっていることが残念と語る学者もいるという。

一方、パックンは「助成金はお金をくれるのではなく、研究を買っている。政府が国益につながるものとして、我々の税金を使っての買い物だ」との考えを述べる。

野村氏は、「こういう分野に集中したいから大きな資金をつける、というのは全然構わない。国の重点分野だと言うのは当然だ」としつつ、「個人の思想にまで入ってきているのが問題。思想の自由も学問の自由も憲法で保障されているはずだ。『外国人には基本的人権などない』などと言わない限りは、そこに入ってくるのはおかしい」と指摘した。

佐々木氏は、ビザ取り消しで「中国優位」になると見ている。中国は高度人材の帰国を強く促進し、米国は人的優位性を失いつつあること。相互理解や対話の回路が失われ、両国関係悪化が懸念されること。グローバルサウスにおける反発で、“米国型リベラル秩序”への信頼が揺らいでいること、をあげる。

「中国の人は、第1次トランプ政権あたりから“いきなり拘束されるのではないか”という恐怖感を覚えている。2つ目の知米派人材というのは、中国共産党の幹部をアメリカに勉強させに行って、それがネットワークになって関係性を安定させる要素として機能してきた側面もある。3つ目も、こんなに自由だった国が崩壊しつつあるというようなナラティブは、他の国を不安にさせる」とし、「やり方が中国と似てきて、行き着く先に恐怖を覚える」と危機感を示した。(『ABEMA Prime』より)

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